January 28, 2009

大物歌手の意外なプロフィール

 昭和の懐かしのメロディーには欠くことのできない人物と言えば、藤山一郎さん、春日八郎さん、淡谷のり子さん、笠木シズ子さんと思い浮かぶ。

 直立不動に黒縁メガネと言えば、東海林太郎さんが思い浮かぶ。
 その東海林太郎さんは早稲田大学研究科を終了した後、当時の満鉄の調査課に就職して、1927年調査課から満鉄鉄嶺図書館へ赴任して、図書館長になった。しかしながら、これは左遷だったらしく、音楽の夢、止みがたく、1930年に満鉄を辞職して、日本に戻り、歌手の道を歩んだ。

 小林英夫著「<満州>の歴史」(講談社学術新書)236pに、紹介されている。

 そういえば、満州で日本図書館協会の全国図書館大会が開催されたことがある。東海林太郎さんが参加していたとしたら、どんな姿だったろう。つまらなそうに体を傾けて、会場の参加者を眺めていたのだろうか。

書き足し:日本図書館協会の全国図書館大会が日本本土以外で開催されたのは、1920(大正9)年に満州と朝鮮各地、1935(昭和10)年に京城(ソウル)、1937(昭和12)年に満州であった。
 なので、東海林太郎さんが満鉄鉄嶺図書館長をしていたころは、鹿児島、京都、東京で全国図書館大会が行われていた。
 東海林太郎さんは左遷のような待遇だったので、しぶしぶ務めていたようだ。詳しく調査してみないとわからないが、図書館に大きな業績を残したとは言えないかもしれない。

23:19:03 | falcon | comments(0) | TrackBacks

January 26, 2009

厄除けに初詣

 実は先日、遅ればせながら、川崎大師に初詣に出かけた。
 というのも、家族の病気で暮れから正月にかけて初詣に行く余裕がなく、それから、つい最近、階段で転倒して、右膝を痛めてしまい、全治1ヶ月の怪我をした。そこで、ふさいだ気分を解決しようと、厄除けしようと思った。

 川崎大師には苦〜い思い出がある。
 高校3年生のとき(随分前の話だ)、友人たちと初詣に出かけた。友人たちがおみくじを引こうというので、自分も引いてみた。友人たちは大吉だの、中吉だの、縁起のいい結果が出たのだが、自分は大凶がでた。友人たちも憐れに思ったのか、「もう一度、引けば大吉が出るよ」と言ってくれたので、チャレンジ!

 また、大凶がでた。えーっ、正月のおみくじは大凶が出ない約束だったのじゃないか!!

 そこで、友人たちは「三度目の正直を信じて、もう一度引いてみれば」と言ってくれたので、再度チャレンジ!

 ところが、またまた、大凶!
 大凶3連発で、大打撃。
 自分の不勉強だったから、おみくじのせいじゃないが、大学受験には悉く失敗した。(むしろ、おみくじが警告していたのだ)
 そのうえ悩み事が多く、振り返ってみれば、人生最悪の時期だった。

 さて、今年のおみくじは、小吉。ほどほどの幸せだ。大師様のご加護を期待したい。

 初詣からの帰り道、川崎大師駅の近くにある金山神社に立ち寄った。ここは鍛冶屋さんの守り神だ。
 若宮神社の境内にある小さな社だが、あらあら、黒々としたキノコのようなものが。。。えっ、だ、だ、男性のシンボル?!
 ここは子宝が授かるなどの祈願を叶える性信仰の神社でもある。
 境内には男性のシンボルと金床を合体させたものもある。

 日本全国には性信仰にまつわる神社が少なくない。その中でも海外に知られているのが金山神社だ。4月上旬に「かなまら祭り」があるそうだ。
 伊豆の稲取の「どんつく祭り」では、男性のシンボルが町中を練り歩く。
 奈良県明日香村から吉野へ向かう山道を登ると、栢森(かやのもり)という地区に至る。飛鳥川の渓流が美しい所だが、川面の上に稲藁でできた女性のシンボルと男性のシンボルが綱でつりさげられてる。大学時代に万葉集を学んでいた時、訪れた。何とも大らかな性信仰だ。その栢森の神事も2月にある。

 厄除けに初詣が、妙な話題に転じてしまった。
 今年こそ、良い年でありますように。

20:32:32 | falcon | comments(0) | TrackBacks

January 24, 2009

時空を超える書物

 スウェーデン国立図書館館長のサーリン氏の言葉で思い出したのが、「エンデュミオンと叡智の書」(新潮文庫)です。オックスフォード大学の図書館で少年が見つけた空白の書物をめぐって、時空を超えた謎と冒険の旅が始まります。
 舞台となるのは、現代のイギリスの大学都市オックスフォードと中世のドイツの街マインツ。
 空白のページに隠された秘密とは。

 金属活字をヨーロッパではじめて開発したグーテンベルクのもとで働く少年の運命は?



