April 09, 2010

目録って、図書館の基本だなあと思う

 目録に関して、今、国際的に、非常に関心を集めている。と言っても、日本では国立国会図書館、もしくはTRC(図書館流通センター)などの民間機関がMARC(機械可読目録)を作成して、インターネットで簡単に目録情報が見られるので、図書館の利用者、あるいは利用者の域を出てないのに専門家ぶっている連中からは、甘く、軽く見られている。残念なことである。目録は、図書館学の中核的な問題でありながら、過去の分野と思われて、低く見られている。

 さて、コメントを投稿してくれた人への回答として、説明しよう。
 目録記入とは資料の書誌情報の全体のことで、英語ではEntryという。記入の構成要素とは、標目(Heading)、記述(Description)、標目指示(Tracings)、所在記号(請求記号Call number)、その他(登録番号など)の5つである。目録記入の構成要素で、これだけは欠かせないと言えば、標目と記述である。標目は利用者が資料の情報を検索するときの手がかりになるもので、目録の検索機能を担っている。標目には、書誌情報を一覧(リスト)にした時に並べる順番を決める要素でもあるけど。記入とは書誌的事項のまとまりで、タイトルと責任表示に関する事項、版に関する事項、出版・頒布等に関する事項、形態に関する事項、シリーズに関する事項、注記に関する事項、標準番号,入手条件に関する事項である。利用者が他の資料とは区別する、少し難しい言葉でいえば、識別同定するのに必要な情報で、端的にいえば資料の代わりをする部分で、換言すると資料の代替物である。記述は、目録の管理機能を担っている。
 利用者の立場から目録記入の構成要素の役割を考えると、標目で資料の情報を検索し、つまり探して、記述で探している資料かを確かめて、所在記号を使って、分類ラベルを探す。
 図書館の立場から目録記入の構成要素の役割を考えると、標目で資料の情報を並べて、記述で所蔵している情報かどうかを確認して、登録番号で資料の管理をしている。
 記入と記述は、同じ「記」が使われているので、始めて学ぶ人は、混乱する。記入は全体、記述は資料の代わりをする書誌的事項のまとまりと理解するとよい。
 目録の究極の目的、その意義は、資料の情報の検索と資料の代わりとなる書誌情報の提示、管理であると言えるだろう。

 具体的な説明を省いたので、少し解りにくかったかもしれないが、レポートの課題なのかもしれないで、レファレンスの鉄則で、必要最低限の説明に抑えたつもりである。

23:43:27 | falcon | comments(3) | TrackBacks

書誌階層の難しさ

 書誌階層は実に難しいと思います。

 書誌ごとに情報をまとめて記録するときの考え方です。

 パターンとしては、A.単行レベルの1タイトルの書誌、B.シリーズのタイトルと単行レベルのタイトルの2つの階層、C.単行レベルのタイトルと個々の作品・論文のレベルの2つの階層、D.シリーズのタイトルと単行レベルのタイトルと個々の作品・論文のレベルの3つの階層に分かれます。もっとも多いパターンはA.です。
 今は品切れだと思いますが、筑摩世界文学大系のマルセル・プルースト著『失われた時を求めて』を書誌階層を意識して、多段階記述様式で記録しようとすると複雑で困難を極めます。

 継続資料の場合、雑誌を例にとると、『TARZAN』が基礎書誌レベルになります。これは集合書誌レベルのように思えますが、各雑誌がシリーズになっていれば、そのシリーズを集合書誌レベルにします。『○○大学紀要』の「人文科学篇」「社会科学篇」「自然科学篇」という場合は、『○○大学紀要』が集合書誌レベルと考えられます。雑誌の中の各記事・各論文については、構成書誌レベルと考えられます。

 日本目録規則1987年版の書誌単位という考えは、出版年の記録の仕方にも現れています。以前の日本目録規則では、いわば物理単位で記録していたので、手にしている図書資料が出版された最新の年を出版年にしていましたが、このやり方だと、同じタイトルの同じ版の図書資料でも刷られた年が異なる事態になります。それでも、特に問題は無かったのです。今みたいにネットワークが発達していなかったので、利用者はそこの図書館だけを利用して、資料が無ければ、あきらめるか、返却を待って予約していたからです。しかし、1990年以後はインターネットが急速に普及して、ネットワーク化して、相互貸借ができるので、日本目録規則1987年版では同じタイトルで同じ版の図書資料の出版年はその版の最初の年になりました。刷られた年、刷次が異なっても、ネットワーク化された目録検索システムで、その資料が見つけられます。つまり、書誌単位で識別同定できるようになりました。

 学生時代から図書館関係の仕事をしていたので、目録の話になると、つい夢中になってしまいます。

01:04:31 | falcon | comments(2) | TrackBacks