April 30, 2011
観能日記:青山能で思ったこと
先日の青山能ですが、狂言「伯母ヶ酒」はとても面白くみました。酒屋を営んでいる伯母(アド)のところへ、甥(シテ)がやってる。伯母はケチで、たとえ親族の甥といえども、一滴たりとも酒をおごってくれない。そこで、甥は一計を案じて、近くに鬼が出没するから気を付けるようにと知らせて、鬼の面を付けて、伯母を脅して、「見るな!」と言いつけ、伯母が顔を伏せているすきに、たらふく酒を飲む。
シテの甥を演じた役者さんは、演技で酒を飲むほどに、うっすらと赤くなり、本当に酒に酔っているかのようでした。驚きです。狂言といえば、狂言自殺とか、その気が無いのに、騒いで嘘をつくという意味で用いられる。たとえ狂言といえども、迫真の演技でした。
室町時代は酒屋が金貸しを始めて、今でいえば金融業となった時代です。だから、単に酒造りをしているという意味以上に、立派な企業なんです。
それにしても面白い狂言でした。
能が始まる前の、針が落ちる音すらも聞こえない、張り詰めた静けさが好きです。
能『源氏供養』ですが、紫式部の霊が現れて、愛欲に苦しんで地獄に落ちた光源氏とともに、紫式部自身も供養してほしいと、旅の僧に頼むのです。源氏物語の巻名が次から次へと謡われ、源氏物語の各場面が思い起こされます。
ほんのひと時ですが、源氏物語に夢中になっていた学生時代に戻りました。
会場の銕仙会能楽研修所は、青山通りを少し入った、周りはかカルチェなどの高級ブティックが立ち並ぶ通りにあります。近くには稲荷神社があったり、画廊や古美術商があったりして、閑静な住宅地でありがら、先端のファッションと古風な風情が一体となった一角です。
そうそう、今回は周りの観客の出す音はほとんど気になりませんでした。1、2回、後ろで紙の袋ががさごそするのが気になった程度です。拍手も囃子方、地謡方が引き揚げた後にしたので、余韻を楽しむひと時が保てました。
こういう時間を大切にしたいと思います。
でね、今日、土曜日は宝生能楽堂で、和の会の「鉄輪(かなわ)」を観に行くんです。これはね、心が離れた夫を恨む、哀しい女の物語なんです。京都の貴船神社を舞台に展開する、丑の刻参りなんです。恐ろしくも、哀切な愛の物語。ワクワクします。正面で見られるので、楽しみです。
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