July 10, 2013

「赤い糸」の伝説はプラトンが語ったのか?:NHK「100分で名著」饗宴の虚偽

 ええぇぇぇ、「赤い糸」の話って、プラトンの『饗宴』のはなしだったのお〜!!

 今月のNHK『100分で名著』はプラトンの『饗宴』です。
 ずーっと前から、読もうと思っていながら、ひもとくのが億劫だった作品です。本棚の片隅に置きっぱなしになっていました。
 恋愛、それも古代ギリシアの「少年愛」を語っている話なんですけどね。勿論、男女の愛についても語るのですが、究極の天上の愛は少年愛、男と男の同性愛です。

 ちなみに「饗宴」の原題はシンポジオン、シンポジウムの語源です。日本でシンポジウムっていうと、話したがりの人たちが横並びになって短い時間で、周りの参加者のことなんか構わずに、勝手にダラダラしゃべりまくる、独りよがりな、糞おもしろくない会合ですよね。パネリストっていうか、シンポジストたちが意見を戦わせて、会場を巻き込んで、大論戦を繰り広げるなら、それなりに面白いのですが、「有り難い話だから、黙って聴け!」とばかりに、昔は良かったって話をする。典雅、優雅のかけらもない。プライドとエゴ、無知の共演にすぎない。

 プラトンの『饗宴』は、食事をしながら、愛を語り、人間とは何かを問う、歴史上、このうえない「饗宴」です。

 でね、今回の放送では「赤い糸」の愛の伝説は、プラトンが『饗宴』において語っていたという売り込みでした。
 実はFalconはレファレンス・サービスの講義や演習で、このネタ使っています。
 日本文学を専攻した人なら、真実を絶対知っているはずです。
 昔々、テレビのコマーシャルで、お婆さんがぼそぼそ言う場面で使われていましたが、元をたどれば、太宰治の『津軽』に出てきます。気になった人は、青空文庫で検索してください。
 ここで情報の探索を終えるならば、素人です。「先生が教えてくれないから、わ・か・ん・な・い」って駄々をこねている学生のレベルです(こんな学生や受講生に司書の資格を授与する気になれない)。
 これはさらに中国の故事成語に辿ることができます。中国の逸話では「赤い糸」ではなく、「赤縄」なんです。足の指に目に見えない赤い糸が結び付いているというのは、太宰治のセンチメンタルな修辞(←太宰治の本名「津島修治」の掛け言葉)です。目に見えない赤い縄、「赤縄(セキジョウ)」です。
 「赤い糸」と「赤い縄」では、ずいぶんと違うイメージですね。見えない赤い縄では、まるで愛の奴隷、逃れられない運命のようです。

 というわけで、赤い糸の伝説はプラトンではなく、中国の逸話を太宰治が『津軽』で語り、テレビ・コマーシャルで広まったのです。

 学生A「でも、それって、ケータイ小説の『赤い糸』が語源じゃなかったの?」

 違います。

Posted by falcon at 23:42:01 | from category: Main | TrackBacks
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