November 02, 2012

御英断!田中真紀子文部科学大臣

 田中真紀子文部科学大臣が、3大学の新設を認めなかったのは、まさに御英断です。無論、大学に籍を置く身として、開校の許可にこぎつけるまで関係者の御尽力は測りえないものであることは十分承知しています。しかも、3大学とも札幌、秋田、岡崎(愛知県)と地方ですから、地域活性化も考えて、地域の方々の並々ならぬ熱い思いがあったと思います。

 ただし、時期が良くなかったと思います。もう開校の準備を始めていたのですから。できるならば、夏の前に示すべきでした。

 大学の新設が続いたのは、いくつか理由があります。
 1.短期大学、専門学校の看板の書き換え
 短期大学、専門学校は少子化、高学歴希望者の増加によって、入学者が激減している。そのため、大学への看板の書き換えを行うしかない。
 2.大学教員の給与水準の維持
 大学教員は簡単に解雇できません。そうなると、給与を払うためには、大学教員の給与を維持するだけの入学金、授業料を確保しなければならない。大学教員に月額50万円+賞与250万円給与払うためには、100万円授業料を払う大学生が8.5人必要になります。学生が増えると、それだけ教員を採用する。教員の給与を確保するために学部・学科を増設して入学定員を増やす。そうすると、教員が増えると、延々と続く拡大路線にはまり込んでしますわけです。
 3.大学の先生・職員は「手を汚さない」「カッコイイ」
 大学の先生は、世間から見れば、言わば「汚れ役じゃない」。ドラマでも大学の先生役は、ひたすら「カッコイイ」。たまには教授の椅子をめぐって、権勢欲むき出しになっている姿が描かれますが、世間の人が思うほど、実際はヒドクは無い。
 見た目、「汚れ役じゃなく」ても、実際は学生たちの接客業ですから、驚くほどに泥臭い仕事です。学生もレベルの低下だけでなく、精神疾患や情緒などに問題を抱えた学生が増えていますので、過酷な労働です。
 「大学の先生って、自分の好きなことを小難しく話して、みんなから尊敬されるのだから、良いよなあ」と思っている人が多いかもしれませんが、図書館司書課程、学校図書館司書教諭課程は、カリキュラムがきっちり決まっていて、まるで小学校から高等学校までのカリキュラムと全く同じなんです。他の科目の先生は、ある程度好き勝手なことを話して、お茶を濁すこともできます。とはいえ、どんな科目でも厳しいことには変わりありません。
 ですが、世間一般からは羨望の的ですね。

 少子化なのに、これ以上大学が増えても、将来を考えると大学教育の水準が上がるとは思えません。大学院を出て、大学教員の職を探している人にとって働き口が少なくなるのは憂慮すべきことでしょうが、大学と大学生を増やすよりも、高卒でもいいから労働者を増やしたほうが良いです。
 Falconは大学院を出て、ある大学の図書館で働いていましたが、職場には高卒、専門学校卒で、極めて優秀な職員の人が多くいました。実務をするのは、学歴なんか関係ありません。実務で解らないことがあると、「大学院を出たんですよね」という羨望と軽蔑の入り混じった目で見られました。かえって、自分の学歴が疎ましく邪魔に感じたくらいです。
 今、大学で教えていても、学歴なんか、有って無きがごとく、教える技能は経験と努力のみです。はっきりいえば、決まり切ったことを、アドリブを交えて、台本に基づいて、演じきるかです。つまり役者の要素のほうが大きい。

 少なくとも、この御英断は10年前にするべきでした。明らかに少子化なんですから。それに超高齢化が進んでいるわけですから、早く就職して、仕事を憶えて、税金を納めたほうが良いと思います。労働者人口を増やすためにも、素晴らしい御英断だと思います。

 同僚の先生たちが学生に大学院へ行きなさいと薦めているのを聞くと背筋が寒くなります。これ以上、大学院生を増やしても、職場レス博士、つまりは野良(ノラ)博士を増やすだけです。

 悪弊を正す大臣にエールを送ります。

13:36:49 | falcon | comments(0) | TrackBacks