 1450年ごろにグーテンベルクが金属活字を開発したことが、歴史の教科書にはことさらに叙述されますが、それをさかのぼる200年くらいに前に朝鮮半島に栄えた高麗王朝にすでに金属活字を用いた印刷技術はありました。木の活字や陶器でできた活字は中国の宋、あるいは元の時代にあったとも言われています。グーテンベルクに関しては謎が多いので、本当に独自に開発したのか?疑問な点も残ります。

 この小説には、ハリー・ポッターの映画のロケ地の一つになったデューク・ハンフリー図書館も登場します。

 ずいぶん前に、イギリスへ初めて行ったとき、オックスフォード大学のウォーキング・ツアーに参加しました。ちょうどボードリアン図書館が修復工事中だったので、入口のところだけしか見学できませんでした。

 ちなみにイギリスで最も古い図書館はオックスフォード大学のマートン学寮の図書館だと言われています。マートン学寮と言えば、皇太子殿下が留学されていました。

 この小説は映画化も決定しているようです。

 そういえば、『図書館ねこデューイ』もメリル・ストリープ主演で映画化が決定しているようです。

 図書館を舞台にした2つの映画の公開が待ち遠しいですね。

01:41:50 | falcon | comments(0) | TrackBacks

January 22, 2009

驚異!悪魔の聖書

 際物続きで、読み飽きた人もいるだろう。

 昨日(1月22日)、国立国会図書館(永田町)で、スウェーデン国立図書館館長グンナー・サーリン氏の講演会が行われたので、参加した。演題は「デジタル化時代のスウェーデン国立図書館の挑戦」だった。
 いくつか興味深い話題があった。

 一つは"Codex Gigas"(直訳すれば「巨大な古い手稿本」、「悪魔の聖書」とも呼ばれる)のデジタル化である。もともとは12世紀ごろにボヘミア地方、チェコの首都プラハで制作されたものらしい。17世紀、ちょうどドイツ30年戦争のころにスウェーデンにもたらされて、スウェーデン国立図書館所蔵の至宝となっている。総重量が75kg(人の体重に匹敵する!)もある、世界最大級の古写本で、縦89cm・横49cmの獣皮紙に手書きされた310ページの聖書である。獣皮紙と一口に言っても、よく知られているのが羊皮紙(パーチメント)で羊の皮を筆写用に使ったものだが、ほかにも子牛の皮を使った犢皮紙(とくひし、ヴェラム)、山羊の皮も使われることもあった。このCodex Gigasには子牛の皮のヴェラムがかなり使われているらしいが、ヴェラムのほかに羊皮紙などの他の獣皮も使われているらしく、一部に何とロバの皮!も使われているという。そのうえ、悪魔を描いたページもあり、黒魔術との関係も指摘されているが、聖書の古写本の一つであることに違いはないだろう。
 Codex Gigasのデジタル化には膨大な費用と労力を要したらしい。きっかけはチェコでCodex Gigasの展示会を開くという話がチェコの首相からスウェーデンの前首相に伝えられたことだった。
 各ページをインターネットで見ることができる。

 http://www.kb.se/codex-gigas/eng/Browse-the-Manuscript/

 ちなみに悪魔のページはこちら

 悪魔と言っても、ユーモラスで、かわいらしい。
 意味は違うけど、コーデックス・ギガスは「鳥獣戯画」を思い起こさせる。

 Codex Gigasのデジタル化の大きな成果は、世界の研究者がわざわざスウェーデン国立図書館へ足を運ばなくても、いつでも閲覧できるという「時空を超えたサービス」にあると館長であるサーリン氏は述べていた。

