November 13, 2009

仕分け多い訳

 政府の行政刷新会議のワーキンググループが、文部科学省の「子どもの読書活動推進事業と子どもゆめ基金」に対して廃止とした。

 最初にテレビでニュースを聞いたときは、ショックで言葉も出なかった。民主党政権になって学校図書館に力を入れてくれるのだと思って、期待をかけていた。聞き間違い、思い間違いと思って、新聞で確認した。蓮舫輝くの白い歯が癪に障った。もちろん、あの人が決めていないのはわかっている。でも、意見を取りまとめるときの匙加減があると思う。

 しばらくたって冷静なって、仕方ないと思い直した。

 所詮、局所的な政策になる。つまり、モデル地域に資金が投入されるだけだ。この事業のモデル地域ではないが、千葉県の市川市や袖ヶ浦市は複数回にわたって学校図書館に関わる事業のモデル地域に指定されている。かつて袖ヶ浦市の関係者が「(他からうらやましがられるが)やる気があるから袖ヶ浦は指定を受ける。指定を受けたいなら、手を挙げればよい。」と断言したことがあった。うーん、それって勝ち組の発言なんだよね。うがった見方だけど、「負け犬はあっち行け」と聞こえてくる。
 局所的なモデル地域事業は、中期的なイベントであり、全国的な動向にならない。勝ち組のわずかな「モデル地域」と負け組の、その他大勢の「漏れる地域」の格差を広げるだけだ。

 「相変わらず、モデルと漏れるで、笑いを取ろうとしているね」

 えっ?!、まじめに語っているだから、余計なこと言わないでよ。あっ、いけない。オネエ言葉になっちゃった。

 事業を行っても、子どもたちが読書をするようになったことを具体的に判定する基準がない。「貸出率が増えた」というのは客観的な指標のようだが、実際にどこまで読んだのか、わからない。「読書量が増えた」といっても、子どもたちの自己申告のアンケート調査では客観性は無い。作文を書かせて、語彙数が増えたことと読書量の相関関係を示すくらい調査しなければ、客観的な判断は無理だろう。

 元・杉並区和田中学校の藤原和博氏の発言が気になる。読売新聞には発言の一部が報道されているのだが、「一人の司書教諭が蔵書を管理している」と言っている。どこまで、和田氏は学校図書館について理解しているのだろう。校長時代の学校図書館への対応に疑問を感じていたので、発言の主旨を知りたい。
 和田氏は「15年以上前に出版された百科事典を捨てたほうが良い」とも発言したらしいが、文部科学省が示している「学校図書館図書標準」とのジレンマがあることを理解しているだろうか。15年前の百科事典を使っている学校はまだ良いほうだ。平成になってからなんだから。実際には、30年前、40年前に出版された百科事典を使っている学校も多い。ソビエト社会主義連邦、チェコスロバキア、西ドイツ・東ドイツ、西パキスタン・東パキスタン、北ベトナム・南ベトナムなどが掲載されている百科事典を使っている。自然科学や技術・工学は40年、30年で発見が相次ぎ、急速に進歩している。

 廃止の理由の一つに「地域で活発な試みがあるから、国が関わる必要はない」という意見があったようだ。
 学校図書館に地域の人たちが関わるのは大切だと思うが、所詮、ボランティアには素人の壁がある。
 何よりも、専門家としての司書教諭がすべての学校に配置されているわけでない。しかも、常勤の専任司書教諭になっていない。

 学校図書館の蔵書の充実は、逼迫した地方財政では無理だ。地方交付金で賄うことはできない。

 廃止した「子どもの読書活動推進事業と子どもゆめ基金」を復活してほしいとは思わないが、国は学校図書館に対して、もっと具体的な方策を示してほしい。

Posted by falcon at 00:18:11 | from category: Main | TrackBacks
Comments

ひかり:

私の勤務する学校も600名児童がいるのにポプラディアが1セットしかなく、30年以上前の百科事典を廃棄できずにいます。
どんなに古くてもないよりはまし・・・。
そして置いてあるだけで、誰も手に取らないと思っていたら、実際その年代物を使っている児童をみて、切なくなりました。
実際に学校まで届かなかった5ヵ年計画の図書予算を確実に各学校へ届ける政策をやって欲しい。
どうしたらこの声を実際に政治家へ届けることができるのでしょうね。
(November 13, 2009 21:35:32)

不良司書hatekupo:

Falcon先生。私はいまだにカッカしていました。
が、今までの文科省のやり方「モデル指定」の問題や、評価の問題等々にも問題があることも事実。エントリ拝見して少し冷静さをとりもどすことができました。
いまだに気分が悪いのは、学校図書館そのものが軽視されているかのような印象。「ゆめ基金」自体に改善すべき要素が多いことも事実なのですが、「修正・矯正」なくバッサリ切るのはどんなものでしょう。切るだけが仕事なら「刷新」という言葉は使わないでほしいと思います。
また、学校図書館にとっては「地方交付税の見直し」についても注目してみたいと思います
(November 14, 2009 22:50:25)
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