May 30, 2013
牧野邦夫展へ
5月29日(水)の午後、仕事を終えて、上野の東京国立博物館の「大神社展」を観に行きました。6月2日までなのでね。終わり間近なので、相当混雑しているかなあと思ったら、それほどではありませんでした。マツコ・デラックスさんみたいな大柄な女性が横柄な態度でのしのし歩くのに邪魔されましたが、閉館少し前まで見ていました。神の姿をかたどった神像が面白かった。残念だったのが、神社についての体系的な解説が無く、美術工芸品を展示した感じでした。神道と説明すると異論があるでしょうから、神社や日本古来の信仰のあり方をきちんと説明してほしかったなあと思います。今年は出雲大社の遷宮、伊勢神宮の式年遷宮がありますからね。こういう時だからこそ、日本とは何か、日本人の心のあり方とは何かを問う内容であってほしかったと思います。でね、そのあと、深夜番組「月曜から夜更かし」でフューチャーされている桐谷さんのごとく、上野公園から駈け出して、電車に乗り込み、山手線で池袋駅へ行き、西武池袋線で中村橋駅まで行き、練馬区立美術館に辿りつきました。お目当ては「牧野邦夫展」です。NHKの新・日曜美術館で紹介されていたので、気になっていました。これも6月2日までです。
入館料500円で、久々の感銘を受けました。
画家の牧野邦夫さんは写真で見ると、ごく普通の典型的な日本人の顔なんですけど、自画像では美形です。自画像をありのままに描くのは、ミケランジェロ・ブオナローティとレンブラントぐらいです。ルネサンスの巨匠ミケランジェロは若いころの怪我で鼻が曲がっていた上に、自らも認める不細工でした(だから、美しい男を求めたのかもしれない***)。そうですよね、自画像を醜く描く画家はあまりいませんね。
写実と幻想、エロスとタナトスが交錯する妖しい世界観です。まるで心霊写真のように、画面のあちこちに人の顔や動物などの具象が描きこまれています。それも何気ない静物画の中に。思わず、身を乗り出して画面を見つめてしまいます。
奇想に満ちた牧野邦夫の作品、惹かれます。また、どこかで展覧会を企画してほしいですね。
そういえば、エル・グレコ展、ルーベンス展、ミュシャ展、フランシス・ベーコン展、ラファエロ展と、合間を観ては、美術館を巡っています。
00:59:28 |
falcon |
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May 27, 2013
イタリア語の図書館学の入門書・教科書
以前、紹介したかもしれないイタリア語の図書館学の入門書があります。そのあと、イタリア語で書かれた図書館学の教科書を入手しました。どちらも分冊ではなく、1冊です。日本でも図書館学、図書館情報学の教科書が出版されていますが、シリーズで、司書課程の科目ごとに出版されています。
日本の教科書は、読むと、なんだか難しい、難解そのものです。一言で言えそうなことを、妙に長ったらしく書いています。まるで学術論文です。
一方で、もっと説明してほしい個所が無い。それだから、講義で説明の余地を残してくれているともいえるのですが、それにしても、あとちょっとの説明があれば、スッキリするんだけどね、と思います。
イタリア語がすらすらと読めるわけではないのですが、イタリアの図書館学の教科書は、たった1冊で丁寧に説明しています。学問として知らしめようとしているのではなく、初学者に「図書館学とは」を説いています。もちろん初学者だからと言って、執筆者は高所からのぞき見る様な高邁な題度で、小馬鹿にしてもいませんし、最近の重要な課題についても、丁寧に説明しているのには驚かされます。FRBR,RDAについてもしっかり説明している。それが目録や書誌コントロールの専門書ではなく、図書館学の概説書のレベルで、です。
概説書は簡単に書けばいいのではなく、重要な項目を漏れなく確実に理解できるように書くべきです。また、図書館情報学を学問として掲げるのではなく、後進の自助となるように書いてほしいなあと思います。この点では、自戒したいと思います。
01:37:05 |
falcon |
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May 22, 2013
本の都の物語
塩野七生さんの著作に『海の都の物語:ヴェネツィア共和国の一千年』があります。随分前に中公文庫で読んだ覚えがあります。
ヴェネツィアは海洋国家であるとともに、世界で最も早く印刷業が盛んになった地です。まさに「本の都」でもあったのです。
今でこそ、電子書籍がもてはやされていますが、印刷業のさまざまな事項のルーツがヴェネツィアにあると言っても過言ではありません。
西洋の古典籍に興味のある方には是非、お勧めします。図書館史に関心がある人にとっては必読書です。
実は昨年、イタリア語の原著を買ってあったのですが、翻訳に先を越されてしまいました。
