June 13, 2014

学校司書法制化はアリの一穴か?!

 湾岸戦争当時、海部首相は後藤田氏にアメリカの言うとおりにしたら「アリの一穴」となり、憲法の防波堤は崩れると一喝されたそうである。

 日本の学校図書館の「憲法」と言ったら、大袈裟かもしれないが、学校司書の法制化を盛り込んだ条文を挿入する学校図書館法の改正が着々と進んでいる。6月11日の衆議院の文部科学委員会で可決され、衆議院本会議の可決へと進み、参議院の文部科学委員会の審議、可決を経て、参議院の本会議での可決、制定への可能性が高くなってきた。今期の通常国会の会期末は6月22日。もう秒読み段階と言っても良いだろう。

 司書教諭を養成する立場として、学校司書の法制化は反対だった。
 熱心に活動してきた学校司書の人たちのことを考えると、本当に頭が下がる思いであるし、この人たちの努力は無にしてはならないと強く思う。一方で、司書教諭が学校図書館に関われない現実を良いことに、資格もなく、素人ながらと、適当に、専門職と称して、学校司書をしてきた人もいる。本来、学校で教育に関与するものは教員の免許状を必要とするのに、学校司書にも教育に関わらせてほしいと、厚かましくも述べた人もいる。

 どんな仕事でも有能な人、無能な人はいる。司書教諭が無能だ、学校司書は無能だと言いあっても、結論が無い。

 問題は、今回の法案が学校司書の立場を好転させるものではないことで、むしろ、現状維持か、最悪、平成9年の司書教諭12学級以上必置を平成15年度からと定めた学校図書館法改正と同様に、学校司書を置いたところで、人件費がかかるだけで、ダメだ、無償で学校図書館に関わってくれるボランティアに来てもらおうという方向に向かう懸念がある。
 現在、公立の小中学校の学校司書は、臨時職員、派遣職員などの雇用の不安定な非正規職員が大部分を占めている。派遣職員は直接、学校で教員や児童生徒の要望に応えられない。派遣会社が仲介して、業務の指示を受ける。

 臨時職員にも問題はある。限られた時間しか働かないパートタイム職員が多いので、ある程度、責任は無いし、支給額が少なくても、子育てをしながら、家庭の仕事をして、過ごすことのできる、一部の人には最適で都合のいい仕事である。それに図書館となれば、泥臭くないし、周りは学校の先生に囲まれて、しかも法案が成立すれば国がお墨付きを与えた専門職である。それに学校の先生みたいに成績をつけることもなく、かなり気楽な仕事である。
 これで資格も無くできるとなれば、願ったり叶ったり。
 もし、正規職員として配置されると、少なくとも平日1日8時間は拘束されるし、責任は重くなる。そうなると、臨時職員のままが良いと思う人が多いと思う。(大学の非常勤講師は稼ぎは少ないが、さまざまな拘束は無い。一方、大学の専任教員は稼ぎがあっても、その分、拘束が厳しいし、毎日、死にそうである!)

 とういうわけで、学校司書が良いか、悪いかよりも、日本の学校図書館の状況が最悪の状況にならないかと思う。

 フランスの公立幼稚園(保育学校)と小学校にはBCDという学校図書館はあるが専任の教員も職員も配置されていないので、日本の小学校の学校図書館とドングリの背比べであるが、コレージュ(4年制中学校)とリセ(普通科高校)、職業リセ(職業高校)、農業リセ(農業高校)のCDIという学校図書館にはドキュマンタリスト教員と言う専任の専門の教員がいる。学校によって、ドキュマンタリスト教員以外の職員を配置している。その職員は国家試験を受験して合格すれば、ドキュマンタリスト教員になれる。

 本当は学校司書を、司書教諭の候補者として位置付けて、教員採用試験で合格すれば司書教諭となれるするのが理想なんだけどね。そうしないと、学校司書と司書教諭、その他の教員の小競り合いになって、ボランティアがしゃしゃり出ることになると思う。

Posted by falcon at 21:41:23 | from category: Main | TrackBacks
Comments
No comments yet
:

:

Trackbacks