December 24, 2013

印象の薄い印象派: カイユボット展

 クリスマス・イブの今日、もう会期が残り少なくなったブリヂストン美術館の『カイユボット展』へ行ってきました。

 カイユボットって、印象派の画家の一人ですが、実に印象の薄い画家です。印象派と言えば、クロード・モネ、ルノアール、ピサロ、シスレー、そして新印象派はシニャック、スーラ、後期印象派(ポスト印象派)と言えばゴーギャンやゴッホ、セザンヌですね。そのなかでも、カイユボットは目立ちません。
 カイユボットは父が資産家で裕福な家に育ち、画業に専念していました。モネやルノアールにお金を貸したり、作品を買い上げてたり、印象派を支えた縁の下の力持ちだったのです。気性の激しいドガと対立したり、必ずしも印象派の画家たちは仲良しではなかったのですけど。
 彼は残念なことに45歳の若さでこの世を去りました。彼が買い集めた印象派のコレクションは、オルセー美術館に引き継がれました。

 カイユボットの生きたパリは、第二帝政時代の最も活気に満ちた華やかな町でした。こういう時代に生きてみたかったと思います。

 この展覧会で最も印象的だったのは、彼の弟が撮影した写真でした。120年近く前の光景とは思えないくらい、昨日の出来事のようにパリの情景が写し出されています。それだけ、ナポレオン3世が行ったパリ大改造計画は偉大であり、いまでもそのままの建築がパリを形作っているのです。

 でね、『パリ歴史散歩メトロにのって』を読んでいます。



 俳優でもある著者が歴史の知識をふんだんにちりばめて、パリの地下鉄の駅周辺の出来事を書き連ねたエッセイです。一世紀ごとにパリの歴史をひもといていきます。パリって、2000年以上もの歴史があるんです。高校の世界史では、そのほんのわずかしか習いません。
 パリに行くと、名前だけは頻繁に聞く、サン・ドニ、聖ジュヌヴィエーヴ、エルノーという人たちが何をしたのかが、良くわかりました。
 フランスの歴史で記憶に残るフランソワ1世やアンリ4世、ルイ14世、15世、16世は後半以降に登場します。

 ああ、パリに行きたくなったなあ。

18:52:25 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 10, 2013

ダヌンツィオに官能する

 日曜日、東京大学駒場キャンパスで開催されているダヌンツィオ展に行ってきました。「そういえば国家公務員試験2種(図書系)を受験しに来たのが、もう20数年前だったなあ」と回顧しながら、すっかり枯れ枝になった樹木を眺めながら、博物館の入口に向かいました。
 入場は無料です。といっても、関心が無いためか、訪れる人もまばらです。どこかの美術館とは大違いです。

 「ダヌンツィオって、ダレ?」

 ガブリエレ・ダンヌンツィオと呼んだほうが正しいかもしれません。19世紀末から20世紀初頭に活躍したイタリアの作家です。日本では明治時代に非常に人気のあった外国の作家でした。森鴎外、夏目漱石、森田草平らが関心を寄せていた作家です。森田草平と平塚明子(後の雷鳥)との塩原心中未遂事件、いわゆる『煤煙』のきっかけとなった作品を書いた人です。三島由紀夫が傾倒したことも有名です。イタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作となった『イノセント』の原作がダヌンツィオの『無辜なる者』です。映画と原作は異なる点が多いのですが、そこがダヌンツィオとヴィスコンティの人生に対する哲学と美学の違いでしょう。

 世界史では「未回収のイタリア」問題を解決するために、現在のクロアチア、当時はユーゴスラビアのフィウメという軍港へ向けて進軍した愛国主義の作家として有名です。

 夏目漱石は『それから』と『彼岸過迄』に「ダヌンチオ」の名前を登場させています。このことは以前、ブログに書きましたね。

 「そういえば、『彼岸過迄』の主人公って、須永市蔵だったよね。それに、「須永の話」って章もあった」

 ああ、それは置いといて、ダヌンツィオが晩年住んだ邸宅が、まるで美術館のように凄いんです。展覧会では写真と映像でしか見られないのですが、ヴィスコンティ監督の映画のセットみたいでした。トイレがアートに囲まれて、落ち着いて用がたせたのか心配になりました。

 「漱石が、心をこめて描いたのが嫉妬する須永の内面で。。。」

 今はダヌンツィオの話ですよ。
 日本と関係の深い作家だったんだなあと思いました。

 「漱石と言えば、ターナーでしょ!」

 そうでした、まだ上野のターナー展、行っていません。もう会期が残り少なくなりました。。。

00:31:40 | falcon | comments(0) | TrackBacks

December 04, 2013

『海賊党の思想』からハーバーマスへ、秘密法案について

 『海賊党の思想』を読んでいて、「秘密法案」は危険な思想に基づいているなあと思ってしまった。日本政府とアメリカ合衆国などの国との取り決めに、国民が関われないって言うんでしょ! これはヤバイですよ。アメリカの関係者からも秘密法案は恐れられているし、正確にいえば不気味に思われている。
 『海賊党の思想』の中で触れられていますけど、日本ではテレビ局の開局の許認可って、国が行っているそうです。民放でもそうなので、NHKだけでなく、民放でも国の権限が及んでいるんですよ。ある意味、国民に意識されないようにね。
 イタリアのベルルスコーニ元首相は「メディア王」と呼ばれ、テレビ局のほとんどを傘下に置いていた。つまり、テレビを通じて、国民を操っていたってワケ。
 国民を埒外に置いて政治・外交交渉を進めても、文句を言わせないというのは、実に危ない。
 世界遺産に富士山登録、東京にオリンピック誘致と国民を喜ばせておいて、こんな恐ろしいことを年末に実行しようなんて、安倍首相、猪瀬東京都知事に日本と東京を委ねるのは、どうかと思う。

 年末の読書はユルゲン・ハーバーマスの著作を読んでみようかと思っている。

 「そのお、ユルゲン・ハーバーマスって、誰よ」

 いやあ、『海賊党の思想』を読むまでは全く知らなかったんだけど、ドイツの思想家で、現代の思想家の中ではトップレベルなんだそうだ。つまり、知らないと恥ってくらい、重要な思想家だそうだ。

 それから、NTT出版の『チューリング』が気になっている。11月に発売されたけど、問題があって、回収されたらしい。本屋で見かけたときためらわずに買っておけばよかった。悔しい思いをしている。
 ところで何の問題があったのだろう。差別用語だろうか? ってなると、例のごとく、図書館の自由に関する宣言をめぐって、またぞろ問題になるんだろうなあ。

 話が横道にそれるが、『図書館戦争』は「図書館の自由に関する宣言」を曲解している。フィクションという言い逃れをしても良いけど、「図書館の自由に関する宣言」は核心部分であることを忘れてはならない。「図書館の自由に関する宣言」は、作品を作者の都合のいいように守るのではなく、図書館の資料と利用者を守るのが目的なんだからね。

01:09:39 | falcon | comments(0) | TrackBacks