April 27, 2008

ドキュマンタリスト教員である理由

 フランスの中等教育学校(4年制コレージュ、3年制リセ、職業リセ)の学校図書館CDI(Centre de Documentation et d'Information)の専門教員を「ドキュマンタリスト教員」と訳したほうが良い理由がある。それは、フランス語にも図書館職員を表わすbibliothecaire(最後から2番目のe、つまりthの後のeにはアクサン・テギュという記号がつく。図書館を意味するbibliothequeのアクサン・グラーヴとは違う記号)がある。以前には、フランスの学校図書館でも司書を表わすbibliothecaireを使っていたが、図書を主に扱う専門職員という印象が強いので、CDIでは図書以外の雑誌、新聞、視聴覚資料、電子資料、今日ではインターネットも扱うことから、専門教員をdocumentaliste professeurと呼ぶようになった経緯がある。
 通常、フランス語でdocumentalisteは、専門情報機関、専門図書館の専門職を示し、表わす。
 日本の学校図書館では、図書を主に扱っているので、司書教諭でもよいかもしれない。図書以外の資料と情報を活用しようという「掛け声」が強くなっているが、現場の学校では依然として図書中心で、電子資料やインターネットには「アレルギー反応」を起こしている。NIEなどの活動も一部の学校で行なわれているが、新聞や雑誌の情報を活用することは、とてもフランスの足元にも及ばない。

 日本でも、司書、司書教諭、学校司書、図書館員、図書館職員など、図書館で働く専門職を表わす語がある。一般にはあまり認知されていないだけでなく、理解も十分でない。「図書士」とか、「司書士」のような珍妙な呼び名すら、小説やアニメで一般に浸透する落ち目になってもいる。

 辻さんの著作を読みつづけて、気がついた。
 辻さんは極力、外国語(フランス語)をカタカナ表記にしたり、原語綴りにしたり、ローマ字での略語表記を避けている(←これらは、日本の学会発表、学術論文では常套手段。これをしないで、学会発表すれば、罵声を浴びせられ、学術論文を書けば、外国語ができないと馬鹿呼ばわりされる)。辻さんは、カタカナ表記の外来語はできるかぎり日本人に馴染み深い英語のカタカナ表記に改めている。翻訳家魂で、日本語に置き換えられるものは力を尽くして漸近線を探して、接点に近づけようとしている。日本人なんだから、これが本当のありかただと思う。

 Falconだったら、クレミCLEMIと表記して、グダグダ注釈を付けるところを、辻さんは日本語で理解しやすい言葉に置き換えている。
 「ドキュマンタリスト教員」を、果敢に「司書教諭」と訳したのも、苦渋の思いで逡巡しただろうと思う。そこを汲み取って理解を深めたいと思った。
Posted by falcon at 18:45:26 | from category: Main | TrackBacks
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