January 06, 2008

図書館の書物から紡がれた物語『フェルマーの最終定理』

 イギリスの町の図書館で、アンドリュー・ワイズ少年が読んだのは、「フェルマーの定理」に関する本でした。
 サイモン・シン著『フェルマーの最終定理』には、少なくとも図書館に関するエピソードが4つあります。サイモン・シンの著作『暗号解読』を単行本で読みましたが、『フェルマーの最終定理』は難しそうなので、読まないでいました。先日、書店で読みたい本が見当たらなく、そこで新潮文庫になっていたので買いました。
 読み始めたら、止まりません。古代ギリシアから現代まで、数論を巡る壮大にして、偉大な物語で、数学にあまり興味が無くても、ワクワクします。なにしろ、全ては図書館から始まります。図書館が無かったら、この偉業は永遠の謎として、あと数百年は解かれずに、成されなかったでしょう。これはフィクションでなく、実話に基づく著作です。

 残念なのが、古代アレクサンドリア図書館に関する記述は伝説をそのまま受け入れているところです。いずれにせよ、古代アレクサンドリア図書館は遺跡が発見されていませんし、詳しい歴史的叙述はほとんどありませんから、伝説ばかりで事実が無いと著者を責めるのは無理なことです。カエサルの軍隊によって焼失した図書館に書物を補うために、クレオパトラ(7世)とローマの武将アントニウスが、ペルガモン(現在のトルコにあった古代王国)の図書館から書物を取り寄せたというのは俗説と言われています。しかしながら、古代アレクサンドリアの図書館から、多くのギリシアの学問、哲学、演劇が流布したことは間違いありません。その後、ペルシア、アラブの学問所、図書館が、駅伝の襷のように、知識と情報を後世へと伝えて、ルネサンス以降の学術の発展につながりました。

 小川洋子著『博士が愛した数式』
 藤原正彦著『天才の栄光と挫折:数学者列伝』
 『素数ゼミの謎』
 この3つを読めば、『フェルマーの最終定理』が10倍楽しめます。

 もっと早く読めばよかった。とにかく、楽しめました。

Posted by falcon at 13:31:36 | from category: Main | TrackBacks
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