 二つ目は、2009年1月にスウェーデン国立図書館がスウェーデン国立録音・動画アーカイブと統合をしたことだ。これにより、国内で放送されたラジオやテレビの放送もサービスできる。またスウェーデン国立図書館は国立公文書館、博物館、美術館とも共同事業を行っている。スウェーデン国立図書館では、スウェーデンの旅行記のデジタル化を進めていて、16世紀以降の新聞のデジタル化も行っているが、これからの課題として20世紀以降の新聞のデジタル化も進めていきたいと館長は述べている。解決しなければならない問題として、現物の保存、マイクロ資料への複製を併用すること、著作権関連だとも述べていた。

 講演の後、国立国会図書館館長・日本図書館協会会長の長尾真しとの対談で、スウェーデン国立図書館が昨年の11月に独自の分類法SABシステムからデューイ十進分類法に切り替えたことをサーリン氏は述べていた。
 以前、Falconがスウェーデンのマルメ市(スウェーデン最南端の町で、デンマークのコペンハーゲン市と海峡を隔てて、橋でつながっている)へ行ったとき、学校図書館や市立図書館の分類が見慣れないシステムなので戸惑った。職員の人に聞いたら、「スウェーデン独自の分類法だよ」と言って、微笑むだけで詳しくは説明してもらえなかったのを記憶している。
 西ヨーロッパの国の多くの図書館が、デューイ十進分類法か、国際十進分類法を採用しているが、これまでスウェーデンは独自の分類法を採用していた。
 分類を切り替えるというのは、図書館にとって大変な作業を要するプロジェクトだ。サーリン氏は、「スウェーデンの図書館が世界とつながるためには必要だった」と、苦渋の決断を振り返りながら、笑顔で語っていた。

 ということで、実りある講演を聞けて、大変嬉しい思いで満たされた1日だった。

12:34:41 | falcon | comments(0) | TrackBacks

January 21, 2009

驚異!菌類の世界

 先日、上野の国立科学博物館で開催されていた「特別展菌類のふしぎ:きのことカビの仲間たち」へ行ってきました。
 驚きの連続でした。

 一口に菌類と言っても、いろいろな種類があって、きのこやカビ、酵母の仲間が菌類です。細菌や変形菌、粘菌は、菌類と区別されます。

 第1の驚き、菌類は、植物よりも動物に近い!
 この点は以前、テレビの番組で菌類の細胞壁にはキチン質が含まれていて、節足動物、エビやカニ、ミジンコ、クモ、ムカデ、昆虫などの外皮にも、キチン質が含まれているので、セルロースでできている植物の細胞壁とは異なると解説していたのを見ていましたから、軽い驚きでした。これまでも生物を動物と植物に分けてしまう二界説に疑問を投げかけてきましたが、やはり無理がありますね。セミタケのように昆虫に菌類が取り付いて、冬虫夏草となるのが知られていますが、菌類の細胞壁と昆虫の外皮の成分が似ているからなのかもしれません。

 第2の驚き、菌類の中には「性」を持つものがある!
 これまで菌類は単為生殖で「性」はないと思い込んでいました。胞子から菌糸が伸びて、胞子ができて。。。。。。と、実に単純な生活史を繰り返しているとばかり思っていました。ところが、異なる遺伝子を持つ菌糸が接合(セックス!)して、やがて胞子ができる菌類の仲間がいると知って、ビックリ。性があると言っても、動物のように卵子と精子が形成されるわけではないし、植物のように花粉と子房が形成されるわけではありませんが、沼などにいるゾウリムシやアオミドロのように接合するというのです。コウジカビや酵母が接合するのかはわかりませんが、菌類たちの「甘〜い」ささやきが芳醇な日本酒やワインを醸していると想像するとなんともロマンチックですね。

 キノコの女王と言えば、テングダケでしょう。
 Falconは北海道でテングダケの仲間のキノコを見たことがあります。薄暗い森の中で赤い傘を広げる様子は神秘的で、ひきつけられます。テングダケは毒のあるキノコだそうですから、触りもせずに眺めていました。

 そういえば岩や木の幹などにへばりついている地衣類をご存知ですか?
 地衣類は菌類の仲間と藻類が共生している生物だそうです。自動車の排気ガスに弱いので、環境のバロメーターになります。
 小学生の頃、理科の実験でリトマス試験紙を使って、酸性、アルカリ性を判定しました。そのリトマス試験紙の色素は、地衣類のリトマスゴケから抽出したものなんだそうです。意外なところで菌類がつかわれているのですね。

23:12:48 | falcon | comments(0) | TrackBacks