March 18, 2009

図書館の経営分析

 本日3月17日、国立国会図書館の公開講演会に参加してきました。

 「公的機関の経営分析」上山信一氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)

 もともと国立国会図書館の職員研修だったようですが、外部の参加者30名まで応募可能でしたから、早々と申し込みしておきました。

 講演の前半が、経営分析についての概説と主に大阪市の行政機関の業務分析でした。大阪市のごみ収集事業や地下鉄の運営と経営分析は、ときどき皮肉ともジョークとも言えない微妙でユーモラスな表情で語られるので、思わず笑ってしまい、2時間にも及ぶ講演はあっという間に過ぎました。
 後半の最後の40分ほどが、ミュージアム(博物館、美術館)の経営分析でした。期待してた図書館の経営分析にほとんど触れることがなかったので、とても残念でしたが、随所に深い洞察に基づく示唆がたくさんあり、参加して良かったと思っています。

 「仮説を立てて、業務や事象を数値化して考え、他と比較してみる。なぜ、そうなのかを全体の背景や状況から分析する」

 当たり前と言えば、当たり前のことですが、制度化された社会では、「こんなことしても、ダメかなあ」「言っても、変わらないだろう」と思って、諦めていることがたくさんありますよね。
 たとえば、地域の公立図書館は大抵朝10時くらいに開館して、夕方5時から夜8時くらいに閉館しますね。
 昼間人口の多いビジネス街と夜間人口の多い郊外とでは利用者の多い時間帯が異なります。また、退職した高齢者の多い地域と学校が多い地域でも利用者の多い時間帯が異なります。
 普通、商店だったら、開店休業状態していたのではもったいないので、客が少ない時は品数を減らして、買い物客が増えたら、品数を増やすことをします。景気がいい時なら、多少の無駄をしても取り返せますが、これだけ景気が悪いと取り返しようがない。
 公立図書館は、お役所仕事なので、役所の他の部署と同じ時間帯で開館時間を決めようとするのです。夜間開館は残業か、交代要員を増やして対処する。高齢者が多い地域では図書館の開館と同時に利用者がやってきて、新聞や雑誌のコーナーがいっぱいになりますけど、学校が多い地域では、午後3時ごろにならないと利用者は来ません。朝10時から午後1時くらいまでは来館者はいません。そうは言っても、図書館職員は全く働いていないわけではなく、選書、資料の発注、他の部署との連絡、会議など様々な仕事に追われています。ならば、地域の状況で開館時間を弾力的に変えてもいいと思います。
 フランスのパリ市は山手線の内側程度の広さに貸出を中心に行う図書館が58館あり、その他に特殊コレクションを持つ図書館が数館あります。曜日によって開館時間を変えています。児童コーナーは昼過ぎから始めるところも少なくない。同じ時間に開館する必要は全く無いのですね。休館日も同じ曜日にすることはなく、別々の日に休館します。

 それから、職員一人当たりの仕事量を基準を決めて測るといいと思います。図書館の仕事を計測するのは、なかなか難しいのですが、職員一人一人が日誌に1日何をしたのかをまとめて、仕事量を割り出すといいと思います。その人の能力を測るのではなく、あくまでも仕事量を測るのです。一人の人に負担がかかっていたら、それを軽減できる仕組みを作ればいい。
 最近は地域の図書館のネットワーク化で、予約をすれば、遠くの図書館の資料を届けてくれますが、輸送料がかなりかかる。1冊あたり、どのくらいの経費がかかっているか、計算してみると面白いと思います。それを他の公立図書館と比較してみる。もし1冊あたりの輸送料が高いのであれば、それぞれの図書館の資料費を増やして、蔵書を増やせば良い。それでも資料費を増やすよりも、利用者の求めに応じて、運んだほうが良いならば、そちらを選択すればよい。
 図書館では、これまで先進的なサービスの事例が紹介されると、経営効率を考えないで飛びついて実践していたことが多すぎます。
 たとえば農業が盛んな地域で、金融や海外投資のビジネス支援をやっても無駄なんですね。さすがに、ここまで極端なサービスをやった図書館はありませんけど、意味もなく、ボランティアを導入しているところは少なくありません。

 わざわざ民間活力を導入しなくても、官の力で変えることはたくさんあると思うのですけど。Change!は、発想を変えるだけですけどね。

Posted by falcon at 12:34:48 | from category: Main | TrackBacks
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