March 23, 2011

単位を理解しよう

 Falconの知り合いXはニュースで報道されたことで慌てて行動する。しかも、その知り合いは図書館情報学の専門家を自認している人だ。図書館情報学を専門としている人ならば、図書資料、インターネットの情報を活用して、駆使して判断すれば、良さそうなものだが、その人の人文系の「情報活用能力」は機能しない。たぶん、今頃はペットボトルをさがしまくり、放射性物質を含まない水道水が供給されている地域の知り合いYから水を取り寄せる手配をしていることだろう。

 ニュージーランドの地震の時から、伊藤幸夫,寒川陽美著『知っておきたい単位の知識200』ソフトバンククリエイティヴ(サイエンス・アイ新書)を大変重宝して使っている。

 ちなみに、東京都の金町浄水場で検出された放射性物質の放射能の単位「ベクレル」については、上記の図書の156-157ページで解説している。
 ベクレルとは、フランスの物理学者アンリ・ベクレルの名前にちなんでいる。
 ちょうど、ベクレルについては、あちこちのテレビ情報番組で解説しているが、高等学校の物理と化学を十分に学ばなかった人を対象に説明しているので、わかったような、わからないような説明になってしまっている。
 ベクレルとは、上記の図書では「放射性物質が1秒につき1個壊変する放射能」と解説している。
 放射性物質の1個とは原子1個を意味している。1秒間に1個の原子が「壊変」、つまり原子核が壊れて、別の原子核に代わったり、エネルギー状態が変化したときに発生する放射線の量を1ベクレルという。

 物質1モルにはアボガドロ定数の6.02x10の23乗個の原子または分子が含まれている。
 水分子(H20水素2個、酸素1個)の1モルは18グラムになるので、水1リットルは約55.55モルになり、水分子は約334.411x10の23乗個、さらに水素はその2倍、酸素は1倍、水素原子と酸素原子を一緒に考えるのに無理があるけれども、原子の数だけで考えれば、約約334.411x10の23乗個の3倍、約1003.233x10の23乗個になる。
 今回検出された1リットルに210ベクレルとは、きわめて単純に水と放射性物質だけと仮定して、ざっくり言って、水素2個と酸素1個が化合した水分子の原子の個数、約1000x10の23乗個の中に、1秒間に210個の壊変する放射性物質ヨウ素131の原子が含まれているということになる。実際にはもっと複雑な計算があって、含まれている壊変する前の放射性ヨウ素の量ははるかに多い。210ベクレルならば、1時間に765000個は壊変している。
 注意したいのは1秒間に壊変する放射性ヨウ素は210個という点だ。
 放射性物質は、刻々と変化しているので、要するに「諸行無常」ということになる。

 興味深いことには、放射性ヨウ素は前立腺がんの治療など、がんの放射線治療に用いられている。正常細胞に影響を与えるとともに、がん細胞を殺す「両刃の剣」である。

 ここから人文系の思考に入ってみよう。
 人間の悲しみや恐怖は、数値で表すことはできない。

 仏教、中国算法、和算では、最大の数の単位を「無量大数」という。さまざまな説があるので、一概に言えないが、10の68乗が「無量大数」とされる。その1万分の1、10の64乗が「不可思議」だ。

 数の「不可思議」でさえ、想像がつかない。
 人の思いは「無量大数」でも表すことができない。

Posted by falcon at 22:31:57 | from category: Main | TrackBacks
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