April 15, 2015

教科書から見えてくる学校図書館

 図書館のことを考えるときに、社会や文化のことを考えておかなければなならない。

 学校図書館について考えるとき、その国の教育制度や教科書についても知らなければならない。ここがわかっていないと、学校図書館を見学して、

 「日本のような司書教諭はいませんでした」
 「学校司書が活躍していました」
 「読み聞かせをやっていました」
 「公共図書館との連携が盛んでした」
 「マンガがありました」
 「広くて、明るい雰囲気でした」

程度のレポートになる。自分が理解している以上のことはわからない。つまり、日本の学校図書館のイメージを型として押し当てて、外国の学校図書館という《お菓子》を作って、「おいしい、おいしい」と騒いで食べるだけ。

 せっかく教科書が読み放題なのだから、教科書の中身を読んでみた。2010年からフランスでは背景となる事項や関連する分野を結びつけて学ばせる内容になったようだ。第5年生(日本でいえば中学1年生)の《フランス語》《生物・地学》《歴史・地理》の教科書を読んでみた。
 《フランス語》の教科書は、テキストのほとんどが文学作品で、説明文が少ない。戯曲や詩が多く取り上げられている。作品のテーマに関連する文学作品だけでなく、映画も取り上げられている。たとえば《ロビンソン・クルーソー》《宝島》やジュール・ヴェルヌの作品をテキストに取り上げたら、コロンブスを描いた映画《1492》も紹介して、学校図書館で視聴しようと促している。

 《歴史・地理》の近現代史と世界地理を読んでいたのだが、日本の記述はほんのわずか、皆無に等しいといっても良い。しかも渋谷の写真のキャプションに《Ginza》とあった。フランス人には極東の、地の果ての国で、教えるほどのことではないのだろう。日本の政治家の名前も一人も書かれていない。長期にわたって政権を維持できた首相がいないからね、仕方ない。

 フランスの教科書では子どもたちに「考えて、知識を広げること」を促している。日本の教科書は先生が「何を教えるか」が重要とされる気がする。この違いが学校図書館に現れていると思う。


19:51:29 | falcon | comments(0) | TrackBacks