March 25, 2011

図書館に西太后?!

 そろそろ『蒼穹の昴』も最終回だ。

 2日前、震災関連番組が少なくなってきて、夕方、昨年の連続ドラマ『Mother』の再放送を観ていた。

 図書館の書架の蔭に、西太后がいる!?
 それも、怯えたような表情で。清朝はどうしたのよ、と叫んでしまった。

 田中裕子さん演じる「うっかりさん」が図書館で、主人公の親子を見守っているシーンだった。ドラマの内容はバラすわけにいかないので、観てのお楽しみとしておこう。

 ちなみに日野市立図書館でロケが行われたらしい。

 日野市立図書館と言えば、『図書館戦争』の「日野の悪夢」だ。
 いまだに「日野の悪夢」の設定は理解に苦しむ。ほとんど説明が無く、稲嶺特等図書監の英雄的な行動と悲劇を感傷的に描く仕掛けだけだったとしか思えない。所詮、軍隊オタのツンデレ・ラノベの限界なのかもしれないが、「日野の悪夢」について、もう少し説明を書きくわえてもらえたら、小説の見方も変わったかもしれない。

 それよりも図書館に西太后?!だ。

02:50:21 | falcon | comments(0) | TrackBacks

地震と災害の『紀伝体』

 先日、紹介した『地震の日本史』が編年体の歴史ならば、伊藤和明著『地震と噴火の日本史』(岩波新書)は紀伝体の歴史と言える。



 著者の伊藤和明氏は、元NHK解説委員で、現在、防災情報機構会長などを務めている。今回の東北関東大震災で、ときどきコメンテータとして出演している。

 日本書紀の古代の地震、火山の噴火、巨大地震と大津波、内陸直下地震、大都市直下の大地震、鯰絵のエピソードを掲載している。同じような地震と災害が、まるで人の伝記のように綴られている。

 興味深かったのは、江戸時代の人たちが地震や災害にあっても、狂歌や川柳、戯れ歌を書き残している点である。江戸時代ではないが、明治24(1891)に起きた濃尾地震が明治33(1900)年の鉄道唱歌に歌われていて、「地震にあえば身の終わり(美濃・尾張)」という冗句が言われていた。被害にあっても洒脱に逞しく生きる庶民の心意気が感じられた。
 鴨長明、吉田兼好、松尾芭蕉、新井白石らは、大地震を経験して、著作に書き残していたり、地震を織り込んだ俳諧を残している。宮沢賢治は生まれて間もなく、明治29(1896)年の陸羽地震に遭遇している。

 今回の東北関東大震災で連日、テレビの報道番組で繰り返し、津波の映像を観た、というより見せられた。映像や音声の情報量は、文字の情報量より膨大であり、影響力も大きいといわれているが、本書で紹介された当時の地震と災害の記録は、まるで眼前で起こっているかのようで、より生々しく凄絶である。濃尾地震の時の名古屋の様子を読んでいると、そこで地震を体験しているかのような臨場感、デジャヴュがある。改めて「ことば」の威力を感じた。また、こうした記録を保存して受け継いできた図書館の大切さも思った。図書館が無ければ、こうした貴重な過去の記録も知らないで終わってしまう。

 明治29(1896)年に起こった明治三陸地震津波は記録的な大災害だった。今回の東北関東大震災と同じ規模の被害があったらしい。死者は二万人を超えた。このときは震度3か4程度の地震が数回あったにもかかわらず、最後の地震から35分後に大津波が襲ってきた。揺れが小さいのに巨大な津波が襲う「津波地震」だったようだ。その37年後に起こった昭和8(1933)年3月3日に起こった昭和三陸地震では震度4から5の大きな揺れがあり、巨大津波が襲って大きな被害があった。このときは「(明治三陸地震津波のように)揺れが小さいと津波が大きい」という思い込みから「揺れが大きいと津波は小さい」と逆に考えて避難しなかった人がいたようだ。今回の震災は揺れも大きく、津波の被害も甚大であった。揺れの少ない「津波地震」は途轍もない恐怖を感じた。明治三陸地震津波の3か月後に東北地方の内陸で陸羽地震が起こっている。巨大地震は連続する。油断してはならない。

 そのほか、著者は内陸の山地で起こった地震の後の崖崩れ、堰止湖の崩壊による下流域の洪水を警告している。地震は津波だけでなく、二次、三次災害も恐ろしい。

 さらに大都市直下で起きる地震では、京都で起きる懸念を述べている。著者によると京都は「約160年に1回」地震災害に見舞われている。1830年の地震以降、180年近く京都は地震の被害が無い。阪神淡路大震災があったことを考慮すれば、やや安心できるが、戦災にあうことなく、木造家屋が多く、消防車が通れないくらい道が狭い京都は防災上、危険な町と著者は心配する。

 この本でFalconが最も興味を引いたのは安政江戸地震のときの浅草の眼鏡屋(この時代にメガネ屋があったのも驚きだけど)の話である。地震が起こる2時間前に磁石の磁力が落ちたというエピソードである。科学的に証明されていないらしいが、その後、この現象を利用した地震予測機がつくられたという。佐久間象山も作ったらしい。これが科学的に実証できれば、驚きに値する。

 実はこの本図書館で借りた。たぶん、読みたい人が待っていることだろう。早く返そう。

00:39:15 | falcon | comments(0) | TrackBacks