June 27, 2009

そもそも百科事典の項目をまる写しするものか?

 今日は午前中、情報メディア学会の総会に参加して、岡本真氏の大変興味深く、しかも有益で、面白い語り口の講演の最中に抜け出して(岡本さん、ごめんなさい!ムカッときたでしょうね)、東京都立図書館へ直行して、むすびめの会で、横浜市のライブラリーフレンドの活動についての報告を聞くという、図書館関係の集会のはしごをしてきた。

 『心霊写真』は就寝前のお楽しみで読んでいるのだが、昼間の移動の間は『ウィキペディア革命:そこで何が起きているのか?』(岩波書店,2008)を読んでいる。フランスの作家、ジャーナリストたちが書いたためか、またお堅いイメージの岩波書店のためか、あまり世間の注目を集めていないが、大変興味深い。
 まだ読み切っていないので、書評にならないが、途中までの観点を示すことくらいはできるし、世間から許されると思う。

 序論はウィキペディアへの呪詛から開幕する。匿名性のために記事に責任を持たない、掲載されてから一定期間、誤りを放置している、利用者は信用しきって、無批判でコピー・アンド・ペーストを繰り返すと、畳みかけるようにウィキペディアを批判する。その一方で、信頼性の高い百科事典を何故、参考にしないのかと、従来の叡智の結晶であるブリタニカなどの百科事典を擁護する。しかしながら、執筆者の全員がウィキペディアを非難しているわけでもなく、厳密な統制機関がないにしても、匿名制のもとで、削除・編集を行い、誤謬を訂正することを試みている点を評価している執筆者もいる。

 途中まで読んで、一歩引いて考えたが、そもそもレポートや論文で百科事典の内容を引用文献、参考文献とするか?疑問に思った。Falconにとって百科事典は辞書に近く、単に意味や概念を調べる程度に使う。引用、または参考にするならば、百科事典に掲載されている単行本・雑誌論文を読む。
 ウィキペディアも意味を把握する程度に使うので、そのまま書き写す、あるいは引用に使う気にはなれない。
 どうせなら、他のサイトのページを参考にする。複数のサイト・ページで確認する。
 いずれにせよ、ウィキペディアも、百科事典も、信頼性が高いとしても、引用はする気がない。まして、まる写しはできない。
 『ウィキペディア革命』の中で、ある教員の考えを紹介している。「ウィキペディアで解決がつくような課題は出さない」という考えに賛成票を投じる。百科事典で答えが出るような「図書館クイズ」でお茶を濁すような総合的な学習の時間も馬鹿馬鹿しい。学習指導要領で短縮されても当然だ。これはウィキペディアの問題でなく、利用者である児童・生徒を指導する教員の能力が低いだけと思いたい。

 雑誌論文や図書のほうがはるかに面白い話を見出すことができる。ウィキペディアや百科事典、辞書は、その入り口にすぎない。
 しかしながら、その入り口を軽視してはならない。なにしろ、入口がなければ、「部屋」に入れない。

Posted by falcon at 20:49:25 | from category: Main | TrackBacks
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