May 14, 2006

溜飲が下がる究極のボランティア論!

 新聞の書評を読んで、すぐに本屋に駆け込みました。

 池田清彦著『他人と深く関わらずに生きるには』(新潮文庫)
 2002年に単行本として出版され、文庫版に。

 養老先生の『バカの壁』以来、痛烈な人生訓って、はやっていますよね。これもその一つ。著者の池田先生は生物学の先生で、『新しい生物学の教科書』を以前読みました。わかりやすく生物学の最先端を解説している本です。

 文庫版の「ボランティアはしない方がカッコいい」65〜74ページ、これだけ読むだけで、この本の価値があります。
 介護実習を義務づけた田中真紀子さんを「バカで卑怯」と言ってのける。Falconは、田中真紀子さんを人間的に憎めない素敵な人だと思っていますけど、介護実習を教職課程受講の大学生に義務づけた点だけは、政策として無意味だったと思います。たぶん、著者の池田先生も同じご意見だと思います。不自由を感じている子どもや高齢者の気持ちを、バスや電車で騒ぐ失敬な大学生が解って、お世話できるはずがない。戸惑って、おろおろするだけで、現場の施設の人には迷惑この上ないだろうと思います。Falconの身近に、不自由を感じている人がいましたから、施設の人の気持ちがわかります。

 学校図書館へやってくるボランティアの方々は、「正しい行為を行なっている」と信じ込んでいる「善意」の人たちが多い。真紀子さん同様、人間的には魅力のある人も少なくない。「読み聞かせをすると、子どもたちが目をキラキラと輝かせて、活き活きとしてくる。その子どもたちの姿を見るのが私たちの生きがいです」ボランティアの人たちから、こんな言葉を聞きます。確かに数人の子どもは、お話に耳を傾けているでしょう。大半の子どもたちの本音は「嫌な授業をしなくて良いのだから、聞いている振りして、付き合ってやるか」ですよ。Falconは体育が大の苦手で、雨で校庭が使えなくなって、体育をやめて、先生が読み聞かせしてくれたら、それだけで大喜びでした。お話を聞いているだけで、楽しいのですから。

 それから、最近、人気のある川島隆太先生の本を読んでいたら、「読み聞かせは、ボケ(認知症)に効果ある」と書いてありました。実際に軽度の認知症になった高齢者の方が、学校でボランティアとして読み聞かせをしていたら、症状が改善したとありました。こうした高齢者の方を責めるつもりはありません。でも、子どもたちがどれだけお話を理解したかという、具体的な検証がないのです。つまり、Falconが何に不満があるかというと、スポットライトが当たっているは読み聞かせをした人で、聞いている子どもたちは暗闇の中で拍手しているだけになっていることなんです。

 以前、図書館職員の集会で、「私は、老いた親の面倒を見ながら、乳飲み子を抱えて、夫が失業していますが、バスで30分かけて、学校図書館で読み聞かせボランティアをしています」と、やつれた顔に笑顔を浮かべて、発言した人がいました。絵に描いたような美談ですが、Falconは口には出しませんでしたが(だから、ブログで呟くのですが)、「あなたのほうが、ボランティアの人に助けてもらったほうが良いよ」と思いました。

 池田先生は、詳しくは書いていませんが、災害などの緊急時に救命、復旧に関わるボランティアは、ここで問題にしているボランティアとは異なります。おそらく災害や事故、病気で苦しむ人たちを救う人たちは、「ボランティアだ」なんて考える暇もなく、取り組んでいるでしょう。まして、「喜んでもらおう」とか、「正義の味方だ」なんて、意識もなく、自然な心の発露としての行為だと思います。よく読めば、この点については池田先生は批判していない。
 先日、Falconの父が、親戚の法事に出かけて、山梨県の塩山駅前で倒れました。そのとき、周りの人が、慌てておろおろする母を勇気づけて、父を介抱して、救急車を呼んでくれたそうです。もう少しで、父は命を落とすところだったようです。父が一命を取り留めたのは、タクシーの運転手の方が、心臓マッサージしてくれたおかげです。母は、御礼も言う間もなく、病院に行ってしまって、大変申し訳なかったと言っています。この方々が、本当の意味でのボランティアだと思います。

 父と母に成り代わって、改めて、お礼を申し上げます。父はおかげですっかり元気になって、孫たちと遊べるようになりました。
Posted by falcon at 23:37:12 | from category: Main | TrackBacks
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