January 10, 2012

ナポレオン三世と学校図書館

 フランスから戻ってきました。

 今回は学校図書館の視察旅行でした。

 パリは犬のフン害が大問題で、法律でパリ市内の観光地区で、犬のした糞を放置しておくと、罰金を徴収されます。ですが、相変わらず、犬の糞は減らず、今回も何度も犬の糞を踏みそうになりました。

 もともとフランスにはトイレがありませんでした。
 ルイ14世が建てたヴェルサイユ宮殿にはトイレは無く、貴族たちの多くが庭の茂みで用を足していたと言われます。なかには宮殿の部屋や廊下の隅で用を足していたみたいです。それで、汚れた床の上を歩くときに、宮廷の女性たちがかかとを高くした靴を履いたのが、ハイヒールの起源と言われています。貴族たちの男たちもハイヒールを履いていました。事実、ルイ14世の肖像画を見るとハイヒールを履いています。
 ルイ16世のもとにお輿入れしたマリー・アントワネットは、オーストリア・ハプスブルグ家出身ですから、ウィーンでみっちり作法を身につけていたのですが、ルイ16世があまりにもガサツなので幻滅を感じたと言われます。ウィーンの宮廷にはすでにトイレがありました。マリー・アントワネットの母にして、帝国の元首マリア・テレジアは激務の中、椅子におまるを据え付けて執務したと言われています。ところが、ヴェルサイユ宮殿にはトイレが無い!、たまりかねた潔癖症で清潔好きのマリー・アントワネットはヴェルサイユ宮殿の自分の部屋にトイレを付けました。それで、付いたあだ名が「マリー・アントワレット」、お後がよろしいようで。

 で、話が終わりません。

 そもそも、ルイ14世がパリを嫌って、ヴェルサイユへ宮殿を移したのが、政治的には権勢をふるっている旧勢力から離れる目的もありましたけど、パリがあまりにもゴミゴミしていて、そのうえ、住民たちが道に排泄物を撒き散らして、不衛生だったからです。深夜、貯めていた糞尿を道に捨てていたのです。糞尿を回収する業者もいましたけど。

 でね、時代が下って、ナポレオン一世の甥に当たるナポレオン三世は、パリ市長オスマンに命じて、パリの大改造計画を行い、道を整備して、下水道を設置して、パリを清潔な都市に変貌させました。
 それでも、犬のフン害は無くなりませんでした。徳川綱吉が見たら、喜ぶでしょうね。パリは未だにお犬様を大切にしています。「生類憐みの令」が続いています。
 パリは犬のフンだけでなく、人口も多いのでいさかいが多く、人のフンガイも少なくありません。

 「え、何かあったの?」
 まあね、それは御想像にお任せします。

 それで、今回の旅行では鹿島茂著『怪帝ナポレオン三世:第二帝政全史』を読んでいました。
 無茶苦茶おもしろい著作です。



 実はこのナポレオン三世の時代に、初等教育法が制定されて、1862年に教育省令で、初等教育学校(小学校)に「学校図書館」が設置されました。学校図書館と言っても、政府から支給される本を設置する書棚を置いただけにすぎません。
 残念ながら、鹿島茂氏の著作では学校図書館について触れていませんが、その時代背景を知るには好著です。
 好色で、謎の多い、しかも、驚くほど近代的な開明な思想の持ち主、ナポレオン三世の魅力と、パリが繁栄を謳歌した時代を理解できます。



01:34:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks