August 26, 2012

台湾の学校図書館は、どうなっているんだ!

 実は、IFLA大会の学校図書館リソースセンターの分科会では、不可解な発表が続きました。

 今度は台湾からの参加者の発表でしたが、フランスからの発表者とは、結論は違うものの、主旨は学校図書館が充実していないから、公共図書館が積極的に児童・生徒たちにサービスしなければならないというものでした。

 数年前に台湾の学校図書館を見学しました。台北周辺の学校図書館を4校、見学しました。台湾の学校図書館は、制度面でも、実際の運営面でも、日本の学校図書館よりも優れています。すべての学校とは限りませんが、学校図書館が校舎から独立した建物です。中には3階、4階という高層の建物も少なくありません。2000年以降、国家図書館、公立図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館を包括する図書館法が制定されて、国民小学、国民中学、高級中学、職業学校の学校図書館に関して、詳細な運営基準が整備されています。見学した学校に限って言いますが、資料面でも充実していて、中学校、高校の学校図書館は、日本の小規模な大学図書館と同等の規模です。
 残念ながら、中国と韓国の学校図書館を訪問したことが無いので、迂闊なことは言えませんが、わずかな知識と仄聞を交えて考えると、台湾は東アジアでは学校図書館が最も充実した地域です。

 それなのに、発表者は学校図書館が、特に小学校の図書館が充実していないので、公共図書館との協力が必要だと述べていました。

 フランスと台湾の発表者の話を聞いて、後でじっくり考えてみたのですが、フランスも台湾も学校図書館が充実しているのに、公共図書館との連携が必要だという結論になったのは、この分科会の主旨が「公共図書館との連携・協働」であるためで、そのうえ、フィンランドは学校図書館の活動が盛んでなく、公共図書館のサービスを必要としていることもあるからだと、ガッテン!しました。
 フランスからの発表者の力量もありますが、Falconの見聞と異なる発表者の見解になっているのは、分科会の主旨に沿ったものにしたためじゃないかと思われます。

 IFLA大会って、結構、「政治的」なんですね。情報交換と、純粋な研究発表の場と思っていたら、とんでもない目に遭いそうです。それこそ、批判的な視点でメディアリテラシーを働かさないとねえ。

 オリンピックも「政治的」「商業的」なんですから、仕方ないか。

00:05:22 | falcon | comments(0) | TrackBacks

August 25, 2012

フランスの学校図書館 In ヘルシンキ

 国際図書館連盟IFLAヘルシンキ大会の学校図書館リソースセンター分科会は「公共図書館との連携・協働」がテーマでした。
 他の人がブログで紹介しているので、詳しいことはそちらに譲ります。
 フランスの研究者が登場して、フランスの小学生、中学生、高校生が公共図書館を、どのくらい利用して、公共図書館がどんなサービスをしているかを発表していたのですが、満足のゆく内容ではありませんでした。
 発表がフランス語でしたので、ワイヤレスの通訳を聴く人が多かったのですが、Falconは敢えてフランス語で聴いてみました。
 パワーポイントの画面は英語で、フランス語の発表を聴きながら、英語とフランス語で理解しなければなりませんでした。
 発表は割とゆっくりでしたから(発表者が通訳に気遣っていたから)、理解しやすかったです。
 ですが、フランスの学校図書館の歴史、幼稚園(保育学校)と小学校(フランスは5年制)にはBCDという学校図書館があるなどの背景と経緯を説明せず、独自に行ったアンケート調査の結果を説明していました。小学校の児童は公共図書館をよく利用しているが、中学校(4年制コレージュ)・高等学校(3年制リセ)などに通う生徒たちは公共図書館をあまり使わない、という内容でした。それは公共図書館が積極的に中学生、高校生にサービスしていないからだという結論だったのですが、これこそ「ちょっと、待った!」です。

