December 22, 2010

意外に面白かった本

 たまたま、職場の書籍部で見つけた新書本ですが、遅読のFalconにしては珍しく一気に読みました。



 三人の論客がそれぞれの立場から、メディア・リテラシーについて論じています。

 最初に残念だった点を指摘しましょう。メディアの定義が甘いというか、明確にされていない点です。一応、初めに荻上チキさんがメディアについての定義を述べていますが、三人が共通して取り上げているのが報道メディア、より正確に言えば、報道の性格の強いメディアです。荻上チキさんがインターネットのウェブ情報を中心に「うわさ」を取り上げて、飯田泰之さんは統計情報、鈴木謙介さんは政治に関する情報について取り上げています。
 Falconがなぜ残念に思うのかは、図書館情報学の分野では、メディアを広くとらえて、世の中のありとあらゆるものをメディアと考える傾向にあります。大袈裟かもしれませんが、図書を中心にさまざまな「情報を記録して、伝えるもの」をメディアと呼び、まるで仏教の曼陀羅のように体系化しています。情報のアニミズムというか、世の中のありとあらゆるものに情報が宿るというか、情報の「汎神論」と言えます。そのため、図書館情報学の分野ではメディア・リテラシーとインフォメーション・リテラシー、コンピュータ・リテラシーが混然一体のようになっています。
 せっかくなので、この際、「私が取り上げるメディアには、こういう性質がある」とビシッと言いきってほしかったと思っています。

 今はやりの講演録を本にしたもので、初めは単なる言いっぱなし、書きっぱなしの無責任な、その場しのぎの話かなあと思って読んでいたのです。しかしながら、小粒でピリリと辛い、刺激的な内容でした。
 物の考え方、見方が変わります。180度変わるほどではありませんが、少なくとも75度は変わります。

 特にお勧めなのが、それぞれの筆者が勧める参考書です。鈴木謙介さんが勧めてくれる図書は、非常に興味があります。今、大人気のサンデル氏について言及しています。

 新書の「駆動性」を生かした好著です。
 池上彰さんの解説とともに、読んでみることを勧めます。

Posted by falcon at 01:20:04 | from category: Main | TrackBacks
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