June 14, 2013

大学の残念な授業!?



 『なぜ日本の大学生は世界でいちばん勉強しないのか?』

 直球勝負のタイトルで、ものすごく面白かったので紹介します。

 大学関係者にとって切実な問題を取り上げてくれました。

 遅読のFalconですが、通勤の電車の中で読みふけり、往復する間に読めました。これならば、速読できます。論点が明確に示されて。その論点が繰り返し述べられて、論証していくので、読むのに苦は感じません。欲を言えば、もう少し論点を深めてほしかったと思います。

 批判的に読み進めて、指摘したい点が1つあり、論じられていない点で補足したい点が1つあります。

 39〜40ページに太字で「あくまでも推測になりますが、いわゆる有名校でもこの有様ですから、日本全国の大学でどれほど残念な授業が行われているか、想像を絶するものがあります。」と著者は述べています。たしかに「推測」と断っているので、著者は逃げる余地も残しているのですが、東京周辺の9大学での聞き取り調査だけで、日本の全国の大学は「残念な授業が行われている」惨憺たる状況と決めつけるのは酷い推論です。
 実はこれまでFalconは有名大学、つまり御座敷小唄で言えば富士の高嶺に降る雪のような大学から、京都先斗町に降る雪のような大学まで数大学の非常勤講師をしてきました。現在していない大学もありますが、正直言って、有名大学ほど「残念な講義」が多いと言えます。逆に「先斗町大学」のほうに研究も教育も最高レベルの先生がいます。
 それは何故か?
 有名大学の先生は、ある意味、終の棲家を見つけたようなもので、出世鉄道の終着駅に着いたも同然で、学生たちにわかりやすく、考える授業をする気があまりありません。K大学、W大学で教えるのは本望達成なんです。一方、「先斗町大学」には業績を上げて、K大学やW大学のような「富士の高嶺大学」で教えたいと願っています。物わかりのよろしくない大学生に懸命に教えています。だから物凄くわかりやすい、池上彰さんレベルの説明力を持っている人がいます。(だから、大学院修了したばかりの、大学教員志望の人は、いきなり有名大学の非常勤を狙うのは絶対にやめたほうがいい。自分を磨くのならば「先斗町大学」のほうが質の良い苦労ができる。)
 よって、著者は推論という不確かなことを開陳する必要はなかったと思います。「東京周辺の有名9大学について調べました」で十分でした。本当に有名大学ほど、残念な授業が多いのです。

 それから、海外の大学、特にアメリカの有名大学のように「(学生が)考える授業」をするにはどうしたらよいかという方策について、歯切れの悪い説明をしていました。
 はっきり言いましょう。「考える授業」を行うなら、図書館の文献やインターネットの情報を駆使して、とことん学生たちに読ませて考えさせればよいのです。つまりは情報活用学習の必要性を著者は述べるべきでした。ところが、著者は一言も図書館に触れていない。これこそ、残念です。

 しかしながら、著者の思いを推察して、譲歩すると、大学入学前の高等学校、中学校、小学校での学校図書館での読書指導が、「考える読書」ではなく、「感じる読書」「思う読書」であり、大学での学習につながるものではないということが根底にあると思います。日本の読書指導は子どもたちが喜んだり、悲しんだり、面白がったりすることを期待しているだけで、考える読書はどちらかといえば、ついでにやることが多い。それに読書活動は学校司書やボランティアにお任せしているから、教育的配慮に欠けた指導になっている。

 長くなりましたが、日本の大学教育を変えるなら、学校図書館、大学図書館のあり方を根こそぎ変えなければなりません。

00:35:15 | falcon | comments(0) | TrackBacks