March 18, 2009

うっかりパリの図書館へ

 パリの図書館について書き込んだら、急に気になって、サイトを開いてしまった。あれこれ見ていたら、引き込まれて、パリに行った気分になってしまった。
 フランス語なので、戸惑うかもしれないけど、サイトの翻訳機能を生かせば、何とか楽しめるはず。ちなみにBDとはバンド・デシネでフランスやベルギーで刊行される漫画のこと(以前にも書きこんだので、覚えているかもしれないけど、A4判より少し大きく、厚紙の表紙で、カラー印刷されたものが多い。吹き出しというか、セリフのところは作家の手書きの文字で、味わいがある)。DVDなどを借りる場合は、料金がかかる。日本の図書館のように何でも無料ではない。
 新しい図書館が多いのは、1980年頃からパリ市は図書館が増えたから。もちろん古い建物を改修したところも少なくない。
 フランスというと、交通機関のストライキが多いけど、図書館でもストライキがある。せっかく見つけて入ろうと思ったら、ストライキの張り紙がしてあって入れないこともあった。
 パリ市の図書館には貸出・閲覧サービスをする図書館と専門資料を扱う図書館がある。児童サービス専門の「たのしいひととき図書館」は5区のサンセヴラン教会の裏手にある。サンミッシェル大通りから、レストランが密集している狭い路地を入ったところで、近くにギリシア料理やチュニジア料理のお店がある。
 アート・工芸に関する図書館(フォルネイ図書館)、フェミニズム関連の資料を扱う図書館、旅の図書館(トロカデロ図書館)、推理・探偵小説専門の図書館もあり、実に魅力的な図書館が多い。

 フランス国立図書館は入館料を徴収するし、そこにしかないという資料を閲覧に行くなら損はないけど、観光客気分で遊び半分に言っても楽しくない。

 どうせ行くなら、ポンピドゥセンターのBPIがおすすめ。荷物検査があって、ちょっぴり気が引けるけど、観光客でも十分楽しめる。もちろんフランス語が分かれば、問題ないけど、写真集などをめくるだけでも楽しい。

 これはパリ市の図書館じゃないけど、アラブ世界研究所の図書館は建築だけでも一見の価値あり。誰でも閲覧ができる。いつもアラブ人のお兄さんたちでいっぱい。閲覧室が3層に分かれているのだけれども、その3層が螺旋の通路でつながっている(←行ってみないと、その構造はわからないかもしれない)。その螺旋の通路には図書や雑誌のバックナンバーがある。アラブ世界研究所の建物はガラス張りで直射日光を遮るために、カメラの絞りのような機械装置が取り付けられて、外見はアラベスク模様に見えるという意匠をこらしている。フランス国立図書館から徒歩で行けるくらい近いので、ぜひ足を延ばしてほしい。


19:40:08 | falcon | comments(0) | TrackBacks

ブルトン語の本は?

 以前、フランスのブルターニュ地方へ行ったことがある。
 調査で行って、そこで出会った人と意気投合して、話が盛り上がり、その人のうちへお邪魔して、家族と一緒に昼食を御馳走になった。
 そのとき、「ブルトン語って、知っている?」と言われて、NHKのフランス語講座で覚えた「ケナボ」を言った。もちろん意味は承知していた。「さよならAu revoir」なんだけれども、それしか知らなかった。おかげで、盛り上がっていた話は一気に急降下。「そろそろ、切り上げようか」という雰囲気になってしまった。

 ブルトン語とは、ローマ帝国が支配権を広げる以前にヨーロッパに住んでいたケルト民族の言語に由来して、ブルターニュ地方の一部で話されている。フランス語とは似ても似つかぬ言語で、英語とも違う。

 それで図書館にブルトン語の本がないか、探している。アイルランドで使われているゲール語の本ならば、かなりある。
 日本で見つからなければ、現地へ行くしかないかとも考えている。

 ブルターニュ地方はフランスの北西部で、海峡を隔ててイギリス、アイルランドと対峙している。
 ノルマンディ地方と並んで、魚介類が豊富で、ブドウの栽培に適ざないため、ワインではなく、リンゴ酒シードル(英語ならサイダー)が美味しい。名物料理はクレープとガレット。クレープは日本でも知られている小麦粉で作る甘いデザートであるが、ガレットはそば粉で作る。バターや塩を使うので、甘さはほとんどない。ハムや生卵、キノコをのせて、焼くので、日本のお好み焼きそっくりだ。ガレットには甘い菓子の意味もあるけど、ブルターニュでは完璧にお好み焼きだ。
 そば粉がフランスで使われていると聞くと、意外かもしれないけど、そばは中央アジア原産*(日本大百科全書によると、ソバは中国が原産地)で、それが世界中に広まった。日本だけでそば粉を作っているとは限らない。寒冷で土地の痩せた地域では、広く栽培されている。ちなみに、そばはフランス語でSarrasin、文字通りサラセン、イスラム帝国を意味する言葉に由来する。

