February 20, 2015

図書館を知るために

 つくづく思うのは、海外の図書館について調べるとき、そこの国の社会全体を調べなければならない。特に学校図書館を知るには、その国の教育制度を知らなければ、何もわからないことになる。
 図書館は臓器のようなものなので、「臓器」だけ取り出しても、その臓器が動物の身体でどういう働きをしているのか、わからない。人間の胃、ブタの胃、牛の胃を取り出して並べて見ると、似たような形をしているけれど、働きが違う。人間とブタの胃は似ている、雑食性なので。牛は草食動物だから、胃はいくつかにわかれている。

 「動物の臓物の話、まだ続くの?」

 そうだった、図書館の話だった。それでね、最近、フランスの教育制度に関する本を買ったんだ。それも2013年に出版されて、オランド政権が進めた新しい教育改革についても詳しく書かれているし、歴史的な経緯についても必要とあらば、ちゃんと説明している。この本のおかげで、学校図書館の役割が納得できた。

 「えっ、教育制度の本なのに学校図書館について書いているの」

 それがすごい。日本で教育学や学校教育の本に学校図書館について書いている本はほとんどない。学校図書館や司書教諭、学校司書のために書かれている「専門書」にしか詳しくは書かれていない。あまり変わり映えのしない話が載っている。やる気の失われる「過去の自慢話」が載っている本も少なくない。そう、「あなたも頑張れば、できるわよ!」とか、「ボランティアさんたちがやってくれるのよ」とか。教育の専門家として先生がいるのに、なんで事務職員やボランティアにお任せしましょうなんて、気軽に言うのだろう。警察官や医者をボランティアにまかせっきりにしていいのかよ!なんだか、脳内有吉、脳内マツコが話しているようだ。怒り新党じゃないぞ。
 日本のどうでもいいことは別にして、今、手にしている本は学校図書館についてもしっかり書いている。フランスの私立学校って、宗教団体が設立していたとか、フランスの教員は公立も私立も国家公務員とか、最近、教員養成大学院が本格的な養成を行っているとか、情報教育が盛んになっているとか、実に興味深い。
 じゃあ、フランスが理想的な教育を行っているかというと、そうでもない。ヨーロッパで理想的な教育を行っていると高く評価されているのは、

 「フィンランドでしょ、でしょ」

 残念、教育大国フィンランドはもはや過去の国。

 「じゃあ、なんだって言うのよ」

 オランダが優れた教育を行っていると言われている。ただし、オランダの学校図書館はイマイチ。
 学校図書館に国が力を入れているのは、実はポルトガル。

 「ドイツやオーストリア、英国、イタリアやスペインはどうなのよ」

 どこもパアっとしないね。ギリシアは学校図書館どころじゃないしね。スペインは不動産バブル崩壊からやっと立ち直って、新国王の下で頑張っているところだしね。

 「スイスは」

 スイスは職業教育が優れている。企業が学校を持っていて、本当の専門教育を行って、そこで養成した実習生を雇用する。日本のように大学で文学や哲学など実利に程遠い学問を学ばされて、卒業後は路頭に迷わせて、就職先が無いって憂き目に遭うことが無い。日本の大学って、学者の養成もなってないし、職業人の養成もまともに考えていないしね。

 「ねえ、図書館の話じゃなかったけ。それに日本の大学のこと批判して良いの?」

 だって、本当のことだからね。そういう社会事情を理解していないと、図書館のことはわからないんだよね。アメリカの大学図書館が凄いのは当然。有名大学のほとんどが私立大学で、多額どころか、莫大な入学金と授業料を学生から集めて、不動産を買い占めて、転売して儲けている。金融と資本で儲けている企業そのもの。清貧に甘んじている教育機関なんて、きれいごとは通用しない世界だ。だから図書館で思いきったサービスができるわけ。それをまた、日本の図書館学者が馬鹿に見たいに褒めたたえるの!自分のことじゃないのに得意満面で。金持ちの保護者から金を集めれば、図書館サービスが充実して当たり前。アメリカは教育をまともに受けられない低所得層が多いしね。不平等社会アメリカなんだ。大学に行けない若者が軍隊に志願する。教育って大切。
 ヨーロッパで注目されているバーゼル工科大学は、なんと、あのローレックスが出資しているんだぜ。

 日本って、どっちつかずの宙ぶらりんの教育なんだよなあ。

 「あらっ、そういえば、今日はカマっぽくないわねえ」

 そうだね、たまには性格、変えてみたいなあ。脳内有吉。

00:59:27 | falcon | comments(0) | TrackBacks