June 20, 2011

機転を利かせること

 最近、忙しいというか、気持ちが行き詰まって、倦怠感が募っている。東日本大震災の影響で、大学は4月に2〜3週間ほど休講したところが多い。もう前期、春学期が後半、いよいよ大詰めの終盤になって、急に7月から節電対策を実施するので、さらに休講にする大学も少なくない。休講という大胆な策にならなくても、定期試験をやめて、授業時試験に切り替えてほしいとするところもある。
 先生たちも、学生たちも複雑な心境になる。大学の授業が減るのだから、学生たちにとっては内心うれしいかもしれない。その分、試験やレポートの評価が厳しくなる可能性も少なくない。その不安は残る。先生たちとしては、講義内容を十分に学生たちへ伝えきれないという、いかんともしがたい不満が残る。本来15回はしなければならない講義を、10回、場合によっては9、8回で終えなければならない。しかも、4年生で教育実習へ行っている連中は、わずか3回か、多くても5回程度で、試験、またはレポートに臨む。
 確かに、被災地や、放射性物質の汚染を避けて避難所で生活している人を思えば、大学教員が呑気で、寝ぼけたことを言っていると思われても仕方ない。

 休講措置はしなくても、節電はできるはずだ。冷房をしなければいい。窓を開けて風通しを良くして、教室の照明も半分にすればいい。

 それに冷房の設定温度は、毎回トラブルの原因になる。
 「先生、寒すぎます!」と1人の学生が言うので、設定温度を上げると、今度は「暑い!」と文句を言う学生が現れる。体で感じる温度は人によって違う。そんなことに気遣いながら、講義をするのも馬鹿馬鹿しいが、冷房の設定温度が講義評価アンケートに反映されて、教員の評価が悪くなることがある。謂れのないことで叩かれるのは理不尽なことである。
 いっそのこと、冷房なんて無いほうが良い。昔は、冷房がない教室で汗をたらして、勉強した。熱中症にならないように、水分の補給をすればいい。

 つい、普段の不平不満が爆発して、書こうと思ったことを忘れてしまうところだった。
 今、高田高史著『図書館で調べる』筑摩書房(ちくまプリマー新書;160)を読んでいる。もう少しで、読み終わるところだ。図書館で調べることの極意が述べられていて、1行読むたびに納得して、頷いてしまう。中学生、高校生でも、わかりやすく書いているので、そんなに時間をかけなくても理解できるが、頷きながら読むので、頷く時間が長くなって、読む時間が長くなる。
 気になるのは「分類番号」を使っている点で、「分類記号」として、手間をかけて説明してほしかった。

 昔はデーターベースを検索すると言うと、物凄く難しかった。第一にコンピュータが身近に無かったし、コンピュータが使えても、海外のデータベースを使うために通信費、電話代がかかった。
 今はインターネットのおかげで、誰もが簡単に情報検索できる。
 それでも、専門分野の情報となると、誰もが調べられるわけではない。インターネットでは調べられない情報もある。

 大学で、あるいは司書講習などで、教えていると、受講生のほとんどが課題とした問題の中の言葉だけで検索しようとしている。著者の高田さんによれば、「イメージを膨らませる」ことであるが、受講生のほとんどができない。たとえば、「那覇から粟国島まで行くにはどうしたらいいか」という問題が出たら、「粟国島」がわからなくても、「那覇」から「沖縄」のことだなあと連想できそうなものだ。ところが、それがまったくできない人が多い。司書・図書館職員を志す人なら、そのくらいの常識が働きそうなものだが、呆れ返ってしまうほど無能というのに等しい。それでも、「那覇」とキーボードで入力して、沖縄のことだと気がつくはずだが、それでも検索に工夫を加えようとはしない。最終的には、自分では考えず、先生が答えを示すのを待っている。それで、答をなかなか言わないと、悪い先生として糾弾する。
 要するに、情報検索をするにも、図書館で本をさがすにも、コツは機転を利かせて、あるいはイメージを膨らませて、別の言葉や工夫を加えて、何かしてみることである。何もしないで、誰かがしてくれるのを待っていたら、司書・図書館職員として失格である。

 嘆かわしいことに、大学の司書課程を受講する学生も、司書講習にやってくる受講生も、半分くらいがほとんど図書館を使わない人で、「図書館のことが知りたくて受講している」人たちである。なので、「先生から教わらないことはやらない」。なにしろ、「書架とは図書館の本だなです」と説明すると、わかったことに感動するレベルの人が受講生に多い。わからないことを責めるつもりは無いけれど、もうすこし図書館のことを知って、常識程度の知識で機転を利かせてくれたならと、高田さんの本を読んで、嘆息している。

 まあ、図書館職員をめざすなら、高田さんの本を読んで、図書館へ行って欲しいと、梅雨空を眺める日々である。

Posted by falcon at 02:08:25 | from category: Main | TrackBacks
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