March 05, 2009

築地暮色

 今日は上野へ東京都美術館で開催されている「アート・アンド・クラフツ展」を見に行った。実はウィリアム・モリスのデザインが好きで、ロンドンのリバティー本店で買ったネクタイをときどき締めている。そういえばリバティ・プリントを扱っているデパートが少なくなった。

 上野へ行くたび、いつも気になっていたのだけれども、足を踏み入れたことのない、東京文化会館の4階にある音楽資料室へ行って見た。音楽に関する資料が最も充実している。音楽関係の図書館・資料室は他にもあるし、国立国会図書館にも音楽関係のコーナーはあるが、中でも信頼されているのは、東京文化会館の音楽資料室である。すべての音楽ジャンルについての資料は揃っているが、やはり西洋音楽のクラシックに偏る。民族音楽やポピュラーミュージック、歌謡曲に関する資料は、どちらかと言えば少ない。音楽関係の資料中心なので、日本十進分類法ではなく、独特の分類をしている。視聴コーナーもある。3月下旬は建物の改装工事があるので、これから行こうと思っている人は問い合わせると良い。
 アラブ音楽に興味があったので、いくつか資料を閲覧した。

 上野から東京メトロ日比谷線に乗って、築地へ行く。
 『築地』を読んだばかりで、しかも築地にはウィリアム・モリスに影響を与えたジョン・ラスキンの資料を集めた文庫があると知ったので、興味を覚えて足を運んだ。
 地下鉄を降りて、地上に上がると築地本願寺があった。せっかくなのでお参りした。前を何度か通ったけど、中まで入って、お参りしたことがなかった。上野の展覧会で「法然上人」の版画があったのを思い出した。
 ラスキン文庫はビルとビルの谷間の路地にひっそりとあった。近くの人に聞いて、「ここだよ」と指さされても、気がつかないくらい、ひっそりしている。
 入口を入るとブザーが鳴り響き、カウンターへ2階から係りの人が降りてくる。カウンターの後ろが書庫になっている。閲覧だけなら自由。書架というよりは、本棚が部屋の四方を囲み、部屋の中央に机と椅子があり、書斎のような小さな文庫である。ラスキンに関する資料だけでなく、19世紀のイギリス・ヨーロッパの文学・芸術に関する資料が揃っている。出納してもらって書庫の中の資料を読むことができるが、ラスキンについて研究していなければ、何を請求するのかも思い浮かばない。ただ、図書館を見学する程度の心づもりでは、行っても興味はわかないだろう。書斎の雰囲気を味わうのには最高である。

 さあて、せっかく築地に来たからには、寿司でも食べて帰ろうと思って、晴海通り沿いに地図があったので眺めていると、「銀鱗文庫」が目についた。
 そういえば『築地』で、市場の中に図書館があると紹介されていた。「えーえ、ホントにあるのかな?」と半信半疑、築地市場の中に足を踏み入れた。幼い頃、祖父を訪ねて来たときの記憶がよみがえった。頭に黒い斑点があるユリカモメ、鋭い目つきのカモメがバサバサと飛んでいる。まるでヒッチコック監督の映画のようだ。
 夕方ちかいので、まばらにしか人はいない。
 「銀鱗文庫はどこですか?」と尋ねても、ほとんどの人は知らない。「守衛さんに聞いてみれば」と親切そうに教えてくれた人がいた。魚河岸の人は殺気立って、相手もしてくれないと思い込んでいたので、内心びくびくしていた。『築地』の著者が書いていたが、意外と物静かで親切な人が多い。
 守衛さんに聞くと、魚がし横丁という細長いハーモニカのような建物が並んでいる中の7号館にあるという。
 さっそく行ってみる。夕方で人もいないと安心していると、正面からトラックだの、荷物を運ぶ小さな車だのが、突進してくる。さっと避けながら、7号館を探す。ちょうど夕方はゴーストタウンのように淋しい。7号館の2階にあった!が、とっくに閉館していた。戸には「どなたでもどうぞ」と書いてある。
 また今度来ようと決心して、後にした。
 築地はすっかり夕暮れ時。開いている寿司屋で寿司を食べて帰ってきた。

 築地の市場は日本海軍発祥の地なんだけれど、残念ながら軍隊にはとんと興味がわかない。それよりも活字発祥の地というのが気になった。もっとも横浜に外人居留地ができる前は、築地が外人居留地だったので、日本近代の様々なことの発祥の地であることは当然なのだけれども。

 意外と築地周辺は面白い。

20:13:17 | falcon | comments(0) | TrackBacks

経堂図書館

昨日、世田谷区立経堂図書館へ行った。
 小田急線の高架下にある。経堂駅の改札を出ると、正面に図書館の入口がある。
 すぐ隣に書店があり、周辺は賑やかな商店街だ。
 毎週月曜日とそのほか休館日があり、火曜日から土曜日までの開館時間は午後9時半まで、帰宅が遅くなっても図書館が開いている。現在、世田谷区ではもちろん、おそらく東京都23区内でも、最も利用率の高い図書館だろう。
 談話室、児童のためのお話室(ガラス張りだけど、周囲には音が漏れない)、インターネット検索用のパソコン5台(アクセスできないサイトがあり、登録して50分まで)がある。天井が低く、狭い感じがあるが、高書架を配置して、意外と蔵書量がある。
 出入口が2か所あり、それぞれブックディテクションシステムがおかれ、貸出処理の済んでいない資料の持ち出しをチェックしている。
 世田谷の住宅街にある点、また東京農業大学、恵泉女学園中学・高等学校、鴎友学園など学校が多い点も、利用率を高めているといえるであろう。
 また、経堂の商店街の中に、日本ロシア語情報図書館(入館料200円)もある。
 もう少し足を延ばせば、招き猫の伝説が残り、桜田門外の変で命を落とした井伊直弼の墓のある豪徳寺、世田谷八幡宮など名所も多い。世田谷のボロ市会場となる通りも近い。
 早春の風に吹かれて、ぶらぶら図書館をめぐり歩くのにちょうど良い散歩道だ。

01:21:06 | falcon | comments(0) | TrackBacks