May 24, 2007

パゾリーニから横溝へ

 『アラビアンナイト』の映画といえば、ディズニー映画の『アラジン』も忘れ難いけど、西尾哲夫氏の著作で紹介されていたイタリアの映画監督パゾリーニの『アラビアンナイト』も秀逸です。
 Falconが高校生の頃、日本で公開されたとき、18禁でしたので、残念ながら見ることは叶いませんでした。確かに岩波文庫版『千一夜物語』も、想像にたがわず、かなりきわどい性的な表現が出てきます。映画は、大人になってから、渋谷のユーロスペースのパゾリーニ特集の上映で鑑賞できました。ポルノ映画くらい凄いのかと思っていましたが、『千一夜物語』のエッセンスをユーモアを込めて描いたものでした。ほどよいエロスが漂い、今だったら18禁ほどかな?と思います。

 パゾリーニと言えば、特集上映で『カンタベリー物語』『デカメロン』『奇跡の丘』『ソドムの市』など、主要作品を見ることができました。
 なかでも『ソドムの市』は衝撃的でした。見て、しばらくは、気になって仕方がありませんでした。残酷な映画は大好きでしたので、残酷さにはなれていましたが、底抜けに残酷な『ゾンビ』『13日の金曜日』とは違う、意味ありげな残酷さが頭の隅にこびりつくんです。それに糞尿が出てくるので、ぐっときます。
 もともと、マルキ・ド・サド(サド侯爵)の原作です。サド作品ではアンシャン・レジーム期、フランス革命前のフランスを舞台にしていますが、映画では北イタリアの収容所を舞台に、ファシスト党の幹部が少年少女をいたぶる姿を描いています。
 サドはフランス革命前の貴族や聖職者たちのおぞましい悪行を描き、作品を通じて痛烈な社会批判をしています。パゾリーニは、サド作品に仮託しながら、ファシスト党への批判をしているのですね。単なるエログロではありません。

 ところで、ファシストの語源は、ローマ時代の斧に巻きつけたものにさかのぼるようです。斧そのものもファッショと呼んだらしい。トランプカードのキングが持っている、あの斧です。
 斧といえば、『犬神家の人々』にでてくる斧(よき)です。斧(よき)がファシストを暗示するとしたら、あの作品も単なる残酷な探偵小説とは思えませんね。でも、娯楽作品として楽しむべきでしょう。

Posted by falcon at 01:18:03 | from category: Main | TrackBacks
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