 

 一気に読んだ。ブルターニュ地方にケルト民族の残照を求めて旅した記録で、バスの時間に間に合わせるために、のんびりしたり、慌ててバスに乗り込んだり、遺跡を探すために自転車であくせく走り回ったり、気さくなタクシーの運転手と会話を交わしたり、じっと読んでいるのに、こちらまでが冷や汗をかいたり、ドキドキして、まるで著者と一緒に歩いて旅をしている気分になれる。読み終わったとき、疲れがどっとあふれ出た。疲れが爽やかな読後感に変わる。こんな読書も良い。

13:13:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks

図書館の経営分析

 本日3月17日、国立国会図書館の公開講演会に参加してきました。

 「公的機関の経営分析」上山信一氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)

 もともと国立国会図書館の職員研修だったようですが、外部の参加者30名まで応募可能でしたから、早々と申し込みしておきました。

 講演の前半が、経営分析についての概説と主に大阪市の行政機関の業務分析でした。大阪市のごみ収集事業や地下鉄の運営と経営分析は、ときどき皮肉ともジョークとも言えない微妙でユーモラスな表情で語られるので、思わず笑ってしまい、2時間にも及ぶ講演はあっという間に過ぎました。
 後半の最後の40分ほどが、ミュージアム(博物館、美術館)の経営分析でした。期待してた図書館の経営分析にほとんど触れることがなかったので、とても残念でしたが、随所に深い洞察に基づく示唆がたくさんあり、参加して良かったと思っています。

 「仮説を立てて、業務や事象を数値化して考え、他と比較してみる。なぜ、そうなのかを全体の背景や状況から分析する」

 当たり前と言えば、当たり前のことですが、制度化された社会では、「こんなことしても、ダメかなあ」「言っても、変わらないだろう」と思って、諦めていることがたくさんありますよね。
 たとえば、地域の公立図書館は大抵朝10時くらいに開館して、夕方5時から夜8時くらいに閉館しますね。
 昼間人口の多いビジネス街と夜間人口の多い郊外とでは利用者の多い時間帯が異なります。また、退職した高齢者の多い地域と学校が多い地域でも利用者の多い時間帯が異なります。
 普通、商店だったら、開店休業状態していたのではもったいないので、客が少ない時は品数を減らして、買い物客が増えたら、品数を増やすことをします。景気がいい時なら、多少の無駄をしても取り返せますが、これだけ景気が悪いと取り返しようがない。
 公立図書館は、お役所仕事なので、役所の他の部署と同じ時間帯で開館時間を決めようとするのです。夜間開館は残業か、交代要員を増やして対処する。高齢者が多い地域では図書館の開館と同時に利用者がやってきて、新聞や雑誌のコーナーがいっぱいになりますけど、学校が多い地域では、午後3時ごろにならないと利用者は来ません。朝10時から午後1時くらいまでは来館者はいません。そうは言っても、図書館職員は全く働いていないわけではなく、選書、資料の発注、他の部署との連絡、会議など様々な仕事に追われています。ならば、地域の状況で開館時間を弾力的に変えてもいいと思います。
 フランスのパリ市は山手線の内側程度の広さに貸出を中心に行う図書館が58館あり、その他に特殊コレクションを持つ図書館が数館あります。曜日によって開館時間を変えています。児童コーナーは昼過ぎから始めるところも少なくない。同じ時間に開館する必要は全く無いのですね。休館日も同じ曜日にすることはなく、別々の日に休館します。

 それから、職員一人当たりの仕事量を基準を決めて測るといいと思います。図書館の仕事を計測するのは、なかなか難しいのですが、職員一人一人が日誌に1日何をしたのかをまとめて、仕事量を割り出すといいと思います。その人の能力を測るのではなく、あくまでも仕事量を測るのです。一人の人に負担がかかっていたら、それを軽減できる仕組みを作ればいい。
 最近は地域の図書館のネットワーク化で、予約をすれば、遠くの図書館の資料を届けてくれますが、輸送料がかなりかかる。1冊あたり、どのくらいの経費がかかっているか、計算してみると面白いと思います。それを他の公立図書館と比較してみる。もし1冊あたりの輸送料が高いのであれば、それぞれの図書館の資料費を増やして、蔵書を増やせば良い。それでも資料費を増やすよりも、利用者の求めに応じて、運んだほうが良いならば、そちらを選択すればよい。
 図書館では、これまで先進的なサービスの事例が紹介されると、経営効率を考えないで飛びついて実践していたことが多すぎます。
 たとえば農業が盛んな地域で、金融や海外投資のビジネス支援をやっても無駄なんですね。さすがに、ここまで極端なサービスをやった図書館はありませんけど、意味もなく、ボランティアを導入しているところは少なくありません。

 わざわざ民間活力を導入しなくても、官の力で変えることはたくさんあると思うのですけど。Change!は、発想を変えるだけですけどね。

12:34:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks