September 28, 2013

ミケランジェロの謎

 今、中公新書の『ミケランジェロ』を読んでいます。

 通常、日本でも外国でも、姓で呼び名を表します。たとえば、スペインの画家ディエゴ・ベラスケスは、「ベラスケス」と呼んでいます。フランスの印象派の画家クロード・モネは、「モネ」と呼んでいます。

 ところが、イタリア・ルネサンスの巨匠3人は何故か、名で呼んでいます。
 レオナルド・ダ・ヴィンチは、今でも「ダ・ヴィンチ」と呼ぶことがありますが、「ダ・ヴィンチ」は姓ではありません。彼の出身の村の名がヴィンチであり、「ヴィンチ村出身の」という意味です。なので、「レオナルド」と呼ぶのは仕方ありません。
 次にミケランジェロは、本名ミケランジェロ・ブオナローティであり、姓で呼ぶならば「ブオナローティ」です。ところが、名で呼んでいます。
 最後にラファエロですが、本名ラファエロ・サンティですから、姓で呼ぶなら、「サンティ」がふさわしい。なのに、ラファエロと呼んでいます。

 実に不思議です。
 名前の呼び方にこだわるのは、図書館の目録の標目で、姓と名で構成される名前は、「姓,名」であらわされるからです。目録の標目とは、資料を探すときの手がかりで、百科事典や辞書の見出し語のようなものです。

 *見出し語については、続きを読んでほしい。

 問題は、おおよそ17世紀以前の画家はあだ名で呼ばれることが多い。宗教画を書いたエル・グレコはギリシアのクレタ島出身で、本名はドミニコス・テオトコプーロスと言い、イタリアのヴェネツィアで過ごした後、後半生をスペインのトレドで過ごし活躍します。「エル・グレコ」は文字通り、「ギリシア人」です。つまり、あだ名です。バロック絵画の先駆者とされる光と闇の画家カラヴァッジョは、本名ミケランジェロ・メリージであり、ミラノ出身の彼の一家が移り住み、彼の育った村の名前がカラヴァッジョなんです。
 ちなみに、2人の画家の名であるミケランジェロは大天使ミカエルのことで、ミカエル+エンジェロ(天使の意)の合成語です。ミカエルは英語のマイケル、略称マイクです。名前についていえば、マイケル・ジャクソンと関係があります。
 このように画家の名前は非常に悩ましい。スペインの画家ゴヤなんか、フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテスが本名です。まあ、フランシスコ・ゴヤと呼んでいますけど。

 「そんなこと言ったら、ピカソなんか、寿限無みたいな名前でしょ」

 まあ、そうですけど。

 図書館関係者以外は「そんなこと、どうでも良いじゃん!」ですけど、われわれはこだわります。

 う〜ん、この「見出し語」という説明だが、大学生のほとんどが理解していない。図書館司書課程を受講する学生でさえ、理解できないようだ。「見出し語」は小学校、中学校、高等学校で教えるレベルである。小学校、中学校、高等学校で、百科事典、辞書の使い方をしっかりと教えていないようだ。図書の目次の使い方も、索引使い方も高等学校までの学校で教えていないようだ。この有様、惨状では、レポートの参考文献にウィキペディアを使うな!と言っても、虚しい呼びかけになってしまう。
 初等教育・中等教育の先生たちの責任を追及したくないが、もう少し基本的なことを教えてほしい。大学生になってからでは、もう手遅れである。その手おくれの重病人が次の世代を教えることになっている。
Posted by falcon at 22:38:17 | from category: Main | TrackBacks
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