November 03, 2009

あれか、これか〜学校司書か、司書教諭か〜

 朝日新聞2009年11月3日朝刊の社説に

「ほとんどの学校には司書教諭がいるが、大半は学級担任などのかたわら担当している。ただでさえ忙しいのに図書館に十分な時間を割くのは困難だ。

 図書館の活用には専門の「学校司書」という職員が欠かせない。だが、学校司書のいる公立小中学校は4割に満たない。しかも8割は非常勤で時間の制約も大きい。」

 http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 とあった。

 「学校司書」は学校図書館法では定められていない。いわば、令外官(大袈裟かもしれない)、法律外の学校の非正規雇用の職員がほとんどである。一部の学校で、正規職員となっている。たとえば、東京都立高等学校では学校司書は正規職員である。
 文字・活字文化振興法第8条2項に「司書教諭及び学校図書館に関する業務を担当するその他の職員の充実等の人的体制の整備」とあり、しいていえば、「学校図書館に関する業務を担当するその他の職員」が学校司書に相当する。

 学校司書は、朝日新聞の社説よれば、「専門」の職員とある。しかし、学校司書には養成機関がないために、資格もなく、何をしたらよいかも分からず、雇用されている人もいる。よって、専門職ではない。ちなみに、司書資格は図書館法による公共図書館(公立図書館と私立図書館)の資格であり、学校図書館職員の資格ではない。

 社説によれば、「ほとんどの学校には司書教諭がいる」とあるが、これは明らかな間違いだ。文部科学省の調査によれば、平成20年度の司書教諭の発令状況は、小学校で61.2%、中学校で58.9%、高等学校で82.4%、特殊支援学校と中等教育学校を含めた全体での発令状況は63.0%である。63.0%を「ほとんどいる」と言えるだろうか。

 民主党政策集INDEX2009の文部科学によれば、学校図書館整備等で「文字・活字文化の振興を図るとともに、司書教諭が不足している現状にかんがみ、その充実に取り組みます。」とある。
 フランスのドキュマンタリスト教員のように、司書教諭の専任化を急に進めることは無理だろうが、全国の学校に司書教諭を配置して、少なくとも授業軽減措置を行い、他の教員とともに協働授業を行えるようにしてほしい。マニフェストに書かれたことは、来年の通常国会で法案化して上程してほしい。

 フランスのコレージュ(4年制の中学校)、リセ(高等学校)の学校図書館には、国家試験で資格を取得したドキュマンタリスト教員が配置されることになっている。ドキュマンタリスト教員なるには、学校図書館で432時間(週12時間・36週)の実習がある。日本の司書教諭には実習は無い。
 また、エデ・ドキュマンタリスト(ドキュマンタリスト補助職員)といわれる職員も配置される学校もある。日本の学校司書と違うのは、エデ・ドキュマンタリストにもドキュマンタリスト教員の資格取得の機会を与えていることだ。ドキュマンタリスト教員の国家試験で、公務員経験者の受験枠、民間職員の受験枠を設けている。日本では東京都立高等学校の学校司書の教員への切替選考試験が短期間実施された。

 学校司書の配置に反対しているわけではない。望むべくは、拙速に非正規職員の(無資格の)学校司書を配置するという愚策を取らず、養成の仕組みと採用の仕組みを整えてから、専任の学校司書を配置してほしい。今の状況まま、学校司書を配置すれば、雇用の不安定な(しかも能力の保証のない)職員を増大させるだけで、学校図書館の発展につながらない。

Posted by falcon at 23:18:13 | from category: Main | TrackBacks
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