November 27, 2012

心のつばさに身を任せて、パリへ

 あの清岡智比古先生のパリの移民街案内です。



 「ねえ、ねえ、なんで、『あの』って、指示語がついているの?」

 それはねえ、NHKラジオ・テレビのフランス語講座でお馴染みでしょ!レナ・ジュンタさんとの漫才コンビですよ。

 「ああ、『あの』清岡先生ね。ということは、定冠詞Leが付く智比古ね」

 なんだ、わかっているじゃん。

 「わたしは、国枝先生とパトリスのコンビが好きだけど」

 わたしも好きです。

 で、紹介されているのはユダヤ人街、アラブ人街、アフリカ人街、アジア人街(中華街)、インド人街とFalconが大好きな街角ばかりです。でも、ディープなアジア人街、インド人街へは、まだ足を踏み入れたことはありません。
 今年の正月にフランスへ行きましたが、仕事を放り投げて、パリに行きたくなりました。

 清岡先生も手にしたようですが、私もバルベス・ロシュショアール駅の近くで「祈祷師、霊媒師」というチラシを手にしました。でね、霊媒師=メディア(フランス語でね。英語と綴りが少し違ってアクサンが付いています)って書いてあるんです。前にも書いたかもしれませんが、メディアには霊媒師という意味があります。

 清岡先生の本では、超格安のエスニック料理が食べられるレストランも紹介されています。

 「フランスなら、フランス料理じゃないの!」

 チッ、チッ、それが違うんだなあ。フランスでフランス料理を食べるのは、はっきり言って、ダサい。東京でフランス料理を食べるのはカッコいいけど、パリではフランス風のエスニック料理、それも格安な料理を食べるのがカッコいい。パリズィアン、パリズィエンヌたちは、外食でフランス料理を食べない。

 「へえ、そうなの」

 移民街へ行くならば、普段着で行きましょう。パリの人は、日本のファッション雑誌で紹介されているような、おしゃれな服装術は身につけていません。小ざっぱりした服装です。

 「小ざっパリって、ダジャレでしょ」

 いちいちチャチを入れないでくださいよ。
 とにかくパリの移民街の魅力満載です。

 ああ、そうだった。ラシッド・タハの『バルベス』を紹介してほしかったなあ。
 パリを描いた映画といえば、『ディーパ』もすごく好きだった。雨のリュクサンブル公園のシーン、身も心も濡れちゃう。

 「ねえ、リュクサンブル公園は移民街じゃないよ」

 ああ、そうでした。

 とにかく、魅力的なパリを再発見します。では。

23:34:36 | falcon | comments(0) | TrackBacks

November 24, 2012

ぼちぼち図書部

 あの『暴れん坊本屋さん』の久世番子さんの新刊です。



 日本の文豪をなぎ倒しです。
 文学作品の意外な読み方に、え〜〜っの叫び声といや〜んのあえぎ声の連続です。

 文学部のある大学で教えることが多いのですが、それにしても、最近の文学部の学生は、ほとんど文学作品を読んでいません。それで「国語の先生めざしているんですけど」とほざく有様です。Falconの持論は、日本の国語教育が古典文学、小説・物語の類を読んできた国語教師によって堕落させられているなんですが、それにしても、文学部の学生が少なくとも著名な作家の作品を少しは読んでほしいなあと思います。先日、目録の演習で、石川啄木の『一握の砂・悲しき玩具』を取り上げたとき、「先生、これって、1作品のタイトルですか?」と尋ねられて、足がすくんで、めまいと頭痛が襲ってきました。文学部の学生で、いや、日本の大学の学生で、石川啄木の歌集を読んだことが無いというのは信じられなかったのですが、もういちいち驚くことが無駄です。

 Falconは高2まで理系少年でしたが、日本の古典文学作品の教科書に掲載された作品は鎌倉時代まで岩波文庫で通読しましたよ。
 心残りが夏目漱石の『吾輩は猫である』と谷崎潤一郎の作品をまともに読んでいないことです。

 で、10月下旬、全国図書館大会で島根県の松江市へ行きました。松江といえば、小泉八雲、ラフカディオ・ハーンですね(今の文学部の学生は、同一人物だとはわからないし、作品名も思い浮かばない)。実は、松江には志賀直哉、芥川龍之介ら数多くの文人が訪れています。
 でね、小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーンは、水泳が得意で大好きだったようです。旧居の隣にある記念館の展示で知りました。Falconも水泳は下手ですが好きなので共感しました。ハーンはどんな泳ぎが得意だったんでしょうね。水着はどんな水着だったのでしょう。

