December 18, 2006

図書館の本を大切に

 先日、読売新聞夕刊の1面に、図書館の本が書き込みされたり、ページを切り抜かれたりしていることが問題になっている記事が掲載されていました。

 そういえば、ずいぶん前に公開された映画で、劇作家ジョー・オートンの半生を描いた『プリック・アップ』(原題:Prick up your ears)で、オートンが公共図書館で借りた大量の本のページを切り抜いて、逮捕されて、1962年禁錮6ヶ月の刑で刑務所に送られたエピソードを思い出しました。1960年代に起こった事件で、当時の図書館関連の雑誌にも、その経緯が載っています。オートンは、ロンドンのイズリントン地区の公共図書館から借りた大量の本(写真集など)から、ページを切り抜き、自分の住んでいた部屋の壁にコラージュのように貼っていたのです。その部屋の写真は、映画の原作になった本にありました。当時のイギリスでは、図書館の本を汚損、破損すると、刑務所行きだったのです。
 オートンは刑務所に収監されたことをきっかけに、劇作家への道を歩みだすのですが、仕事が順調になった矢先に、ゲイの友人に撲殺されます。映画の原題は、原作となった本の題名です。文字通り訳せば「聞き耳を立てろ!」ですが、日本で公開されたときの映画の題名は原題の2語になっていて、意味深長なニュアンスをかもし出しています。本を汚損、破損したことだけでなく、オートンがゲイだったことも、刑に服する結果になったと思われています。当時、同性愛は罪だったのです。映画の『アナザー・カントリー』や『モーリス』は、こうしたことが背景となって描かれているのです。
 『プリック・アップ』では、多彩な役柄を演じるゲイリー・オールドマンが、劇作家オートンを演じています。地味ーな映画でしたが、図書館オタクには見所はあります。


Posted by falcon at 14:35:27 | from category: Main | TrackBacks
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