January 28, 2015

最近、映画になった『泥棒日記』って、ありますか?

 図書館職員の知り合いが、カウンターで利用者に聞かれたそうです。
 「最近、映画になった『泥棒日記』って、ありますか?」

 福井県立図書館の、あのリストにありそうな話です。

 「『泥棒日記』って、ジャン・ジュネの、」

 そっ、そっ、です。

 「映画になったのは『悪童日記』でしょ。アゴタ・クリストフの」

 そうです。

 で、映画『悪童日記』見てきました。

 う〜ん、感想は複雑ですね。第二次世界大戦のころの東ヨーロッパのある村が舞台なんですが、双子の少年たちが見た大人たちの欺瞞を描いています。かと言って、この少年たちの残酷な一面も描いている。登場人物のほとんどが完全な善人でもなく、欲望丸出しの、「ありのまま」の姿で描かれています。てっ、いうことは、「ありのまま」ということは、きれいごとじゃない。
 ハリウッド映画のように、ストレートな善人も悪人もいない。だから簡単に泣かしてくれないし、簡単に笑わしてもくれない。でも、深く考えされられます。

 双子の少年役の男の子たち、好みじぁないけど、たしかに美少年だったわ。

 「え、あんたって、そんなとこ、見ていたの?」

 いや、科白に美少年って出てくるからね。そうかなあと思っただけですよ。
 おばあちゃん役の女優さんが、すごい迫力でした。自分の孫なのに、平気でぶったり、殴ったり、遠慮ない。愛情なのか、憎しみなのか、邪魔なのか、とにかく複雑な人間性を怪演しています。最近、日本の女優さんで、こういうベタな演技のできる人って、いませんよね。園佳也子さんとか、曾我廼家鶴蝶さんとか、昔はいたんだけど。

 「そっちで、攻めたか。てっきり、BLへ行くのかの思った」

 いやだなあ、『泥棒日記』で切り出したからって、BLへは行きません。

 「英国図書館(British Library)のこと?」

 もう、このネタ、何度もやっていますよね。

 で、締めくくりとして、昔ね、パリのサンジェルマン大通りに面したお店で、『悪童日記』の原作を読もうと思って、

 Vous avez le grand cahier?

 って、尋ねたの。そしたらさ、お店の人が、本当に「大きなノート」を持ってきてくれたの。

 「その話、つくって無い?」

 事実よ。あら、何で、カマっぽくなっちゃったのかしら。

 「でも、昔、行ったパリの話にさりげなく、持って行くなんて、ちょっと生意気ね」

 そんなことないですよ、気障って言ってくれないかしら。

 「ますます、癪に触るわ」

23:26:08 | falcon | comments(0) | TrackBacks

January 23, 2015

Je suis charlieと言いたいけど

 う〜ん、年明け、フランス・パリとその周辺で起こったテロ事件には衝撃を受けました。
 新聞社を襲撃して12人も殺害するとは信じがたい行為です。人命を奪うことは何が何でも許されません。

 残念ながら私は敬虔なカトリック信者ではありませんが、ローマ法皇様もおっしゃったように、信仰や文化に関わる人物や事柄を揶揄することも、けして好ましいことではありません。

 思えば、フランスの報道機関や新聞社が、福島原子力発電所の事故で放射能漏れが心配されているときに、サッカー選手の腕を複数生えた合成写真を掲載したり、放射能の影響で腕が複数になった人物の漫画を掲載したりしましたよね。あのとき、日本政府は文書で抗議しました。フランスの新聞社は風刺と言っても、限度を超えていました。あくまでも国として正式に文書で抗議したのです。正当な姿勢だと思います。

 フランスの風刺画というのは、伝統があるとは言えども、なかなか他の文化的背景を持つ人には理解しがたいものがあります。いささか過激です。過激そのものですね。

 実は、何故フランス人は放射能を浴びると腕が増えるという観念を持っているのか、気になっています。

 きちんと読んでいないから、明確なことは言えませんが、映画にもなった『猿の惑星』の原作に描かれている猿って、腕が多いそうなんです。

 「ちょっと待って、『猿の惑星』の映画では、普通に腕が2本で足が2本じゃない?それに『猿の惑星』とフランスが何で関係あるのさ」

 『猿の惑星』の原作って、フランスの作家ピエール・ブールが書いたんですよ。だからフランス文学です。

 「ええ、アメリカ文学じゃなかったの?!」

 たしかにハリウッド映画でしたけど、違います。映画では擬人化されてはいましたが、間違いなく普通の猿、類人猿のチンパンジー、ゴリラ、オランウータンでした。でも、原作では腕の多い猿として描かれているそうです。
 しかも、あの猿たちって、日本人のことなんです。これは真偽が定かではありませんが、作者が第2次世界大戦中、日本軍の捕虜だった経験から、日本人を猿になぞらえて描いたそうです。つまり、フランス人には日本人=猿=放射能で腕が増えた猿というイメージのつながりがあるようです。
 放射能で腕が増える奇形が発生することは、あまり医学的根拠が無いみたいです。それなのに。。。
 勝手な想像ですが、フランス人の中には、仏像の阿修羅のような多面多臂のイメージがあるみたいです。
 いくら仏像に発想の起源があるにしても、好ましくはありません。

 ちなみにイスラムを信じる人たち、つまりムスリムの人たちは、平和を愛する、穏やかな人たちです。
 ターリバン、アルカイダ、イスラム国のようなテロ組織はごく一部の人たちで、ムスリム全体ではありません。

 一方的なイメージを抱いて、ひたすら相手を責めるのはやめるべきです。
 正しい認識を身につけるべきです。

 私も、日本人も、テロには屈しませんし、風刺にも屈しません。そして、どんなことがあっても戦争はしてはいけません。
 人の死を数で数えて比較ができないように、テロも戦争も人に危害を与え、苦しめることには同じです。テロ=戦争=殺人です。

 戦争のない、豊かで、爽やかに競い合う世の中を築きたいですね。



23:55:00 | falcon | comments(0) | TrackBacks