July 09, 2007

学校図書館も「格差社会」の時代

 ある人から、6月13日のNHK総合・ニュースウォッチ9(21時から)で、学校図書館の蔵書数に格差が生じていることを取り上げたことを聞きました。
 千葉県の小学校1校の1年間の図書購入費(約120万円)と青森県の小学校1校の図書購入費(約6万円)が比較されていたそうです。勿論、児童数・学級数が少ないとそれに比例して図書購入費が少なくなるので、児童一人あたりの図書購入費または年間購入冊数を比較する必要があります。それにしても、20倍の「格差」は、公教育の平等性を考えると不公平ですね。青森の小学校には、古くて傷んだ本も捨てられなくて、セロテープで補強する小学生の姿が番組の中で映されて、胸が痛んだそうです。読書のための本だけでなく、調べる本がないと諦めた表情で訴える子どもたちの姿も心に残ったそうです。
 すでに国は学校図書館の図書を増やすために地方交付金措置をとってきました。今年度から5ヵ年計画で総額1000億円(単年度200億円)を地方交付金として、学校図書館の図書購入費に充てるようにしています。
 地方交付金は地方公共団体(つまり自治体)よって受けていないところもありますが、地方財政が逼迫しているため、多くの自治体がもらっています。ところが、国庫から地方がもらうお金には、使途が明確な補助金と使途を定めない地方交付金があり、地方交付金は何も学校図書館の蔵書には使わなくても良いことになっています。自治体の中には福祉などの目的で使ってしまうこともあります。切実な問題ですからね。
 さらに、構造改革で、国の権限を少なくして、税源を地方に委譲して(今年から所得税が減って、地方税が増えたでしょ!)、補助金・地方交付金を見直そうとしていますから、地方は、さらに学校図書館に充てるお金を頼りにして、他の使途に使うようになります。

 これは告発します。数年前、司書教諭講習で「地方交付金措置」について触れようとしたら、小学校の校長先生を勤めた経験のある人が大変な剣幕で、Falconの発言を阻止しました。「Y市では潤沢に学校図書館の図書購入費が行き渡っているので、学校の先生たちを煽動して、市の教育委員会に地方交付金をもらう圧力団体のような運動を起こされたら困る!」と言い張って譲りませんでした。
 でも、これは国の政策ですし、司書教諭講習でこそ説明する必要があります。それに、Y市は確かに学校図書館の図書購入費は潤沢ですが、文部科学省が示した「図書標準」に達していない小学校・中学校がかなりあります。「図書標準」に達している学校でも、日本地理の本で「高知県では二期作が行なわれています」(減反政策で二期作はとっくの昔にやっていない)といった記述があり、百科事典と世界地理の本で「ソビエト連邦」「西ドイツ・東ドイツ」「チェコスロバキア」「西パキスタン・東パキスタン」「北ベトナム・南ベトナム」(若い人にはわかりませんよね)などの説明があります。つまり、40年以上も前の本が廃棄されずに残っています。「長島茂雄の野球教室」もあります。スポーツのルールは相当変わっています。無論、20年前の図書では、冥王星が惑星なのは然り。

 文部科学省は学校図書館の蔵書購入への地方交付金措置を広くアピールするように呼びかけています。学校図書館の蔵書を見直して、必要な図書購入費を確保できるように、学校と教育委員会へ働きかけましょう。学校図書館で、地域の子どもの心を育てて、知識と情報を確かなものにすれば、自然に地域への愛着が生まれて、そこの地域で生活するようになります。やがては地方の活性化に繋がります。貧しい蔵書の学校図書館で育った子どもは、都会へ行きたくなりますよ。学校での生活を豊かなものにすれば、20年先に地方は再生します。
 今度の参議院選挙では、学校図書館に関心のある議員を選びましょう。

Posted by falcon at 02:20:20 | from category: Main | TrackBacks
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