 発表者も述べていましたが、フランスは公共図書館の発達が遅れていました。
 色々な理由が考えられます。
 フランスの近代公共図書館の起源はフランス大革命までさかのぼります。革命軍が没収した王侯貴族・修道院の書物を保管する場所が図書館でした。こんな状態が20世紀になっても続いていたので、人気のベストセラーを貸出して利用するという英米、いうなればアングロ・サクソン系の図書館思想が無かったのです。第一次・第二次世界大戦を経て、アメリカの図書館学が導入されて、少しづつですが公共図書館が発展して、1980年代以降、急速に発達しました。1970年代までは古臭い書物が置かれている場所が図書館でしたが、1980年代以降、人々が資料を借りて、情報を活用する場所へ認識が変わったのです。
 もうひとつ、フランス人のアメリカ嫌い(伝統も文化もない生意気な新興国!)・イギリス嫌い(近親憎悪による百年戦争以来の宿敵!)があります。今ではフランスも先進諸国の一員として英米と協調しますが、それでも文化面では反発しています。むしろ、フランス人は日本文化に強烈な憧れを抱いています。フランスでインターネットの導入が遅れたのは、ミニテルという独自の情報システムが発達していたからでもありますが、アメリカ発祥のシステムに抵抗していたためでもあります。

 一方、フランスの学校図書館は、極めて早い時期から発達していました。古くは19世紀、日本では幕末に初等教育学校に学校図書館を設置する通達が出ました。その後、この初等教育学校の図書館は地域に開放されて、学校図書館としての役割が薄れていくのですが、第二次世界大戦後、1950年代から中等教育学校が設置されると、「資料サービス部」という学校図書館が設置されるようになり、1970年代にCDIという呼称に統一されて、本格的な活動を始めて、1989年に学校図書館の専任教員であるドキュマンタリスト教員の資格が創設されて、国家試験で採用された専任教員が配置されます。幼稚園(保育学校)・小学校にもBCDという学校図書館が1980年代以降、国民教育省の通達により設置が勧告されます。BCDには専任の教員も職員も置かれません。
 コレージュ(4年制中学校)やリセ(3年制普通科高校)、職業リセ・農業リセの学校図書館CDIは、ほとんどの学校に設置されて、各学校2名の採用枠でドキュマンタリスト教員が配置されています。CDIには学校の教育に必要な資料もそろっています。
 フランスの中学生や高校生が公共図書館を利用しないのは、公共図書館が積極的にサービスしていないのではなくて、専任のドキュマンタリスト教員がいて、総合的・横断的学習の課題を解決するのに必要な資料が十分にそろっているからです。

 発表の後、フランスからの参加者で、公共図書館の関係者だったと思われるのですが、大変な剣幕で意見を言っていました。早口だったので、ほとんど聞き取れませんでした。
 そして、Falconも厚かましくもフランス語で、意見を述べさせていただきました。「私の意見では、フランスの中学生や高校生が公共図書館をあまり使わないのは、専任のドキュマンタリスト教員が配置されているからだと思います」

 日本にもいますよね。現場経験もなく、現場に入って学ぼうとしない研究者が。

 このフランスの研究者がアンケート調査を行って実証的な研究を試みたことは評価できますが、自国の状況・背景も十分に理解しておらず、国際大会で発表して、極東の参加者に意見を言われてしまうなんて、残念と言うしかありません。
 

22:24:06 | falcon | comments(0) | TrackBacks

August 22, 2012

うふふ、みんなが知らないヘルシンキの図書館

 フィンランドと聞けば、PISAの国際学力調査で最上位を維持していた(その後、アジア諸国に追い抜かれた)ので、教育大国として知られて、日本の研究者および研究者ぶっている連中は、学校図書館に注目している。ところが残念なことに、フィンランドの学校図書館は、学校に無いか、あっても貧弱で、ほとんどの場合、公共図書館へ児童・生徒を行かせるか、移動図書館でのサービスを受けている。
 今回、タンペレ市立図書館の分館を見学して気が付いたのであるが、学校の校舎の中に市立図書館の分館があった。要するに千代田区の昌平まちかど図書館(昌平小学校:秋葉原の電気街の近く)や神田まちかど図書館(千代田小学校:JR神田駅、丸ノ内線淡路町駅の近く)などとそっくりである。
 てっ、なわけで、フィンランドの学校図書館は期待外れであった。
 尤も、IASL大会でフィンランドの参加者に実情を聞いていたから驚きもしなかったけど。

