November 10, 2009

アメリカの学校図書館の動向

 カレント・アウェアネス・ポータル11月9日によれば、アメリカで全国の各学校に少なくとも1人は資格を持ったスクール・ライブラリー・メディア・スペシャリスト(SLMS=school library media specialist)を置くようにとする法案が再提出されて、下院の教育労働委員会で審議されているという。すでに、この法案は、2007年6月に提出されたが、法制化されなかった。

 アメリカの学校図書館にはSLMSと技術系職員、事務系職員が配置されているが、フルタイム、つまり常勤で、州公認のSLMSは2007年の時点で、約60パーセントの学校にしか配置されていないらしい。特にSLMSの配置率が低いのはカリフォルニア州で、東部の州の配置率は高い。

 SLMSに相当する職種が、日本には存在しないので非常に訳しにくいが、敢えて訳せば専任司書教諭に相当する。いわば、学校図書館センターの専任の専門教育職員である。
 SLMSは大学院を修了していることが要件である。大学院といっても、*日本のような研究者・大学教員を養成する大学院ではなく、社会の中で専門職として活躍する人材を養成する大学院、ポスト・グラジュエートである。もちろん、SLMSは教育職である。
 日本の司書教諭は教諭免許のほかに、司書教諭講習、大学の司書教諭課程、放送大学、通信教育を受講して取得する司書教諭資格(正確には、司書教諭講習修了証)を要件として、各学校で、教育委員会もしくは校長により、司書教諭の発令を受ける。多くの場合が、学級担任・教科担任で、学校図書館に常勤ではなく、校務分掌として兼任する。
 人によって、SLMSを学校司書と訳す人がいるが、日本の学校司書は行政職・事務職であり、養成課程もなく、便宜的に司書資格・司書教諭資格を要件とする場合があっても、無資格で採用される場合もあり、能力に保証はないので、SLMSの訳語としてふさわしくない。

*日本では、いまだに大学院は研究者、それも大学教員を養成する場という印象が強いが、アメリカでは専門職を養成する場でもあり、研究者・大学教員を養成するとは限らない。「大学院を修了して、大学の教員になろう!」というスローガンを掲げても、アメリカでは一部の人の問題である。

 以前にも書いたけど、民主党の政策集INDEXに「司書教諭の充実」に取り組むとあるので、今回のアメリカの動向は日本の学校図書館に大きな影響を与えるだろう。


Posted by falcon at 14:06:26 | from category: Main | TrackBacks
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