November 12, 2012

究極のメディア論!



 を読んでいました。

 「『どうか、お静かに』は、どうしたの?」

 ああ、あの本、厚いんっで、まだ、読み切っていません。

 でね、図書、雑誌、新聞が今後、デジタル化されて、どうなってゆくかが描かれています。
 大抵、この手のメディア論は、「電子化されるぞ」「日本の出版界はもう駄目だ」「やっぱり、紙の図書が良い」という小話が多く、統計もほとんど示さず、著者だけが知っている情報を開陳されて終わりですが、この本は統計を見せて、きちんと分析しています。勿論、統計は読者なりの解釈も許されます。
 少なくとも図書館情報学のテキスト、司書課程のテキストより、知的でエキサイティングな感動を覚えます。しかしながら、日本をはじめとする先進国の出版事情は恐ろしく、悲しい。
 アメリカでは地方新聞社がどんどん倒産に追い込まれているそうです。原因はインターネットの普及です。じゃあ、日本はどうかというと、アメリカと同様の現象になるとは限らないでしょう。国情が明らかに違いすぎます。

 日本の出版界の1970年代から2010年代にかけての隆盛と落ち込みをJRA(日本中央競馬会)の売上と比較して、似ていると喝破したのは実にお見事です。私も、そう思っていました。
 しかし、競馬、つまり競馬情報と勝ち馬投票券の販売のICT化、デジタル化は、出版界の比じゃありません。赤鉛筆を耳に挟んでるおっさんたちが、場外馬券場でマークシートを塗ったり、スマホで入力している様は、図書館の検索システムとは比較できません。なにしろ、一獲千金の夢がかかっているのですから、道楽みたいな研究や、趣味で本を読むのとはわけが違います。

 日本の出版界の凋落は、ひとえに雑誌の売れ行き落ち込みが大きいということは、著者の山田氏に限らず、多くの人が指摘しています。だから、いわゆる単行本が電子化されても、売れ行き自体に大きな変化が現れることは無いでしょう。ただし、印刷業者、製本業者の仕事が減ります。つまり「中抜け」ね。

 「雑誌の売り上げが減ったのは、なぜ?」

 インターネットで必要な情報が簡単に手に入るからです。それから雑誌に掲載される広告から得る収入が著しく落ち込んでいるからです。書店にとって脅威なのは、24時間営業のコンビニエンスストアが雑誌を販売することです。日本の書店って、雑誌の売り上げが第1でしたから。

 「図書じゃ、儲けは余りないってこと」

 図書は、関わっている人数の割には、それぞれの儲けが少ないんです。なにしろ、広告が無いし。はっきり言って、儲かっている作家は10人いるかいないかです。多くても50人かなあ。

 この著作で、なるほどと思ったのは、日本の出版界はマンガで潤っていたということです。ところが少子化とインターネットの普及で、マンガの売れ行きもガタ落ちです。子どもの数が減れば、出版社も子ども向けの漫画は作りませんよね。当たり前の経済的な論理です。

 つまるところ、日本の出版界の落ち込みの原因は、インターネットの普及と少子化による、雑誌・マンガの売り上げが落ち込んだことです。それ以外に、この本では様々な要因を探っています。
 とにかく、無類の面白さです。図書館情報学のメディア論でも、このくらい迫力ないと、つまらない。

21:19:56 | falcon | comments(0) | TrackBacks