December 21, 2009

こんなこと言うとマズイかもしれない

 『アメリカで大論争!!若者はホントにバカか』を読み終えて、暗澹たる気持ちになった。

 実は、この本、読書大好きボランティアおばさん、読み聞かせおばさん、「読書命」とタトゥを腕にしてそうな人たちが泣いて喜びそうなことが、アメリカの統計事例から導いた結果として山ほど書いてある。著者は「読書は子どもの語彙力を伸ばし、将来の学力向上を保証する」と繰り返し述べている。
 それじゃあ、コンピュータやインターネットは子どもたちに悪影響を及ぼすと書いてあるかというと、そうでもない。読書をしないと学力向上はしないとはあっても、コンピュータやインターネットは子どもたちの学力向上には影響しないと書いてある。巷にあふれているIT技術が子どもたちを犯罪に巻き込み、被害者にして、脳にまで悪影響を及ぼし、精神的にも低下させるというIT性悪説とは違う。つまり、コンピュータ・IT企業が学校に売り込むほど、IT技術が子どもの学力向上には役立たないと言っている。著者は単なる機械嫌いで、読書が良いと言ってるのではなく、むしろ著者は善良なIT技術の利用者で、子どもたちに少しは読書をしたほうがいいぞ!、そうしないと社会を支えるような市民にならないぞ!と呼びかけている。20歳を過ぎた若者たちに読書を進めるのは、若干、手遅れと考えて、あきらめてもいるけど。

 町山氏の解説は、コメントもいただきましたが、的を射ています。しかしながら、町山氏はアメリカの第一次ベビーブーム世代(団塊の世代)と第二次ベビーブーム世代(X世代)の谷間の時代に生まれ育った世代(1955〜65年生まれ)は、アメリカの歴史上、読み書きと数学で最低点を出した世代と学力試験に基づいて述べているが、一方、日本では、この世代が就学年齢であったころ、数学と理科の国際学力調査(1981年 第2回国際数学教育調査(SIMS) 1983年 第2回国際理科教育調査(SISS))で世界のトップレベルであった。だから、日本の町山氏の世代は恥じることは無く、誇るべきである。
 そのため、当時のレーガン政権の時代に発行された報告書『危機に瀕する国家(危機に立つ国家)』(1983年)で、第2次世界大戦の敗戦国であった日本・ドイツの目覚ましい復興を羨み、アメリカの教育の危機を訴えた。それだけ、当時の日本の子ども〜若者の教育水準が高かった、日本の教育の「黄金時代」だった。
 アメリカは、レーガン政権に続く、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)政権でも教育改革を推進したのにも関わらず、この結果だった。

 日本の大学生の学力が下がったのは、「大衆化」したという見方もあるけれでも、「構造的」な原因がある。
 第2次ベビーブーム世代が大学に入学したころ、大学の入学定員を増やした。増えた受験生を追いかけるように、大学が次々と新設された(学校基本調査の年次統計によれば、1989(平成元)年に499大学、1999(平成11)年に622大学、2009(平成21)年に773大学で、この20年間に274大学も増えている。驚異的な数字だ!学部・学科の増加を考慮すれば、途轍もない器の広さになっている)。それに伴って、大学教員(国立大学では教官)の学則定員が増えた。ところがその後、受験生が激減した。そうなると受け入れた大学教員の人件費を維持しなければならないので、入学定員を増やす、学部、学科を増やす、規制緩和で新設大学が増える、大学院まで次々と創設される。それなのに受験生は減る一方で、受験デフレ・スパイラル(悪循環)が起きている。受験生の競争力はどんどん落ちている。20年前だったら、大学に入学できなかったレベルの学生が、わんさか大学生になっている。
 『アメリカで大論争!!若者はホントにバカか』の挑発的な発言に、日本の若者の中でも、読書をして、真面目に勉学に励んでいる学生は腹が立つと思う。入学する学生の数に合わせて、大学入学定員が適正であれば、日本の大学生の教育水準はかなり高い。ところが、競争力の低い(学力が低いとは言わないけれども)学生が多いために、高いレベルの学生の割合が薄まっている。それならば、大学の数を減らせれば良いけれども、なんとしてでも入学金・授業料をかき集めるために大学は過熱気味になって、歯止めも利かない最悪の状態になっている。こう言ってしまえば、えげつないが、大学は「学問の府」ではなく、「受験料・入学金・授業料を集金する企業」になっている。大学業界は無制限に受験生を飲み込む「ブラック・ホール」状態になっている。その渦中にあって、Falconは
最悪の「ビッグ・バーン」が起きないかと冷や冷やしている。

 嫌な年の瀬になってしまった。

Posted by falcon at 19:19:22 | from category: Main | TrackBacks
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