April 05, 2011

読む麻薬

 時節に関わらず、不謹慎な話と思われるが、至って真面目な話なので、誤解しないで頂きたい。麻薬の話である。



 最初はためらった。電車の中で読んでいたら、白い目で見られるかもしれない。
 もちろん麻薬には手を出す気もないが、実に興味深いエピソードがめくるめく展開する。
 麻薬と言っても、気持ちを落ち着かせ、多幸感に浸れるもの、気持ちをハイにさせるさせるもの、幻覚を起こすものに大別できるらしい。
 日本では法律上「麻薬」「覚せい剤」「向精神薬」の扱いが大変面倒で関連する主な法律が5つあり、類似する作用の成分でも法律でまたがって規制されている。著者は、いっそのこと、一元的に、つまり、一つの法律で規制したほうがよいとしている。法律上は、「大麻」は「麻薬」「覚せい剤」とは別の扱いになっている。

 Falconが以前から疑問に思っていたことが読後、一気に解決した。ケシの実から作られるモルヒネを化学的に処理したものがヘロインだけれども、ヒーロー(英雄)・ヒロイン(女主人公)と言葉の音が似ていると思っていた。語源につながりがあった。それから、コカの木の葉から作られるコカインとコカ・コーラの「コカ」には何か関係があるのかと思ったら、やはりそうだった。

 読み始めると、まさに麻薬のようにやめられなくなる。

 この本は、麻薬をただただ恐ろしい薬として描くのではなく、文化的に、歴史的に、あるいは薬効性のある薬(モルヒネ)として、偏見なく叙述している。麻薬や覚せい剤は元々、薬として用いられていたものが多い。図らずも、恐ろしい病気から発見されたもののある。
 NHKの番組で中野京子さんが解説していた「聖アンソニーの火」という病を引き起こす麦角菌の成分から幻覚剤のLSDが生まれている。麦角菌が起こす病の恐ろしさは中野京子さんの著作を読んでいただきたい。本当に「怖い」。



 実は身近な植物や動物にも恐ろしい成分が含まれている。放射能物質も極めて恐ろしいが、われわれの手の届くところに毒が潜んでいる。
 じゃがいもは日にあてたり、発芽をすると、激しい下痢を起こすソラニンという有毒な物質を発生させる。そこで発芽を抑えるために放射線を照射したり、農薬を使っている。アメリカでは農薬を用いている。放射線を過剰に恐れている人がいるが、放射線は身近なところで用いられている。

 そもそも、アメリカとソビエト、中国、インド、フランスなどが核実験を行い、世界中に放射能物質を撒き散らしている。アメリカが湾岸戦争、イラク戦争でどれだけ劣化ウラン弾を用いたか、知っているだろうか?今でこそ、自衛隊とともに被災地の救世主として、アメリカ軍が投入されているが、一皮むけば、何が起こるか、わからない。

 麻薬をはじめ、人間の精神に多大な影響を与える物質の正体を知るのには好著。もし学校図書館で蔵書とする場合、高校生なら冷静に受け止められるかな?小学生には難しすぎるけど。

 コカインに関連する物質(薬剤)に、リドカインやキシロカインがあるけど、毒性の少ない局所麻酔剤として用いられている。
 Falconはたびたび歯科医院で、リドカイン・キシロカインのお世話になっている。「カイン」というのはコカインと関係があることを示している。逆流性食道炎で鼻から内視鏡を入れた時も、キシロカインを粘膜に噴射していた。
 麻薬も紙一重である。

01:36:44 | falcon | comments(0) | TrackBacks