December 10, 2013

ダヌンツィオに官能する

 日曜日、東京大学駒場キャンパスで開催されているダヌンツィオ展に行ってきました。「そういえば国家公務員試験2種(図書系)を受験しに来たのが、もう20数年前だったなあ」と回顧しながら、すっかり枯れ枝になった樹木を眺めながら、博物館の入口に向かいました。
 入場は無料です。といっても、関心が無いためか、訪れる人もまばらです。どこかの美術館とは大違いです。

 「ダヌンツィオって、ダレ?」

 ガブリエレ・ダンヌンツィオと呼んだほうが正しいかもしれません。19世紀末から20世紀初頭に活躍したイタリアの作家です。日本では明治時代に非常に人気のあった外国の作家でした。森鴎外、夏目漱石、森田草平らが関心を寄せていた作家です。森田草平と平塚明子(後の雷鳥)との塩原心中未遂事件、いわゆる『煤煙』のきっかけとなった作品を書いた人です。三島由紀夫が傾倒したことも有名です。イタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作となった『イノセント』の原作がダヌンツィオの『無辜なる者』です。映画と原作は異なる点が多いのですが、そこがダヌンツィオとヴィスコンティの人生に対する哲学と美学の違いでしょう。

 世界史では「未回収のイタリア」問題を解決するために、現在のクロアチア、当時はユーゴスラビアのフィウメという軍港へ向けて進軍した愛国主義の作家として有名です。

 夏目漱石は『それから』と『彼岸過迄』に「ダヌンチオ」の名前を登場させています。このことは以前、ブログに書きましたね。

 「そういえば、『彼岸過迄』の主人公って、須永市蔵だったよね。それに、「須永の話」って章もあった」

 ああ、それは置いといて、ダヌンツィオが晩年住んだ邸宅が、まるで美術館のように凄いんです。展覧会では写真と映像でしか見られないのですが、ヴィスコンティ監督の映画のセットみたいでした。トイレがアートに囲まれて、落ち着いて用がたせたのか心配になりました。

 「漱石が、心をこめて描いたのが嫉妬する須永の内面で。。。」

 今はダヌンツィオの話ですよ。
 日本と関係の深い作家だったんだなあと思いました。

 「漱石と言えば、ターナーでしょ!」

 そうでした、まだ上野のターナー展、行っていません。もう会期が残り少なくなりました。。。

Posted by falcon at 00:31:40 | from category: Main | TrackBacks
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