April 09, 2010

書誌階層の難しさ

 書誌階層は実に難しいと思います。

 書誌ごとに情報をまとめて記録するときの考え方です。

 パターンとしては、A.単行レベルの1タイトルの書誌、B.シリーズのタイトルと単行レベルのタイトルの2つの階層、C.単行レベルのタイトルと個々の作品・論文のレベルの2つの階層、D.シリーズのタイトルと単行レベルのタイトルと個々の作品・論文のレベルの3つの階層に分かれます。もっとも多いパターンはA.です。
 今は品切れだと思いますが、筑摩世界文学大系のマルセル・プルースト著『失われた時を求めて』を書誌階層を意識して、多段階記述様式で記録しようとすると複雑で困難を極めます。

 継続資料の場合、雑誌を例にとると、『TARZAN』が基礎書誌レベルになります。これは集合書誌レベルのように思えますが、各雑誌がシリーズになっていれば、そのシリーズを集合書誌レベルにします。『○○大学紀要』の「人文科学篇」「社会科学篇」「自然科学篇」という場合は、『○○大学紀要』が集合書誌レベルと考えられます。雑誌の中の各記事・各論文については、構成書誌レベルと考えられます。

 日本目録規則1987年版の書誌単位という考えは、出版年の記録の仕方にも現れています。以前の日本目録規則では、いわば物理単位で記録していたので、手にしている図書資料が出版された最新の年を出版年にしていましたが、このやり方だと、同じタイトルの同じ版の図書資料でも刷られた年が異なる事態になります。それでも、特に問題は無かったのです。今みたいにネットワークが発達していなかったので、利用者はそこの図書館だけを利用して、資料が無ければ、あきらめるか、返却を待って予約していたからです。しかし、1990年以後はインターネットが急速に普及して、ネットワーク化して、相互貸借ができるので、日本目録規則1987年版では同じタイトルで同じ版の図書資料の出版年はその版の最初の年になりました。刷られた年、刷次が異なっても、ネットワーク化された目録検索システムで、その資料が見つけられます。つまり、書誌単位で識別同定できるようになりました。

 学生時代から図書館関係の仕事をしていたので、目録の話になると、つい夢中になってしまいます。

Posted by falcon at 01:04:31 | from category: Main | TrackBacks
Comments

tama141:

falconさんこんばんは。書誌階層については、具体例をあげて説明するのを求められることがあるので参考になりました。ありがとうございました。
さて、今一番苦労しているのが、「目録記入の構成要素とその目録の意義」のところです。
図書館ハンドブックを引きやすいので利用していますが、『参照:目録の中で、ある標目から他の標目へ導き、案内する役割をもつもの…』、『標目指示:各資料に関してそのその図書館が提供するアクセス・ポイントを支持する記録。標目を支持し各標目の形を示したもの』となっています。アクセスポイントをみると『情報を呼び出す項目で、…従来は標目と称された…NCR1987版はアクセスポイントを用いず標目を用いている」といった感じで現時点で、どの用語を用いて説明するのが良いのか、混乱しているしだいです。
falconさんの解説は、「書誌階層の難しさ」を読んでみても、一般人でも理解できるようにわかりやすく書いてくれているので、実はすごく期待しています。
(April 09, 2010 22:01:18)

falcon:

随分と、どえりぁテーマですね。
テーマがデカ過ぎて、何から説明したいいのか、困ります。

まず、目録記入とは何か、理解していますか?
図書館ハンドブック、図書館情報学ハンドブックなどは、大変参考になりますが、実務を熟知して、外国の文献に精通していれば、なるほどと深い理解が得られますが、初学者が定義だけ読んでも、厳しい物言いをすれば蟷螂の斧です。

コメントで説明できないので、記事に書きこみます。

こういう専門的な記事を書きこんでも、アクセスは増えませんね。
(April 09, 2010 23:29:58)
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