April 25, 2010

「読書離れ」「活字離れ」について

 4月23日は「子ども読書の日」でした。また、今年は「国民読書年」ということもあって、読書をめぐる論議が活発に繰り広げられています。
 ある雑誌に、知人が「子どもの読書離れ、活字離れ」について書いていたので、興味深く読ませていただきました。
 尤も、その人は図書館のことに熱心に取り組んでいるだけなので、あげつらって責めるのも可哀想なのですが、発言に影響力があるだけに看過できないと思いました。

 子どもの「読書離れ」「活字離れ」は、よく話題になりますが、根拠は一体、何か、十分に吟味されずに、なんとなく、周りで騒いでいるので、つい口走るという人が多いようです。
 根拠となっているのは、全国学校図書館協議会(全国SLA)が行っている読書調査です。そのほか、読売新聞が行っている読書調査もあります。全国SLAの読書調査は都道府県の小学校、中学校、高等学校の3%を抽出して行っている調査であり、悉皆調査(全部調査)ではありません。読売新聞が行っているのも聞き取り調査で、全国の国民を調査した結果ではありません。また、全国SLAの読書調査は5月1ヶ月間に何冊読んだかを調査して、1冊も読まなかった児童・生徒を不読者として割合を算出して、これから「読書離れ」「活字離れ」を判断しています。読売新聞の調査も1ヶ月間に本を何冊読んだかを調査して、1冊も読まなかった人の割合を算出しています。
 小学生はよく本を読んでいます。絵本も児童書も含まれますから、より高度な本を読む中学生と高校生はハンデがあります。中学生と高校生は3ヶ月、6ヶ月と期間を長くすると、かなり読書していることがわかります。『カラマーゾフの兄弟』を1ヶ月で読み終わるのは無理ですよね。Falconは、人に知れると本当に恥ずかしいのですが、読書はあまりしていません。それでも、中学時代、学校図書館で吉川英治著『私本太平記』を読みました。何巻だったか、忘れてしまいましたが、かなり時間がかかったと思います。

 その人は、図書の売れ行きが悪いことも根拠のように取り上げ、子どもの「読書離れ」「活字離れ」はインターネットと電子メールに原因があるように書いているのですが、中学生と高校生の「読書離れ」「活字離れ」の最大の原因は、部活動と受験勉強です。とはいえ、部活動も以前ほど厳しくなくなりました。受験勉強も、1970年代、80年代の頃のような「受験地獄」は過去のこと、大学生のレベルの低さを思えば、「死ぬほど勉強した」とは思えません。大学はよりどりみどりですし、半分ちかくがAO入試、推薦入試、面接で合格していますから、読書ができないほど苦労しているとは思えません。が、学校生活のほとんどを授業と部活動に流され、受験勉強で不安になり、読書しなかっただけでしょう。

 それから、朝の10分間読書(一斉読書)のおかげで、「読書離れ」「活字離れ」は解消されてきました。読解できたかを考慮しなければ、少なくとも1冊は読んだという経験をして、読書習慣が身に付いているはずです。
 ただ、朝の10分間読書は、文部科学省も読書活動の一環と考えていますが、学校現場では単に子どもたちを落ち着かせて、勉強に取り組む姿勢を身に付けさせる生徒指導の方法と考えているようです。見せかけの読書活動であることは、現場の先生たちがよーくわかっているはずです。

 「読書ばなれ」「活字離れ」を声高に叫ぶ人に限って、現状を正確に把握せず、「私は子どもの頃、よく本を読んだ。今の子どもは、本を読んでいない」という身勝手な意見を主張します。

 温和な結論を言えば、「そういう意見も大切だよね」くらいに受け取り、冷静に、批判的に、多面的に物事を見極めることが大切だと思います。

 Falconは謙遜でもなく、本当に本を読んできませんでした。正確にいえば、遅読で読んだ本が少ないのです。だから、「読書離れ」「活字離れ」と聞くと、胸も、耳も痛みます。ああ、情けない、恥ずかしい限りです。

01:49:04 | falcon | comments(0) | TrackBacks