February 17, 2008

とはずがたり

 eラーニングも、そろそろ終盤。残り少しになった。
 今日(16日)は午前中、職場のパソコン室で、作家・立松和平さんのお話を聞いた。
 素直に告白すると、立松和平さんの小説は読んだことない。興味があるが、イマイチ惹かれなかった。
 講演の映像で見ていると、立松さんは若々しい。ちょうど誕生日の頃だったようで、60歳と照れながら話していた。えっ、60歳!とても、とても見えません。若すぎます。(Falconも年相応に見られないけど、最近は「幼い」と言われる。ネェー、チョット!言葉選んでよ!「若い」でしょ、「若い」!何で、オネエ言葉なんだろ?)

 勿論、講演のはじめは最近上梓したばかりの小説『道元禅師』(東京書籍)のお話でした。読もうと思っていた小説です。書き上げるのに9年かかったそうです。道元の『正法眼蔵』を少し読んだことがあるので、興味がありました。鎌倉時代の宗教書としても、哲学書としても、ベスト5の1つでしょう。
 道元の両親についてはさまざまな説がありますが、立松さんも指摘していたように父親は久我通親(源通親、土御門通親)か、その息子の堀川通具(久我通具)のようです。立松さんは新古今集の歌人としても活躍した堀川通具説を取ったようです。立松さんは姓の久我をクガと読んでいますが、正しくはコガと読みます。おそらく、立松さんは聴衆のことを慮って、クガと読んだのでしょう。女優の久我美子さんも久我家の出身です。また、岩倉具視の岩倉家も久我家の血筋です。ただし、岩倉具視は堀河家から養子に入ったので、久我家の血筋ではありません。加山雄三さんは、岩倉具視の子孫です。
 久我家といえば、以前紹介したコミック『後宮』の主人公・二条も久我家の出身。久我通親は二条の曽祖父です。『正法眼蔵』と『とはずがたり』は同じ血筋の人が書いた作品です。
 道元は出家しなければ、黙っていても血筋だけで大臣になれた人物です。言わば、ハイソ、超セレブな家の人です。でも、質素な人生を過ごした人です。大変勉強家で、しかも伝えることがたくさんあって、『正法眼蔵』を書きました。
 今日聞いた言葉で「遍界不會蔵(へんかいかつてかくさず)*(あまねく)という字ですが、ぎょうにんべんに扁というのが正しい字のようです。偏ではまったく意味が違います。遍を代字としました」が心に残りました。図書館に関わる人なら、座右の銘にしたい言葉です。世界は真理を隠していない、真理はあらゆるところに現れている。我々は真理を見ていても、見ようとしないだけである。何をしても真理があり、この世には真理に満ちあふれているという意味で、仏の御手にすくわれるような気がします。
 そのほか、柳田國男の『遠野物語』の「迷い家(まよいが)」の話と浦島伝説の話がありました。(「マヨイガ」はコミックの題材になっているようです。)

 それから、午後は恵比寿の日仏会館へ「イスラエルの図書館事情」の講演を聴きに行きました。
 Falconは以前イスラエルへ行ったことがあるので、とても楽しく聴きました。そのときは、東地中海のリゾート・テル・アヴィブ、要塞都市の遺跡マサダ、死海、高原の宗教都市エルサレム、古代の学問所があったカエサリアへ行きました。ローマ経由で行ったので、ローマ観光も楽しみました。
 イスラエルのヘブライ大学の図書館で働いた経験のある方の講演でした。ヘブライ大学の図書館は国立図書館を兼ねていて、納本制に基づき、国内出版物を収集するほか、世界中のユダヤ関係の図書を収集しているようです。多民族・多言語・多文化の国ですから、できるだけ多くの資料を収集しているそうです。しかしながら資料の整理、つまり目録作業が追いつかないそうです。
 世界の国立図書館には、いくつかの種類が見られます。日本の国立国会図書館のように、議会の図書館と兼ねているもの。アメリカの議会図書館の通りに創ったのだから、当然なんですが。王族や貴族の図書館を継承して、国立図書館としているもの。これには、ハンガリーの国立図書館、フランス国立図書館、経緯は少し異なりますが、British Library(英国図書館)も、その1つでしょう。国立大学の図書館と兼ねているもの。これには、デンマーク王立図書館が当てはまります。
 その性格付けとして、イスラエルのヘブライ大学の図書館は、国立図書館だけでなく、「民族国家の図書館」という性格があります。Nationalは「国立」と訳されますが、行政組織としての国家と考えるよりも、「民族文化」という意味合いのほうが強い。「ユダヤ民族の」という主張が込められています。
 実は、国立図書館には、その地域、その国が辿った歴史と人々の思いが込められています。
 と、土曜日はとても有意義な一日でした。

00:15:18 | falcon | comments(0) | TrackBacks