 夏目漱石の『こころ』の冒頭、「わたし」と「先生」が出会う場面、鎌倉での海水浴なのを憶えていますか。

 「教科書で読むと、冒頭の場面がない!」

 そうですね、『こころ』といえば、ひたすら下宿の暗い話が続きますが、湘南・鎌倉の海岸からスタートする、意外にハイカラな小説なんです。『彼岸過迄』を読むと、当時のファッション・センスで登場人物の内面を細かく描写しているのに驚かされます。漱石が多くの人に読まれる理由の一つに、明治末期から大正にかけての比較的自由な雰囲気のトレンディ小説という側面があるからです。人間関係のドロドロは今の小説だって描いています。

 さて、ハーンは水泳だけでなく、鉄アレイで体を鍛えていたと事実にビックリしました。記念館には小村寿太郎から贈られた鉄アレイがあります。日露戦争後の外務大臣の小村寿太郎とは親しく、鉄アレイ友達、鉄友だったそうです。
 そういえば、胃弱な漱石も健康情報に敏感で、体を鍛えることに興味があったようです。この時代、平成の今と同様に、健康ブームだったですね。「筋トレ」がはやっていたみたいです。

 そう、筋トレといえば、今日、11月25日は三島由紀夫が自決した日です。

 民主党の鳩山由紀夫氏は引退するそうで。

 「由紀夫つながりかよ!、関係なさすぎ!、三島文学は永遠に不滅です」

 ついでに、小泉八雲の『怪談』の「雪女」は、東京都青梅市が舞台なんです。武蔵国調布村とありますが、現在の調布市ではありません。

 三島由紀夫→鳩山由紀夫→雪女と、ゆき、ゆき、ゆきつながりです。

 「ところで、Falconさんの本名は?」

 それは秘密。

23:01:02 | falcon | comments(0) | TrackBacks

November 19, 2012

いとわしき者たちと、いとしき者たちへ

 『どうかお静かに:公立図書館ウラ話』をまだ読んでいます。

 図書館のことをよくわかっている人が書いているなあと、感心しています。同業者同士で褒めあっても、しょうがないけど。

 作者のスコット・ダグラス氏は、一部の利用者のことを嫌いだと、ぼやき、こきおろしていますが、心の底では彼らのことを許して、温かく見守っています。「いとわしい」と思いつつも、「いとおしい」と思っている、そんな心情に共感してしまいます。たった1字で、思いが裏表です。

 それから、同僚たちの欠点をあげつらっていますが、尊敬する点はちゃんと褒めています。「ブレンダ」さん、「パム」さんたちが等身大に描かれているので、実感が伝わってきます。

 メルヴィル・デューイを目録システムの大成者と書いていますが、分類システムの大成者ですね。作者の思い違いでしょうか、訳者の訳し間違いでしょうか。

 図書館サービス論として、利用者の姿を描いている点は、参考書としたいと思います。図書館学、司書課程の教科書には、ここまで細やかに描かれていない。

 しかしながら、アメリカの公立図書館って、インターネットとコンピュータの使用は、かなりいい加減なんですね。日本の図書館では、絶対あり得ません。これは、どんなことあっても、マネできません。


23:06:17 | falcon | comments(0) | TrackBacks

November 12, 2012

究極のメディア論!



 を読んでいました。

 「『どうか、お静かに』は、どうしたの?」

 ああ、あの本、厚いんっで、まだ、読み切っていません。

 でね、図書、雑誌、新聞が今後、デジタル化されて、どうなってゆくかが描かれています。
 大抵、この手のメディア論は、「電子化されるぞ」「日本の出版界はもう駄目だ」「やっぱり、紙の図書が良い」という小話が多く、統計もほとんど示さず、著者だけが知っている情報を開陳されて終わりですが、この本は統計を見せて、きちんと分析しています。勿論、統計は読者なりの解釈も許されます。
 少なくとも図書館情報学のテキスト、司書課程のテキストより、知的でエキサイティングな感動を覚えます。しかしながら、日本をはじめとする先進国の出版事情は恐ろしく、悲しい。
 アメリカでは地方新聞社がどんどん倒産に追い込まれているそうです。原因はインターネットの普及です。じゃあ、日本はどうかというと、アメリカと同様の現象になるとは限らないでしょう。国情が明らかに違いすぎます。

 日本の出版界の1970年代から2010年代にかけての隆盛と落ち込みをJRA(日本中央競馬会)の売上と比較して、似ていると喝破したのは実にお見事です。私も、そう思っていました。
 しかし、競馬、つまり競馬情報と勝ち馬投票券の販売のICT化、デジタル化は、出版界の比じゃありません。赤鉛筆を耳に挟んでるおっさんたちが、場外馬券場でマークシートを塗ったり、スマホで入力している様は、図書館の検索システムとは比較できません。なにしろ、一獲千金の夢がかかっているのですから、道楽みたいな研究や、趣味で本を読むのとはわけが違います。

