November 17, 2011

あんたも好きねえ

 夕方、神保町の三○堂で本を買っていたら、1階のカウンターで「店長出せ!」と喚いている品の悪い中年の男性客がいた。実は、今、問題になっている○暴さんたちよりも性質(たち)が悪いのは堅気の中高年のおじさんたちである。書店のカウンターだけでなく、図書館のカウンターでも、怒鳴り、喚き、迷惑この上ない。○暴さんたちは、店員の態度が気に喰わない程度の、こんなくだらないことで騒ぎを起こさない。彼らにも誇りがある。つまり、書店の店先で騒ぎを起こしてイキガッテいるのは下郎の様である。
 というのも、書店は青色吐息の状況で、書店を脅して、悪さをしかけるのは尋常の沙汰ではないことがわかっていない証拠である。



 この本、タイトルが軽い調子だけれども、内容は実に重たい。日本の出版界に恐ろしくも過激な課題を投げかけると言うよりも、喉元につきつけている。
 出版関係のテーマで、図書館について触れることはほとんどないが、この本では触れている。その意味で、図書館関係者に一読を勧めたい。
 無茶な提案もあるが、それなりに納得できる。
 議論を避けていたのでは、何も始まらない。議論があって、解決策が生まれる。もちろん、議論は感情的な脅しではない。

 実は、例の迷惑中年のおじさんのおかげで、Falconがアルバイト時代に御世話になった、ある意味、恩人の一人に久しぶりに出会うことができた。たまたま、迷惑おじさんの近くのカウンターで、その恩人の人が本を買っていたのだった。迷惑おじさんが騒ぎを起こしてくれなかったら、振り返ることもなかったはずである。
 この恩人とは、今でも書籍流通業界で活躍している人で、知る人ぞ知る、ひとかどの人物である。
 日本の出版界の状況を解説してくれるので、今でも有難い恩人の一人である。神保町で食事をしながら、最新の情報を仕入れることができた。
 
 さて、次に紹介するのは、大学教員採用の裏ワザを示した本だ。



 大学に籍を置く身として、含み笑いを勝手に浮かべて、ホイホイ読み進めることができた。
 でも、大学教員って、本当に良い仕事かなあと、正直、思案に苦しむ。世間の人は、羨ましく思うかもしれない。所詮は「隣の芝生」で、実際、足を踏み入れたら、天国どころか地獄そのもの、というのは言い過ぎかもしれない、世間一般のサービス業と大して変わらないというのが実感である。
 少子化のため、受験生は激減している。それに大学を出ても就職できない。とりあえず大学に入っておこうくらいの気持ちしかない学生たち相手に、聴いてもらえぬ講義を、辛さこらえて、話しているのが実情である。
 講義アンケートで、尋常でないことを書きこまれて、精神的に過剰なストレスを受ける。たびたび大学教員から学生へのハラスメントがニュースになるけれども、学生たちからの大学教員へのハラスメントは想像以上に深刻で、高い給与も口止め料としか思えなくなってしまった。

 受験生が激減しているのに、あいかわらず大学を新設して、学部を増設して、入学定員を増やしている。許可する文部科学省も文部科学省だが、見苦しく「肥満化」する大学経営には空恐ろしくなり悪寒が走る。国の教育行政が麻痺しているとしか思えない。
 大学を新設して、学部を増設しているのは、浮遊しているノラ博士のためではなく、第2次ベビーブームに生まれた世代が大学生だったときに雇われた大学教員の人件費を支えるために学部の増設が必要になっているだけだ。そして大学が増えると、学部が増えると、それに見合った教授陣が必要になり、その人件費を補うために、受験生確保が急務になる、、、、、、と、まるで循環小数のように際限もなく、大学の見苦しい「肥満化」が進む。大学院の定員が増えているのは、学部で確保できない分、大学院生の授業料で補おうとしているからで、日本の研究水準を高める高尚な志は皆無に等しい。もっとも、わずかな大学院生の授業料が大学経営の健全化につながるはずはないけれども、大学の評価や助成金の多寡にかかわることにはちがいない。

 元々、大学教員になる気が無かったFalconだけれども、今の職業が居心地が良いからしているのではなく、責任ある立場に立ってしまったから、その職務を全うする意味で続けているにすぎない。それなりに、拙い講義でも、知的喜びを感じてくれる受講生も少なくないので、生きがいにもなっている。

 で、大学院で学んでいる皆さん、大学教員になりたいですか。
 あんたも好きねえ〜〜。


23:45:26 | falcon | comments(0) | TrackBacks