December 25, 2014

有吉佐和子の『複合汚染』は凄い!

 実は人に勧めていながら全然読んでいなかった小説です。

 まだ読み始めたばかりですが、作品の世界にどっぷり浸かってしましました。
 たしかに小説にしては、虚構の世界とは言えない。なにしろ作家自身が生身で登場してきます。しかも参議院選挙で紀平悌子さんと市川房枝さんの応援演説で奔走するエピソードから始まります。青島幸男、吉武輝子、野坂昭如、石原慎太郎、菅直人まで登場しちゃいます。

 有吉佐和子の愚痴、毒舌のてんこ盛り。人間と社会を見つめる視線が鋭い。若き日の菅直人のハンサムぶりに圧倒されながらも、好かれてはいけない、好かれてしまったら、選挙戦のために忙殺される羽目になると、嫌われようと懸命に意地悪オバさんに徹しようとする姿は奇妙なほどに滑稽です。原因不明の頭痛に悩まされているのに、選挙戦に奔走する有吉佐和子、実に涙ぐましい。作品の世界にぐいぐいと引き込まれていきます。

 本人はテレビに出たくないと書いていますが、テレビに出ていました。朝のワイドショー番組の草分け的存在『奈良和モーニングショー』でコメンテータとして出演していたのを見たことがあります。

 「ねえ、ちょっと待って、『奈良和モーニングショー』って、かなり前の番組よ。Falconさんって、何者?」

 それは、さておき、あの番組には瀬戸内晴美さんも頻繁にコメンテーターとして出演していましたね。

 「瀬戸内晴美って、ああ、寂聴さんのことね」

 そうです。作家って、テレビで素顔を見せないのかと思ったら、言いたい放題のことを言うので、ちょっとびっくりしました。
 『複合汚染』の話から逸れてしまいました。
 今、読んでも、実に刺激的です。硫安(硫酸アンモニウム)を化学肥料として使っているお茶を何度か煎じても、色は付くけど、味も香りもしないという情報は、好奇心をそそります。人の排せつ物で育てたお茶は2回、3回煎じても、美味しいそうです。

 東日本大震災以来、放射線に敏感になっています。わずかな放射線でもびくびくしてしまいます。雨が降って、土砂崩れが発生したり、洪水になると、すぐ地球温暖化とつぶやいてしまう。本当は、崖のそばに家を建ててしまったり、町中を流れる川を暗渠にして、舗装してしまう都市計画に問題があるだけなのに、報道に踊らされて、何でもかんでも地球温暖化に結び付けてしまいがちです。冷静に考えれば、伊勢湾台風や室戸台風など、巨大台風の被害はありました。
 それに火山の噴火のほうが膨大な地球温暖化ガスを噴出します。

 そんな今だからこそ、有吉佐和子の思考が必要だと思います。

00:47:01 | falcon | comments(0) | TrackBacks