November 07, 2009

本当は怖い図書館の書架〜突然の衝撃〜

 「先生、アサガオの本、どこ?」
 「ああ、美香子ちゃん、しょくぶつ、うんん、草花のところだよ」
 「わかった、ありがとう、あきら君、さがそう」

 高槻庄司さん(仮名、26歳)、東京の大学で司書教諭の資格を取得して、地元のの小学校に赴任して、3年目、今年から学校図書館とコンピュータ室の担当になりました。4月に着任した校長先生が読書活動、総合学習に熱心で、教育委員会から司書教諭の発令を受けた高槻先生に週1時間だけ学校図書館に関わるように要請しました。

 「週1回でも、先生が来るようになって、子どもたちが本をよく読むようになりました。ボランティアの私たちだけでは、気がつかないことも多くて、司書教諭の先生がいないと、学校図書館は運営できないわね。去年までの山崎先生は忙しくて、学校図書館に来てくれなかったから」
 「保護者の方々のおかげで、この図書館も明るくなりましたから」
 「お互い力を尽くしましょうね。」
 「よろしくお願いします。」

 毎日ではありませんが、こうして保護者のボランティアの人たちが学校図書館へやってきてくれます。
 保護者のボランティアの人と話し込んでいる時でした。

 突然、ゴトンと音がしました。
 「先生、あきら君が!」美香子ちゃんが叫びました。

 小学校1年生で背の低いあきら君は、アサガオの本を取ろうとして書架によじ登り、書架が倒れて、下敷きになってしまいました。あきら君は幸い命は取り留めたものの、頭を強く打ち、足にかすかな麻痺が残る大怪我を負いました。

 事例:書架無固定症候群

 書架無固定症候群とは、図書館の書架を床や壁に固定していないときに起こる事故のことです。学校図書館の多くが設置されていても、司書教諭の先生が関われなくて、専任の職員がいないために、ほとんど開館しない場合、書架を固定しないまま、放置したことによっておこります。中学校の多くが、開館しても、昼休みと放課後の数十分だけですし、生徒の図書委員にまかせっきりの場合もあります。中学校では問題行動を防ぐために、専任職員のいない学校図書館を開けたままにできません。また特別支援学校の学校図書館は顧みられず、全く利用されないままのところも少なくありません。
 書架を床や壁に固定しないだけでなく、書架の上に本棚を重ねるケースもよく見られます。また、書架の上に花瓶などを置くのも大変危険です。高い書架の上の段に厚い辞書、百科事典を置いたり、低い書架の天板の上にブックエンドで百科事典を置いたりするのも大変危険です。小学校の子供は書架の上に上がりたがるので、常に注意しておく必要があります。

知り合いで高い書架の棚から百科事典を取りだそうとして、手を滑らせて、落としてしまい、百科事典の前小口の角が足の指に当たり、骨折した人がいます。図書は凶器にも変貌します。

 書架は床や壁に固定されていますか?
 書架の上に本棚を重ねていませんか?
 高い書架の上の段に重たい本を置いていませんか?
 書架の上に花瓶などを置いていませんか?
 低い書架の天板の上に百科事典をブックエンドで並べていませんか?

 放っておくと、大変なことになりますよ。

Posted by falcon at 19:38:44 | from category: Main | TrackBacks
Comments

地理:

はじめまして。
長崎県の高校で司書教諭をしている者です。

数日前,うちの図書館に来た職員との会話でも「倒れたらたいへんですね」と指摘され,「そのとおりです」と言ったばかりでした。
現在,校舎改築中で,多目的教室を間借りして開館している状態です。
そのため,壁際にはスチール書架を置いていますが,固定できません。
もし地震が起こったら…と思いながらも,手前の「足」に板を敷くくらいしかしていません(さすがに高校生はよじ登らないと思います)。
旧図書館も,地震対策など全く考慮されていなくて,固定されていませんでした。
現在計画中の新図書館では,壁面書架はしっかり固定してもらうようにしています。
(November 07, 2009 21:14:01)
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