May 27, 2007

フィンランドの学校と図書館

 これまで日本では、OECDの国際学力調査PISAでトップになったフィンランドの教育に関心が集まり、関連書が刊行されてきました。しかしながら、フィンランドに滞在した日本人の研究者が見聞した事柄が多く、「本当のところはどうなのか?」という疑念がぬぐえませんでした。つまり、日本人として都合の良いところを伝えているのではないか、日本人の読者が喜びそうなところを書いているのではないかという疑念です。日本人が書いた外国の見聞記の多くが、個人的な体験に基づく、「日本人の目、知覚」というフィルターを通したものでした。

 「フランス人は英語を知っていても話さない」という、ガイドブックに載っている「迷信」を頑なに信じている人が、いまだに健在しているのはお笑い種でしかありません。パリでは若い人ほど、教養の高い人ほど、外国人である日本人と英語で話す傾向があります。折角、フランス語を覚えていっても、英語で話されるのがオチ。ところが、地方に行くと英語はほとんど通じません。といのも、フランス人にとっても学校で習う現代外国語としての「英語」は、多くの日本人と同様、苦手なのです。「英語とフランス語は文法も語彙も似ているじゃないか!」と言っても、大半の日本人が近しい東洋の言語であるハングルや中国語をほとんど話せないのと同じです。それに、フランス語の徹底した「国語」教育が施されますから、日本人が日本語を学ぶ以上に、「国語」であるフランス語を身につけるのです。移住民にも「同化政策」で、フランス語を身につけさせるので、パリでは移民の子孫の黒人やアラブ系の人たちのほうが、惚れ惚れするくらいにフランス語を流暢に話すのを聞いたことがあります。見聞記は参考になっても、信じたら危険です。自分の目で、耳で、見聞きしたことを様々な情報に照らし合わせて検討する必要があるのです。
 「わたしたち、学者じゃないから、そんな小難しいこと考えないよ!ただ、楽しめば良いの!」
 観光バスで巡って、高級レストランで食事して、帰ってきてから、自慢話するなら、それはそれで良いのです。個人の勝手ですから。

 話を元に戻します。
 最近、日本のフィンランド大使館内にあるフィンランドセンターの所長ヘイッキ・マキパー氏が著した本が刊行されました。



 この本でいくつかの疑念が解消されると思います。

 残念ですが、フィンランドの学校図書館の記述はほとんどありません。
 北欧諸国の学校図書館ですが、なんと言っても、デンマークの国民学校の学校図書館の制度が優れています。デンマークとスウェーデンの学校図書館は見学したことがありますが、Falconはフィンランドの学校図書館を訪れたことが無いので、関係者の伝聞でしかありませんけど、正直言って、財政的に豊かでないし、蔵書も少なく、IT先進国(ヨーロッパでコンピュータと携帯電話の最大の市場規模を誇るノキアがある)でありながら、設備は貧弱だそうです。フィンランドの学校図書館は、協会組織があるので、これからで、発展途上のようです。
 多くの日本人は北欧と聞くと、憧憬を懐きますが、実際に行って見ると、付加価値税が上乗せされるので、物価が高いのに驚かされます。旅行者のホテル代や食事代は税金のリターンは無いので、支払のたびに日本の税制のありがたさを噛み締めずにはいられません。ルター派の信仰に根づく国民性は質実剛健で、日本人の気質に近いところもあります。

Posted by falcon at 04:04:28 | from category: Main | TrackBacks
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