 公共図書館、つまり市立図書館の利用率は世界で最大で、フィンランドの国民は図書館をよく利用して、本をたくさん読んでいるとして知られているが、これもブログでたびたび説明しているように、止むに止まれぬ理由があるからだ。背景も考えずに、現象だけで判断して、立派だというのは、馬鹿でも言える。学者ならば、ちゃんと理屈を考えて説明するべきだ。

 で、言いたいことは、今回の日本からの参加者で誰も関心が無く、見学する人がFalconのほかにいなかった、いくつか図書館を見学した。
 フィンランド文学協会の図書館とスウェーデン文学協会の図書館、そして北欧諸国の資料を収集してヘルシンキ市民に開放して貸出もするノルディック図書館を発見して見学した。
 今日は時差ボケで深夜起きて書き込みしているので、この3つの図書館については、後で書く。
 ただ、言っていきたいのはフィンランド文学協会は世界的に民話研究で知られていて、これを知らないのは図書館員の恥に等しい。ましてや「児童文学の専門です、学校図書館の専門です」と言い張っているのに、ヘルシンキに来て、直ちにフィンランド文学協会へ行かないのは、愚の骨頂である。
 Falconは大学時代、ムーミンの翻訳者の一人、高橋静雄先生にカレワラ(カレヴァラ)を教えてもらったので、フィンランド文学協会を知っていた。思いだしていなければ、帰国して実に無様な参加者になるところだった。

01:39:44 | falcon | comments(0) | TrackBacks

すごく気になる!IFLAヘルシンキ大会の開会式の音楽

 IFLA大会の開会式では、最初にフィンランドの民俗楽器を使って、女性歌手が歌った古い民謡を聞きました。

 それで開会式の最後に男性ピアニストが2曲弾いたのですが、最後の曲が大河ドラマ「平清盛」の曲にとても似ていました。特にサビの部分が。ピアニストが盛んに「短調の哀しい調べなんだけど」といっていましたが、とても力強い、素晴らしい演奏でした。
 あとで、日本から参加者たちが「あれは坂本龍一の曲に似ている」とか、いっぱしの専門家のように言っていましたが、Falconには「平清盛」のテーマ曲と聴こえました。「遊びをせんとや、生れけむ」が耳に付いて離れませんでした。

 図書館で一番困るのが、音楽情報のレファレンスです。
 言葉で調べるのは、糸口さえつかめれば、なんとか探し出せますが、音楽は音ですから、音符に書き換えられる人なら問題は少ないにしても、とても厄介な問題です。
 Falconの音楽の成績は、小学校・中学校で最低です。
 ハーモニカも笛も全然だめで、『アマリリス』を何度も何度も練習させられて、放課後、一人だけ残って練習した記憶があります。
 だから合奏のときは、カスタネットやトライアングルのその他大勢に混じって、叩いているふりをしていました。実際に叩くとリズムがズレて、周囲の顰蹙を買いました。

 普通科高校で芸術科目は選択できたので、迷わず美術にしました。デッサンは苦手でしたが、色彩感覚が良くて、先生に褒められました。そのためか、今でも美術館へ行くのは大好きです。

 なんだかIFLAの話からそれてしましました。

01:09:14 | falcon | comments(0) | TrackBacks

トラブル続きのフィンランド

 8月11日から17日までフィンランドの首都ヘルシンキで行われていたIFLA国際図書館連盟の大会に参加していました。
 その後、たった2泊3日ですがロシアのサンクトペテルブルグで短いヴァカンスを満喫しました。
 なので、これからしばらくフィンランドとロシアが話のネタになります。