 日本の出版界の凋落は、ひとえに雑誌の売れ行き落ち込みが大きいということは、著者の山田氏に限らず、多くの人が指摘しています。だから、いわゆる単行本が電子化されても、売れ行き自体に大きな変化が現れることは無いでしょう。ただし、印刷業者、製本業者の仕事が減ります。つまり「中抜け」ね。

 「雑誌の売り上げが減ったのは、なぜ?」

 インターネットで必要な情報が簡単に手に入るからです。それから雑誌に掲載される広告から得る収入が著しく落ち込んでいるからです。書店にとって脅威なのは、24時間営業のコンビニエンスストアが雑誌を販売することです。日本の書店って、雑誌の売り上げが第1でしたから。

 「図書じゃ、儲けは余りないってこと」

 図書は、関わっている人数の割には、それぞれの儲けが少ないんです。なにしろ、広告が無いし。はっきり言って、儲かっている作家は10人いるかいないかです。多くても50人かなあ。

 この著作で、なるほどと思ったのは、日本の出版界はマンガで潤っていたということです。ところが少子化とインターネットの普及で、マンガの売れ行きもガタ落ちです。子どもの数が減れば、出版社も子ども向けの漫画は作りませんよね。当たり前の経済的な論理です。

 つまるところ、日本の出版界の落ち込みの原因は、インターネットの普及と少子化による、雑誌・マンガの売り上げが落ち込んだことです。それ以外に、この本では様々な要因を探っています。
 とにかく、無類の面白さです。図書館情報学のメディア論でも、このくらい迫力ないと、つまらない。

21:19:56 | falcon | comments(0) | TrackBacks

November 09, 2012

『どうか、お静かに』のウラ話



 を、読んでいます。

 この本、なぜか。書店の店頭では入手できません。9月あたりから、予約販売が始まり、10月発売とあったので、そろそろ手に入るかなと思っていたら、いつまでたっても書店の平台に並ばないのです。しびれを切らして、紀○○屋書店で注文したら、翌日に「入荷しました」という返事をもらいました。想像ですが、店頭販売せず、注文があり次第、販売するようです。
 税込みで、およそ1,000円です。文庫本サイズですが、とても分厚い。

 最初は文章の調子がなじめませんでした。というのも、著者自身の体験に基づく実話のようですが、ライトノベルの調子なんです。なんとなく落ち着きのない文章で、ちょっとばかりエロチックな表現も出てくる。しかしながら、図書館史の話がところどころに出てきて、またアメリカの公立図書館の話も興味深く、思わず手放せなくなりました。
 著者が図書館学の大学院へ通う話は大変興味深い。
 アメリカの図書館学の大学院(修士課程だけど)の授業は、正直言って、日本の司書課程・司書講習とそれほど大きく変わらない。
 これまで、「アメリカなど諸外国では図書館職員(司書)の資格を大学院で取得するので、日本の司書資格とは比較にならないくらいレベルが高い」という神話を、Falconは鵜呑み(「ハヤブサ」が「鵜呑み」するのは変だけど)にしてきました。これを読む限り、アメリカでは凄くレベルの高いことを、やっているとは思えない。そこで、理解できたことは、「日本では、アメリカの大学院で教えていることを学部レベルの司書課程・司書講習で教えている」ということです。アメリカの大学院と言っても、大学教員・研究者を養成する高いレベルの大学院もありますが、一方で、大学卒業後の専門職養成の、継続教育、延長教育のような大学院、ポスト・グラジュエートもあります。
 では、なぜ、日本ではかくのごとき神話が語られてきたかといえば、そうでも言わないと図書館学を教えている先生が偉そうに見えなかったというわけです。本音を言えば、大学で図書館学を教えている先生たちが、アメリカの大学院の威光で威張りたかっただけです。
 アメリカの大学院での教育の良さは、学部の勉強に煩わされず、専門的に図書館、あるいは情報学について学べることです。また、学部である程度、専門分野の勉強をして学士号を取得した者が受講できるという点です。
 でも、驚くほど、高度な勉強をしているわけではない。
 むしろ、日本の司書課程のほうが短い時間で、高いレベルの勉強ができると確信しました。

 ところで、この本に登場する「ドクターL」という先生を、私、知っています。学校図書館の先生ですね。
 「学校司書」という訳語は、たぶん正確でないと思います。
 訳者の方は図書館の専門家でないから、責める気はありません。
 せっかくなので、図書館学の先生に監修・監訳してもらえると良かったですね。
 とにかく、手放せなくなる面白さです。宣伝文句にあるほど、爆笑、抱腹絶倒はしません。これが、もし抱腹絶倒できるなら、図書館の専門家です。

00:55:50 | falcon | comments(0) | TrackBacks