August 25, 2011

ジャマイカの悪夢

 マンハッタンでのんびり写真を取っていたら、フライトの時間が迫ってきました。ホテルに戻り、荷物を引きずり、J・F・ケネディ空港へ向かいます。乗り換えの駅でなかなか空港行きの地下鉄が来ない。なんとか必死の思いで、空港のカウンターにつくと、出発が1時間20分遅れて午後2時半になりました。

 で、ティク・ナット・ハーンの本を買ったのです。

 ジャマイカ・キングストンまでは、約3時間でした。
 着陸の際に、乗客の間から拍手がわきあがります。久しぶりのランディング・アップローズです。先進国へ到着する飛行機に乗った人は経験したことは無いと思いますが、アフリカなどの国に到着するときには必ずあります。かつて、トルコ航空でチュニジアへ行ったとき、イスタンブール・アタ・チュルク空港に着陸するとき、そしてチュニス・カルタージュ空港へ着陸するときに経験して、その頃は無邪気に一緒になって拍手していました。その後もチュニジア、モロッコ、イスラエルへ行ったときも経験しました。無事に着陸できたことへの機長と乗務員への感謝なんですが、ふりかえるとそれだけ危険すれすれだったんだというわけで、冷や汗が出る思いです。

 パスポート・コントロールも無事に通り、空港を出ると、迎えの車の運転手が待っていてくれました。
 Wayneさんです。この後、しばらく、お世話になりました。そんなに若くはなく、腹が逞しく出た黒人の運転手で、今回の大会の専属運転手だったみたいです。
 「英語は話せるよね。僕はWayneだ。君の名前は?ジャマイカのことは何でも訊いてね。どうしたの?何か心配あるの?」
 矢継ぎ早に英語で尋ねてきます。日本から飛行機に乗り、ニューヨークで一泊したとは言え、疲れています。それに日本では車を運転する人に話しかけてはいけないというマナーがあります。
 「向こうに見える雲が心配なんだ。嵐にならないと良いけど」
 「なんだ、そんなことか、ジャマイカは雨は降るけど、ちょっとの間だけ、毎日、太陽の光があふれている楽園さ」
 Wayneが、と言う間に、雨がポツリポツリ。
 「雨が降ってきたね、大丈夫、大丈夫、こんなの普通だ」
 「沖縄に住んでいたことがあるけど、ジャマイカによく似ているね」
 「ああ、そうかもしれない。ところで、日本では、車は道路の左側を走るの、それとも右側?」
 「左側。ジャマイカと同じ」
 ジャマイカはイギリスの植民地だったので、イギリスと同じで車は左側を走ります。オーストラリアも、ニュージーランドも同様。昔、台湾へ初めて行ったとき、ものすごいスピードで走るバスに乗って、対向車とすれ違う時、恐ろしい思いをしました。台湾では車は右側を走りますから、ぶつかってくる錯覚を感じるのです。
 ジャマイカは日本と同様に車が左側を走るので、沖縄に戻った気がします。風景もヤンバルのあたりにそっくりなので。
 という間に、大粒の雨がどしゃどしゃ降ってきて、稲妻の閃光が空を切り裂き、雷鳴がとどろきました。
 「黙っているけど、怖いの?平気さ、僕らは神を信じているから、雷に打たれても、神が守ってくれる。日本人はキリスト教を信じているよね。クリスマスは祝うんだろ」
 「日本でキリスト教を信じている人は少ない。私は仏教徒だし、務めている大学は、日本固有の宗教である神道を研究する大学だからね。日本には八百もの神や女神がいるんだ」
 「僕らの神は一人だ。おお、ジーザス。ハレルヤ! ハレルヤ!」
 数十メートルの視界を遮るほどに大雨が降ってきています。不安と予感は的中しました。おい、おい、Wayne、運転中にハンドルから手を離すな!
 とうとう道が冠水して、道というより、泥水の流れる川です。車は濁流の中を遡っています。
 「Wayne、大丈夫かな?」
 「何、言ってんだ、神が守ってくれる、ハレルヤ、ハレルヤ」
 ジャマイカの国民はキリスト教でもプロテスタントを信じています。イギリス国教会ですけど、敬虔で、しかも、強く。
 Wayneがハレルヤと言っても、空はちっとも晴れてくれません。ああ、道は大洪水、日本だったら、トップニュースです。
 こうして大雨の中、西インド大学へ到着しました。

 で、大学の宿舎に泊ったのですが、テレビもなく(これは仕方ない)、エアコンもなく、さらに、シャワーを浴びて、ベッドに戻ると、10匹余りのゴキブリが床を這いまわっていました。なつかしい4センチメートルくらいのワモンゴキブリです。日本の本土にはいませんが、奄美・沖縄でよく見られるゴキブリです。沖縄にいたとき、よく見ました。ですから、久しぶりに沖縄に来たと思って、この程度は我慢しました。

 「Falconさん、ゴキブリが這いまわっている中で、眠る気になるね。全く、気がしれない」
 このくらい平気です。見かけによらず、タフです。

 問題はこれからです。
 一晩中、蚊に刺されて、まんじりとして眠ることができませんでした。幸い、日本から虫さされ用の塗り薬を持ってきていましたが、全身を刺されて、絶望的でした。

 太平洋戦争中、南の島で戦っていた兵士たちは、並大抵のものではなかったでしょう。軍隊オタクの人に「戦争は悲惨だから、反対」と語っても、無駄です。彼らは軍隊のカッコ良さと武力しか目に映っていないし、それに彼らは精神があまりにもひ弱で、それを防御するために軍隊に憧れているだけですからね。戦争と、自分たちが憧れる軍隊は違うんです。アメリカでイラク戦争に賛成した上院議員たちのほとんどが、自分の親族を兵士として戦地に赴かせることは絶対にしなかったと言います。もちろん、上院議員自身が戦地へ兵士として行く気はありませんでした。結局、口だけなんです。そのために何千人の人が犠牲になっているというのに。
 思えば、キム・ジョンイルは戦争を起こすと警戒されながら、何もしていない。国内で飢餓で苦しむ人が大量に出たし、日本や韓国から多くの人を拉致しているけれでも、戦争はおこしていない。無論、キム・ジョンイルを擁護するつもりはない。ブッシュ(息子)はイラク・アフガン戦争で多くの若者を戦場に送り出し、劣化ウラン弾を撒き散らし、イラクやアフガンの民間人を巻き込んで多くの被害者を出している。しかも、大変な経済危機を巻き起こして、責任を後任のオバマ大統領に押し付けて、任期を終えた。ブッシュは「21世紀のヒ。。。。
 

 と、つらつら思い、眠気と蚊の羽音の狭間を漂うなか、夜が明けました。

Posted by falcon at 18:20:32 | from category: Main | TrackBacks
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