ヴェネツィアに土地鑑があれば、十分に堪能できますが、ヴェネツィアに行ったことのない人でも、十分に楽しめます。とくに「消えたコーラン」の賞は、『ダヴィンチ・コード』を読んでいた時の興奮がよみがえりました。
最近、図書館情報学の話題は図書館経営と利用者満足度なんですけど、果たしてこれだけで良いのかなあと思います。1980年代の日本の図書館で起こった、いわゆる「貸出至上主義」の再来、って言うか、既視感(デジャ・ヴュ)を感じるんですよね。貸出率の高い図書館が優れた図書館だと思われた時代を思い起こさせるんですね。利用者を満足させれば最良の図書館!と考えるのは、はたして正しいと言えるでしょうか。利用者と言っても、さまざまな利用者がいますから、利用者の満足度は、貸出至上主義ほど単純なものではありませんけどね。
その一方で、資料の保存や資料についての知識が蔑(ないがし)ろにされて、「これからは情報検索と利用者の満足度だ」と堂々と言い切っている人がいます。電子書籍などのデジタル化の前では、かつての図書や雑誌の紙の文化はひれ伏すしかないかもしれませんが、情報検索はもうすでに図書館の手を離れて、利用者のほうが上手(「じょうず」と読んでもいいし、「うわて」と読んでもいい)です。つまり、インターネットの検索で熟達した利用者が現れていて、いまさら情報検索を学問の領域にして偉そうな顔をするのは、「裸の王様」よりも恥ずかしい。手引書のレベルでは、図書館情報学の専門書よりもはるかに優れた解説書があります。
「貸出至上主義」が虚しい痕跡しか残せなかったことを思うと、やはり図書館は地に足をつけて、図書や雑誌の文化を守る牙城となっていてほしいですね。
その意味で、この本を推します。
23:52:04 |
falcon |
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May 21, 2013
Nager人間は泳ぐのか?
こんばんは! 月曜も夜更かししています!「あら、久しぶりね」
もう、火曜日なんだけどさ、昨日、月曜日の夜、いつものように水泳教室に行って、クイックターンの練習したら、鼻の中に水が入って苦しくって、たまりません。
「それはいいけど、最近、どうしたのさ」
実は4月下旬から、つまり大型連休中から、腰痛で苦しんでいたわけ。近くの接骨医の先生に診察してもらって、いくらか回復してきたんだけど。
「腰が痛いのに水泳なんかして大丈夫なの?」
無理しない程度にやっているわけ。
「なんか、ずいぶんと軽い調子ね!」
リンクに表示されるテキスト
で、この本をちょこちょこ読んでいます。
新聞の書評で紹介されたので、読んだ人も多いかもしれない。
たしかに面白い。水泳を少しでもした人ならば、無性に面白い。メチャメチャ面白い。水泳にまつわる雑学、歴史上のエピソード満載で、なんと古生代のティクタアリクなんて魚までさかのぼって、人間と水泳の因縁の深さを語る。
背泳ぎは今でこそクロールを仰向けにしたような泳ぎだけれども、もともとは平泳ぎを仰向けにした泳法だったとは驚きです。実は、このエピソードはNHKブックスの『泳ぐことの科学』で知っていたけど、p.83の「フランス式泳法」の挿絵で納得できました。
それからね、『なぜ人間は泳ぐのか?』の訳文のテンポが合わなくて、途中まで読みづらかったのよ。
ところが、p.34にある、Everand Digbyというイギリスの聖職者が16世紀に書いた『泳法について』というイギリスでは初めての水泳の教本の話から、グッと面白くなるの。というのもね、一時期はDigbyの『泳法について』は忘れ去られてしまうのだけど、フランスのルイ14世につかえていたMelchisedech Thevenot(Melchisedechのseのeと、ThevenotのTheのeにアクサン・テギュがつきます)という司書がフランス語に翻訳して、これが英語に翻訳されて英仏でベストセラーになったというので、ここに惹かれたわけ。
「どうでもいいけど、カマっぽいわよ」
この『泳法について』を読んだのが、ロンドンで印刷工をしていた、かの有名なベンジャミン・フランクリンで、
「ああ、凧を上げて、雷が電気であることを発見した人ね」
そう、そう、それからアメリカ独立宣言、フランスとの外交交渉にも関わったし、
「フィラデルフィア図書館会社を創立した人ね」
そう、そう、図書館史でもおなじみの人ですね。フランクリンは『泳法について』の愛読者だったというわけ。
つまり、近代水泳の普及に図書館司書が関わったということにFalconはとても感激しました。
「図書館司書と水泳の関係ね。面白いことに目を付けたね」
それから、フランスとの関係もね。
「ああ、それでNagerっていうことか、ガッテン!」
そうそう、フランス語で「泳ぐ」はナジェでしょ。ナジェだか、私にもワカラナイ。
「オチを付けたね」
00:09:07 |
falcon |
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