July 19, 2010

メディアリテラシーが問われる!

 広瀬隆氏の著作を読み終えた。

 読んでいて、渡部昇一氏、谷沢永一氏、西尾幹二氏の文章が思い浮かんだ。取り上げる非常に興味深いテーマなんだけれども、テレビ番組のお決まりのシーンのように、岩波書店、朝日新聞、NHKを非難する、左翼思想は嫌いと必ず一文入る。

 広瀬氏の論調もそれに似た印象がある。NHKの番組を批判はしているけれども、過去のNHKの番組でも自分の論点に近い内容は評価している。
 渡部氏、谷沢氏、西尾市と違って、読者に向かって、過去の文献を図書館へ行って読みなさいと何度も書いていることに好感が持てた。Falconが図書館の専門家で、図書館が好きという事実は別にしても、広瀬氏が自分の主張ばかりでなく、他の文献も読んで、読者に考えてほしいという態度は、文筆家として冷静で正しい態度である。それでも、書きなぐりの印象は拭えない。
 昨年(2009)の11月、クラッカーが地球温暖化説を唱える科学者たちのメールと文書を盗んで、暴露して、ネットに流出させたクライメート・ゲート事件を広瀬氏が取り上げているのだが、どちらの主張にとっても歯切れが悪い話になっている。地球温暖化説は科学者たちが事実を歪曲して、捏造したものであることがメールのやり取りから判明したというものである。問題となっているのは1960年代から1970年代にかけての気温の変化で、寒冷化しているにもかかわらず、温暖化が進んでいると歪曲したことである。
 広瀬氏は慎重でこれから先、つまり将来、寒冷化するとも、温暖化するとも予測はしていない。どうなるかはわからない。なにしろ、気象はさまざまな要因が絡み合って起こる現象なので、簡単に結論がつかない。広瀬氏が問題にしているは過去の気象変化が温暖化に進んできたのかである。それが二酸化炭素とどのように関係しているのかである。

 広瀬氏の著作で、興味深かったのは地球の公転軌道の変化、自転の地軸の変化、太陽活動の変化で地球温暖化が起きることである。これは非常に変化の期間が長い。数万年の変化である。その他の要因でも温暖化、寒冷化が起きるという。おそらく日本の平安時代は温暖な気候であったと思う。家が風通しを考えて作られていて、暖房はあまり考えられていなかった。枕草子でも源氏物語でも、夏の場面では薄手の衣装でくつろぐ様子が描かれている。かき氷のような氷菓もあったらしい。温暖な気候だから農業生産が向上して、比較的安定した政治がおこなわれていたのであろう。
 広瀬氏の著作で目を惹いたのは、原子力発電所が非効率で、しかも熱を持った排水を海に垂れ流しして、海水温を上げていることである。広瀬氏は書いていないが、日本海に越前クラゲが大発生するのも、福井や新潟の原子力発電所から出る排水が原因のような気がする。

 そのほか観測地点がヒートアイランド化された都市部に近いことが「地球温暖化」になっていることなど首肯する点も少なくない。

 何でもかんでも短絡的に地球温暖化とするのは考えものだ。

 実は地球温暖化と同じようなことが、図書館でもある。子どもたちの「読書離れ」「活字離れ」である。その根拠になっている毎日新聞と全国学校図書館協議会の調査で5月1ヶ月間に一冊も本を読まなかった小学生、中学生、高校生の数は減っているのに、いまだに子どもの「読書離れ」「活字離れ」は深刻であるといわれる。その主張をしている人は、統計をしっかり見ているのであろうか。数字に対する判断能力はあるのだろうか。事実を分析する能力があるのか。実は子どもの「読書離れ」「活字離れ」を嘆き、「わたしたち、子どものころはもっと本を読んだ」と甘美な思い出に浸る60歳、70歳の世代が読書離れ、活字離れが深刻で、メディアリテラシーを持っているのか、怪しい人たちなのである。太平洋戦争直後の混乱期、高度成長時代で大学が少なかった時代には、今よりも出版点数は少なかったはずだし、図書館の数も少なかったはずである。

 「いいのよ、あたしたちはもう先が無いんだから、そのメディアなんとかが無くたって、だいじょぶよ!これまで、あなたたちを育ててしっかり生きてこれたんだし、何にも問題ないわ!それよりもこれからの社会を生きる子どもたちに本を読んでほしいのよ。それに今の子供が読んでいる本って、低俗でくだらないわ」

 地球温暖化を唱える学者も手ごわいが、こんな大人、むしろ高齢者たちも手ごわい。

Posted by falcon at 09:34:47 | from category: Main | TrackBacks
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