December 01, 2008

断言!著作権は金の問題

 「出版ニュース」でthinkCの記事を読んだ。thinkCとは、「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」のことである。
 記事によれば、10月30日のthinkCの提言発表とシンポジウムが行われて、漫画家の松本零士が人格権の立場からリスペクト=敬意の問題を取り上げたらしい。それに対して、東京大学名誉教授の中山信弘氏と弁護士の福井健策氏が著作権の保護期間延長の問題は金の問題とキッパリ言いきったそうだ。これまで文化審議会などで、著作者への敬意について論議していたらしく、中山氏はこれが混乱を招いたとも指摘している。

 「人格権の立場から、著作者への敬意を表して、引用するときには出典を明示することを指導したい」
 「著作権侵害で莫大な罰金を支払うことよりも、著作者を尊敬して、著作物を大切に扱うことを指導したい」

 Falconは、これまで受講者がレポートで上記のような言説を書き込んだ場合、誤りを指摘してきた。にもかかわらず、受講者の中には頑として譲らず、「どこが間違っているんですか!」と食ってかかる人もいた。
 学校関係者や図書館関係者の中には、金の問題を口にするのが嫌で、とかく精神論、心の問題を盾にする人がいる。「清貧の思想」を信奉してい人が多い。
 しかし、著作権は知的財産権の一つであり、著作者、著作権者、実演家などの著作隣接権を持つ個人・法人の排他的独占権である。
 著作者の一部には創作活動をサイドビジネスにしている人もいるが、創作活動を生業にしている人もいる。創作活動をしている人は、尊敬される、敬意を表されるよりも、著作物を買ってもらって金が欲しいのが本音だろう。ただ、読者から「尊敬していますから、図書館で借りて読みますね」と言われて、「ざけんじゃねえよ、本屋で買えよ、このあほんだら!」と作者が言ったら、実にみっともないけど、「作品が売れて何ぼ」で、生活が成り立っている作者の立場を考えると切実な問題だと思う。俗に印税と言われいる、著作権料は図書の場合定価の10パーセントが相場だから、定価1500円の図書が1冊売れても、150円が著者の分け前だ。著作者の立場から考えれば、尊敬だの、敬意だの、キレイごとで済まされない。著作者の中には、尊敬されるだけで満足する人もいるかもしれないけど、多くの著作者は生活の糧を得るだけで精いっぱいだと思う。
 それから、人格権というけれども、人格権とはどういうものなのか?日本の著作権法では、著作者人格権は公表権、氏名表示権、同一性保持権のことであって、精神的利益である声望、名誉を保護する。
 外国の著作権法でいうリスペクトとは、「尊敬」「敬意」ではなく、著作者の権利を「尊重」すると理解したほうがよい。著作者を高みに戴いて畏れ多く敬うのではなく、同等の立場で財産権を尊重すると理解するのが最も妥当だと思う。

21:54:34 | falcon | comments(0) | TrackBacks