November 09, 2012

『どうか、お静かに』のウラ話



 を、読んでいます。

 この本、なぜか。書店の店頭では入手できません。9月あたりから、予約販売が始まり、10月発売とあったので、そろそろ手に入るかなと思っていたら、いつまでたっても書店の平台に並ばないのです。しびれを切らして、紀○○屋書店で注文したら、翌日に「入荷しました」という返事をもらいました。想像ですが、店頭販売せず、注文があり次第、販売するようです。
 税込みで、およそ1,000円です。文庫本サイズですが、とても分厚い。

 最初は文章の調子がなじめませんでした。というのも、著者自身の体験に基づく実話のようですが、ライトノベルの調子なんです。なんとなく落ち着きのない文章で、ちょっとばかりエロチックな表現も出てくる。しかしながら、図書館史の話がところどころに出てきて、またアメリカの公立図書館の話も興味深く、思わず手放せなくなりました。
 著者が図書館学の大学院へ通う話は大変興味深い。
 アメリカの図書館学の大学院(修士課程だけど)の授業は、正直言って、日本の司書課程・司書講習とそれほど大きく変わらない。
 これまで、「アメリカなど諸外国では図書館職員(司書)の資格を大学院で取得するので、日本の司書資格とは比較にならないくらいレベルが高い」という神話を、Falconは鵜呑み(「ハヤブサ」が「鵜呑み」するのは変だけど)にしてきました。これを読む限り、アメリカでは凄くレベルの高いことを、やっているとは思えない。そこで、理解できたことは、「日本では、アメリカの大学院で教えていることを学部レベルの司書課程・司書講習で教えている」ということです。アメリカの大学院と言っても、大学教員・研究者を養成する高いレベルの大学院もありますが、一方で、大学卒業後の専門職養成の、継続教育、延長教育のような大学院、ポスト・グラジュエートもあります。
 では、なぜ、日本ではかくのごとき神話が語られてきたかといえば、そうでも言わないと図書館学を教えている先生が偉そうに見えなかったというわけです。本音を言えば、大学で図書館学を教えている先生たちが、アメリカの大学院の威光で威張りたかっただけです。
 アメリカの大学院での教育の良さは、学部の勉強に煩わされず、専門的に図書館、あるいは情報学について学べることです。また、学部である程度、専門分野の勉強をして学士号を取得した者が受講できるという点です。
 でも、驚くほど、高度な勉強をしているわけではない。
 むしろ、日本の司書課程のほうが短い時間で、高いレベルの勉強ができると確信しました。

 ところで、この本に登場する「ドクターL」という先生を、私、知っています。学校図書館の先生ですね。
 「学校司書」という訳語は、たぶん正確でないと思います。
 訳者の方は図書館の専門家でないから、責める気はありません。
 せっかくなので、図書館学の先生に監修・監訳してもらえると良かったですね。
 とにかく、手放せなくなる面白さです。宣伝文句にあるほど、爆笑、抱腹絶倒はしません。これが、もし抱腹絶倒できるなら、図書館の専門家です。

00:55:50 | falcon | comments(0) | TrackBacks