March 03, 2011

ヤメル新人教員、やめる熟年教員

 もう、こうなら、個人情報に配慮したうえで、事の次第を説明します。皆さんも釈然としないでしょう。

 2月末日、東京都23区の小学校の校長に、学生たちが冒した不始末を詫びに出かけました。私にも間接的にですが責任がありますので、学生たちと連座して、校長の説教を聞いていました。

 もちろん学生たちに非礼があったことは十分認めています。その点は学生たちとともに釈明して、謝罪を尽くしました。しかしながら、校長は冷静さを失い、怒りにまかせて、「大学の先生はマナーを教えないでしょうね」とまで、皮肉を言ったのが許せないのです。学生たちの問題と、私の教育に対する姿勢は関係ありません。

 私はこう見えても、といっても、このブログを読んでいる一部の人は私の姿を知らないでしょうけど、フリーターとして民間で働きましたし、国家公務員として働いていましたから、学校の世界だけで生きてきた教員の皆さんとは一線を画しています。
 外見、苦労知らずで、幼く見えるので、世間知らずと思われています。

 公務員の世界が「書類」で動くのは百も承知しています。そして部下が作った書類を十分に読まずに、机の上にへばりついている上司がいることも千も承知しています。公務員は「書類作成マシン」なんですよね。はっきりいえば、それだけが仕事といっても言いくらいです。

 (なかなか、本論に入れない)

 だから、学生に対して、社会に出た時の最低限のマナー、ルールは、他の先生よりも指導しているつもりです。
 たとえばですね、レポートは鉛筆書きで出すな!、これくらいは当たり前か、それから、欠席届はノートの切れ端でメモのようにして出したらば、正式な書類として提出することを求めるとか、遅刻してもいいから、教室に入るときは教員に一礼しなさいとか、学生たちにも同意を得ながら、最低限のルールを身につけるように指導を心がけています。
 でね、よっぽど、あの場で言ってやろうと思ったんですよ。
 ですが、校長も忙しい、時間が無いと口走っていたので、火に油を注いでも時間の無駄と思って、ひたすら、うつむくしかなかったのです。

 ああ、清清した、これで校長に対する恨みを清算できました。
 で、本論に入ります。

 それでね、かの校長が「最近の若い教員は、ふてくさった態度を取って、すぐやめてしまう。実に未熟な若者が多すぎる」とのたまわったのです。今回の学生たちの不始末と、関係ない通説を講釈してくださったのです。

 しかし、ヤメル、つまり辞める新人教員がいる一方で、やめる、つまり病める熟年教員もいるのです。納税者の立場から見ると、辞めてしまった新人教員には、当然、給与は支払いませんが、病める熟年教員は長期療養して、我々国民(住民)が納める国税と地方税で養われているのです、許しがたいことですね。実は長期休職教員の数は、辞めていく新人教員の数よりも多いのです。長期休職の教員の数が想像を絶するほど多いのは、リンクを開いていただければ一目瞭然です。それに対して、本人の指導力不足と認定された教員が平成19年度で371人で、そのうち20代は4%、在職5年以下は5%で、また、さらに認定された371人のうち、退職などをした教員は平成19年度92人です。ですから、指導力不足などの理由で離職した新人教員は、病める熟年教員に比べれば、極端に少ないことがわかります。以上のことから、かの校長の発言が根拠のない通説であり、持論に都合のいい曲解であることが、明瞭です。教員採用試験の合格者が近年少ないので、新人教員そのものの数が少ないことからも、推測のつくことです。
 未熟とはいえ、これから改善して成長する新人教員を育てずに、態度が悪いと苛め抜いて、叩きだし、改善の見込みの少ない長期休職教員に給与を税金から賄って養っているのです。たしかに、譲歩して、教員は難関の教員採用試験を突破して、教育の「聖職」に就いたのですから、民間企業と同じ基準で測ってはいけないという理屈は多少は理解しても良いでしょう。私も大学教員ですから、学生たちの指導が想像以上に大変であることはよくわかっています。また、学校現場が想像以上に理不尽な要求が多いのも、百も千も万も承知しています。ですが、民間企業では、長期休職すれば給与はカットされ、退職を迫られます。ところが、教員だけは長期休職が認められて、国民(住民)の血税から給与が支払われています。校長は学校の管理者・経営者といっても、税金で雇われているから、財政的な観念が無い(公務員全般に財政的な観念が欠如していますし、国会議員、地方議員はさらに財政的な観念が欠如しています)。よって、実質的なことよりも、形式的なことにこだわる(だから、忙しいと言っておきながら、呑気に説教できる。時間=金の意識が無い)。しかも、学校は地域に開かれているとはいえ、学校図書館のような、自分たちが面倒と思っているところだけ、地域ボランティアを導入して、子どもたちのプライバシーに配慮することを盾に、肝腎な部分は閉鎖的で、隠蔽している部分が多い。民間が味わっていることを、公務員や公立学校の教員だけが特別扱いされるのは問題です。みのさんじゃないけど、「ほっとけない!」ですよ。

 で、申し訳ないけど、長期休職教員は早期に他の職種へ転職するか、社会保障で最低の生活を保障する方策をとってほしいと提言します。教員になれるだけの実力があれば、民間でも有能な人材として働けると思います(民間の苦労も知らずに、偉そうに教育するな!)。そして適正な数の新人教員を採用して、ベテラン教師の基準で「未熟!」と決めつけて切り捨てないで、温かく見守り、最低限のルールとマナーを身につけるように指導する必要があると思います。誰でも、未熟な時期があるでしょう。それを忘れたら、教員として働く意義は無いと思います。大人としても、未熟だった自分を振り返り、後進を育てていかなければなりませんよね。

 正直言って、つまらぬ校長の説教から、壮大な日本の教育問題に踏み込んでみました。

 まっ、大学教員を舐めたらいかんぜよ!

00:52:54 | falcon | comments(0) | TrackBacks