 なにしろ、今回は出発からトラブル続きでした。
 成田から日本航空とエール・フランスの共同運航便が出発時刻を約3時間半も遅れてしまいました。そのため、シャルル・ド・ゴール空港(ロワシー空港と呼んだほうがフランス人にはわかりやすい。つまり、日本で成田空港というのと同じ。)の近くのホテルに1泊しました。出発前にヘルシンキのホテルの1泊分をキャンセルしてました。しかもヘルシンキへわざわざ国際電話をかけて!ロワシー空港では地上乗務員が乗客の対応を英語でしていました。多少英語ができる人でも、パニックになっていて3分から10分対応しているのに、Falconは「フランス語が話せます」と言ったら、「じゃあ、このホテルに宿泊してね、クーポン渡すから」で終わりでした。いくらフランスに何回も来ているFalconでも、ロワシー空港の近くのホテルに泊まるのは初めてです。翌朝の飛行機の予約が無ければ、パリの街中のホテルに宿泊したかったというのが本音です。
 それでもエール・フランスだったので、フランス音楽とライ・ミュージックがたっぷり聞けて、機内ではノリノリで過ごしました。

 さて、やっとヘルシンキに到着して、ホテルに荷物を置いて、ヘルシンキ中央駅でツーリスト・チケットを買ったのですが、これが何と大会で支給してくれることが後で判明しました。7日分28ユーロ払ったのが無駄でした。

 そして、大会の登録を済ませて、大会のグッズが入ったバッグをもらって、知っている人と出会って、大会の会場前から7Bのトラムに乗り込もうとした瞬間、ズボンのポケットに手を入れられた感触がありました。ちょうど移民系の若者(アラブ系の顔立ち)の青年3人組が行き先を運転手に尋ねていました。財布が無いことに気が付きました。振り返ると背の低い少年かなあ?、がジャケットの中に何か隠しているので、それを払い落すと、Falconの財布が転がり出ました。「僕じゃない」と言い張っていましたが、彼らのうちの誰かの犯行に違いがありません。財布が無事に戻ったし、トラブルを起こしたくないので、トラムで知っている人たちとヘルシンキの中心街へ戻りました。

 北欧はIFLAコペンハーゲン(デンマーク)大会、IASL国際学校図書館協会マルメ(スウェーデン)大会に来ました。今回で3回目です。北欧は税が高く、高福祉の国ですから、国情は安定して、犯罪も少ないと言われています。
 しかしながら油断は禁物です。
 高福祉と国情の安定を期待して、東欧諸国、紛争の続くアフガニスタン、イラク、パレスチナ、中央アジアのコソボやチェチェンからの難民と移民が後を絶ちません。もちろん、昨年の「アラブの春」以来、チュニジア、エジプトなどから逃れてくる人もいます。フランスのパリに比べれば、ヘルシンキは見た目、アラブ人、黒人は圧倒的に少ない。
 断言します。ヘルシンキは、けっして安全な街ではありません。パリ、ロンドン、マドリッド、ローマと渡り歩いたFalconでも被害に遭いましたから、絶対に油断しないでください。

 疑いたくありませんが、トラムの運転手も、窃盗集団と組んでいる可能性は捨てきれません。組んではいなくても、黙認している可能性もあります。

 トラムを途中で降りて、植物園を散歩して、心を落ち着けました。そして、アテニウム美術館で絵画を鑑賞しました。数は少ないのですがセザンヌ、ゴッホ、ムンクの絵があります。ほとんどがフィンランドの近現代の絵画が中心です。ちょうどフィンランドの女流画家の展覧会をしていました。いわゆる名画よりも、気負いなく見られるので、こういう美術館も好きです。
 一昨年のオーストラリア・ブリスベンの美術館も素晴らしかったです。ブリスベンの街中で咲いていたジャカランダの木の花を描いた絵が印象的でした。

 ホテルは駅前でした。
 ホテルに戻る前に、FORUMという百貨店の2階にあるムーミンショップで、ネックタイと傘を買いました。もちろん、ムーミン谷のキャラクターが描かれています。他の参加者からは、羨望の的でした。これでスリに遭遇してしまった後の心の動揺はやっと収まりました

00:36:26 | falcon | comments(0) | TrackBacks