September 27, 2013

この本スゴイ!栄養学!



 実は、ついこの間、仕事で北海道へ行っていました。でね、北海道の書店で、この本買って読んでいました。ちょっと前、新聞の書評で紹介されていました。

 この本のテーマとは全然関係ないのですが、登場する化学者、栄養学の学者たちの肖像画、肖像写真が素晴らしい。中には、老醜じゃなかった、老いて威厳に満ちた学者の肖像写真もありますが、青年期から壮年期、学者としては脂ののった時期の肖像写真が、イケメンぞろいなのです。含羞のある微笑みをたたえる顔、憂いに満ちたまなざし、学究に勤しんだ自信にあふれた顔、学者たちの人間性を見事に写し出しています。
 著者の巧みな筆さばきで、彼らの驚くべきドラマが展開します。
 なにしろ、最初に登場するフランスの化学者ラヴォアジエですら超イケメンです。彼は空気中での物の燃焼に酸素が関わっていることを究明した人です。化学の教科書でお馴染みの上目遣いの肖像画は、改めて見ると印象的です。フランス大革命のさなか、徴税請負人だったために断頭台の露と消えた人です。また、傍らのラヴォアジエ夫人の姿も描かれて、深い印象を残します。

 森鴎外といえば、夏目漱石と並ぶ、近代日本の文豪の一人ですが、鴎外の本当の姿は陸軍の医者でした。彼は当時の兵士たちに多かった脚気を食事に由来する病と考えなかったために、多くの死亡者を出してしまったことを著者は克明に暴いています。当時の医学界が脚気の原因を究明しなかったので、もっとも森鴎外だけに責任を負わせるのは酷なのですが、森鴎外、森林太郎に医者としての責務が無かったとも言えない。
 脚気とは、今では忘れ去られた病気ですが、白米を食べたことでビタミンB1不足による心不全などを伴う病気です。重篤な場合は死に至ることもある恐ろしい病でした。そういえば、まだFalconが小学生のころ、まだ脚気の検査がありました。膝をゴムの小さなハンマーで叩く検査です。

 化学式やオルニチン回路、クエン酸回路など高校の生物の時間に習った項目が次から次へと現れますが、苦手な人は学者たちの繰り広げるドラマに注目しましょう。ビタミンや栄養素の偉大な発見の裏には熱きドラマが潜んでいました。ドグマの呪縛に苦しむ学者、茶目っ気たっぷりの学者、家族に見捨てられた悲運の学者と、一人ひとり取り上げても伝記作品となります。

 これを読むと、ビタミンと補酵素の働きがわかります。ただし一般向けなので、もう少し踏み込んでくれたなら〜、という程度の説明です。少なくとも「ビタミンCはお肌の美容に最適!」という意味不明な独断的な説明よりは詳しい内容になっています。サプリメントが必要な理由がいくらかわかりました。

 それから、最後の章で、
 ・糖質が脂質に合成されて蓄えられる。
 ・糖質や脂質が不足すると、たんぱく質がエネルギー源になる。
 ・糖質や脂質からたんぱく質が合成される。
 というような説明がありましたが、もっとも知りたかったのは糖質や脂質からたんぱく質が合成されるメカニズムとプロセス、要するに仕組みです。Falconはどちらかといえば糖質中心の食事を取ります。糖質ばかり摂取して、たんぱく質が合成されるのかが、物凄く知りたいと思いました。炭素C、酸素O、水素Hで組成される糖質・脂質がたんぱく質・アミノ酸になるためには窒素Nが必要です。
 思えば、馬や牛、ゾウやキリンやカモシカなど草食動物のほうが、ライオンやヒョウなどの肉食動物よりも逞しい体躯をしています。ということは、糖質の多い植物を食べている草食動物はたんぱく質を合成していることになります。事実、草食動物から肉食動物はたんぱく質を摂取しているわけですから。
 ハンマー投げの室伏広治選手は糖質中心の日本食を好むそうです。それでいながら、あの逞しい身体を維持できるのは何故なのか、興味が尽きません。水泳の北島選手も日本食を好むとか。

 かなり分厚い新書ですが、一気に読めました。

22:19:49 | falcon | comments(0) | TrackBacks